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【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
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〈第20話〉断罪イベント3日前ー謎の人物ー

朝の礼拝が終わったあと、私は再びラファエルの執務室へ来ていた。


話があるから用事が終わるまでここで待っててって言われたけど、それセキュリティ的に大丈夫なのかな? いや、何かするつもりはないけどさ。


ミカは騎士団に帰ってしまったから話し相手もいない。暇を持て余すとどうも落ち着かなかった。


推しの私物のペン、愛用の茶器、執務に使うソファ。ここで推しが過ごしているんだと思えば思うほど、周りを見る目が止まらない。


いや、落ち着けルカ。これじゃデービットやミカの事を笑えない。私も晴れてストーカーの仲間入りしてしまう。


煩悩を振り払うように、細く息を吐く。


別のことを考えるんだ、別のことを。


そういえば、礼拝中のメアリーちゃん綺麗だったなぁ。朝日に照らされて青い瞳がキラキラと光っていて。まさに聖女の風格! 最推しは今日も尊みが止まらない。


だらしなく頬が緩むのが自分でもわかる。


でも、デービットめっちゃ私のこと睨んでたな。皆前にいるメアリーちゃんを見つめてるのに、1人だけこっちガン見してるんだもん。完全にロックオンしてたもん。


隠す様子も見受けられない圧のある視線。憎悪とも執着ともわからないそれに、礼拝のたびに見られていたとしたら。


……そりゃあ、リリアも病むよね。


思わずはぁ、とため息が出た。


私はツンデレメンヘラ拗らせた結果だって知ってるけど、リリアは違うもんなぁ。


でも、私はここで引くわけにはいかない。デービットを改心させて、メアリーちゃんと2人で幸せになってもらうんだ。


私はぐっと拳を握って目を開ける。


「考え事は終わったのかな?」


その先にいたのは、優雅にティーカップを傾けるラファエルだった。


「ら、ラファエル様!? いつの間に……!?」


「んー、5分ぐらい前かな? 声をかけても反応がないから、しばらくそっとしておこうかと思って」


ラファエルは涼しげな笑みのまま紅茶を一口飲む。


えっ、私ずっとラファエルの事無視してたってこと?


「ごめんなさい……!」


謝罪と同時に伏せた顔を、紅茶の湯気がふわりと撫でる。そこにラファエルの心遣いを感じて、一層顔を上げにくくなった。


「気にしないで。ころころ表情が変わって面白かったし」


ひらひらと手を振りながら、ラファエルは顔を上げるよう促す。


はぁー、優しい。好き。この余裕の態度が最高なんだよなぁ。


あれ、でも今表情が面白かったって……もしかして、全部見られてた?


火照る頬を隠しながら上を向く。その先に、目を細め僅かに唇を緩ませるラファエルの顔が見えた。


「何より君の可愛い顔をゆっくり眺められるなんて、幸せな時間だと思わない?」


「へぁ……」


思わず変な声が出る。それほどまでにその声は艶やかで、どこか熱がこもっていて。


その熱に、浮かされそうになってしまう。


「ふふ、可愛い反応だね。俺にもチャンスはあるかもしれないって、期待しても良いのかな?」


ラファエルはゆっくりと前髪をかきあげ、こちらをじっと見つめている。


え、これ揶揄われてるの? 本気なの?


あまりにも色っぽいその仕草に、無意識のうちに喉が鳴った。


ダメだ、読めない。顔が良いことしかわからない……!


混乱する私を見て、ラファエルは唇の端を一層吊り上げる。


「……冗談だよ。少し、意地悪しすぎたかな?」


じょう、だん……?


その言葉に、一瞬脳がフリーズする。


冗談でこんな色気が出せるんですか……?

いや、ラファエルはプレイボーイだ。恋愛経験0の私とは違う。


深呼吸をして、なんとか平静を取り戻そうとする。


そもそもラファエルは話があって私をここに残したはず。それを聞かなきゃいけない。


「ラファエル様、そういえばお話というのは……?」


混乱で声が揺れる。ラファエルはそれを聞いて満足げに笑った。


「あぁ、そうだったね。実はちょっと思い出したことがあって。……6年前、リリアちゃんの様子がおかしくなる直前のことなんだけど」


6年前……!


そうか、先ほど感じていた違和感はこれだ。いじめの黒幕はわかったが、何故こんなことになっているのかの根本原因は未だ不明。そこがわからなければ完全に断罪を回避したとはいえない。


「何があったんですか?」


上体を前に倒し、食い気味にそう尋ねる。


「リリアちゃん、その頃よく図書館に通ってたんだよね。そこでたまに誰かと話してたらしいんだ」


「誰かと?」


「具体的なことは俺も知らないんだけどね。同僚から聞いた話だし」


ラファエルは目を伏せて眉根を寄せる。


なるほど……人伝に聞いた話でも、今は貴重な情報源だ。調べてみる価値はある。


「……よく覚えていましたね、そんな昔に聞いた話」


ラファエルは記憶力もいい。けれど、そんな些末なことまで覚えてるものなの?


「リリアちゃんのことはどんな小さなことでも覚えちゃうんだ。なんでだろうね」


ラファエルは肩をすくめて紅茶を煽った。その間も、視線はずっとこちらに向けられていて。


え、それって……。


ゲームの一場面が、脳裏に蘇る。


『俺、好きな子のことは全部覚えてるタイプなんだよね』


あのシーンは確か、ラファエルと唇を重ねるスチルの直前だった。


つまり、ラファエルってーーー


コンコンコン


扉を叩く無機質な音が、私の思考を遮った。


「ラファエル様、経済省のケラー侯爵がお越しです」


私の火照った頬とは対照的な、淡々としたラファエルの秘書の声が聞こえてくる。


「あぁ、もうそんな時間? ……残念だけど、続きはまた今度にしようか」


ラファエルはカップを音もなく机に置く。その仕草すらも、どこか色っぽくて。


「で、では、私はこれで失礼しますね」


ガタガタと音を立てて立ち上がり、急いで扉から出ようとする。


「またね、リリアちゃん」


扉が閉まりかけた時に聞こえたその言葉。それに、無意識に視線が吸い込まれた。


「っ……!」


私はろくに返事もせずにそのまま扉を閉め、逃げるように廊下へ進む。


聞いたことのないほど甘い声、絡みつくような視線。

そしてどこまでも深い、執着を滲ませたあの微笑み。


あれは全て、私ではなくリリアに向けられたものだ。


そうわかっていてもーーー心臓は、早鐘を打つばかりだった。

お読みいただきありがとうございます!

皆様の反応が励みになりますので、よろしければブクマ&リアクション&コメントお願いします!

ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨

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