表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
31/51

〈間話〉 リリアー歴史の矯正力ー

いつもと変わらず、私は机に向かって日記を書く。これから消える命、誰も見ることなく消えていく文章。わかっていても、書かなければ落ち着かなかった。


どうして、こんなことになったのだろうか。


ぽたりぽたりと落ちた雫が、ノートのシミになってこびりつく。


最初に気がついたのは、15歳の時だ。


当時通っていた図書館で、会うたびに話しかけてきた黒髪の青年。歴史書を読んでいた私に、彼が放ったある言葉。


その一言が、私の運命を変えた。


『貴女は第二王子の婚約者なのですね。この国の王族と結婚する女性は薄命の方が多いとか。……どうか、お気をつけください』


握られたペンが、ミシミシと音を立てる。


そう、その時私は気がついてしまった。


この国には、輝かしい運命を背負った乙女が稀に現れる。その乙女たちは困難を乗り越え、王族と結ばれるのだ。


まさに「運命の乙女」と呼ぶのがふさわしいほど、ドラマチックな方法で。


必ず現れるとは限らない。でももしこの時代に存在したら……私は今の地位をおわれ、運命の乙女が代わりにその椅子に座る。


私は、それが恐ろしくて仕方なかった。愛するデービット様を奪われ、命を脅かされるかもしれないことが。


何よりも、デービット様が私を失って傷つくかもしれない事が、怖かった。


運命の乙女がこの時代に存在するかはわからない。


けれど……可能性があるだけでも、幼い私を蝕むには十分過ぎた。


だから私はある日、デービット様に聞いてしまったんだ。聞いてはいけないと、わかっていたのに。


『もし、私が危険な目にあったら……殿下は、私を守ってくださいますか?』


もしデービット様が『当たり前だろう』と、そう一言言ってくれたならば……私はどんな運命にも抗って見せると、そう思っていた。


しかし、返ってきた答えは予想もしないものだった。


『お前が僕を好きなままだったら、考えてやってもいい』


そう、デービット様はおっしゃった。


目の前が真っ暗になった。デービット様は私を守りたいと思うほど、私を愛してくださっていないのだと。


それと同時に、私はほっとした。

あぁ、今デービット様から離れれば、この人を悲しませずに済むと。


だから私は1年間、時間をかけてゆっくりとデービット様から離れた。そうして距離を置いてから、婚約解消を何度か申し出た。何故か、デービット様は受け入れてくださらなかったけれど。


最初は一時の気の迷いだと、時間が経てば別の女性に目が向くと思っていた。


でも、デービット様は婚約者である私から離れることはなかった。嬉しく感じると同時に、とても虚しかった。あの日の言葉が脳内を巡る度、『お前が好きなわけじゃない、ただ役目を果たしているだけだ。勘違いするな』。そう、私の中の何かが囁き続けたから。


できるだけ人と関わらないように、迷惑をかけないように心がけて動いた。私のことを気にかけてくれるのは、幼馴染のミカとその兄であるラファエル様だけだった。


そして一年前ーーー私の目の前に、運命の乙女が、メアリーさんが現れた。


それからの状況の変化は目まぐるしいものだった。デービット様と懇意にするメアリーさん、身に覚えのないいじめの噂、王宮内で噂が広がるたびに向けられる、好奇の視線と冷ややかな声。


思い出すだけで、身震いする。


そう、最初から運命は決まっていたんだ。私は不幸になり、私を踏み台にして世界は回る。


私はこの世界の歯車にすぎず、『矯正力』ともいえるその力は、私の意思など容易く踏みにじる。


それが、酷く腹立たしかった。デービット様への思いも、私の覚悟も、何もかも嘲笑うようなその力が。


だから、私は決めた。


婚約者である私がいたら、デービット様とメアリーさんは幸せになれない。そして私自身も、矯正力により今後幸せになることはない。


それならばいっそーーー私の手で、終止符を打つのだと。


静かに、ペンを置く。机の引き出しをあけ、隠すように二重底の中にノートをしまった。


このノートは誰の目に留まることもない。誰にもいうことができなかった私の思いは、全てここで消えるんだ。


窓の方へ一歩、また一歩と足を踏み出す。


怖くないと言えば、嘘になる。でも、これは私の命だ。私の覚悟だ。


これ以上、踏み荒らされてたまるものか。


精一杯口元に笑みを浮かべーーー私は、窓に手をかけた。

お読みいただきありがとうございます!

皆様の反応が励みになりますので、よろしければブクマ&評価お願いします!

ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ