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【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
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〈回想〉メアリーとデービットー婚約者の影ー

暖かな日差しに照らされた、王宮の中庭。迷子になった私をデービット様が助けてくださった、始まりの場所。私達はたまにこの中庭で会話をするようになっていた。


黄色く染まった葉が、風が吹くたびにハラハラと揺れた。デービット様はいつも物憂げな表情をしているけれど、今日の表情は一段と暗い。


「……今日父上に、『お前も20になったのだから、いい加減身を固めてはどうか』と言われた」


ポツリとこぼされたその言葉に心臓が跳ねる。


デービット様には確か婚約者がいたはずだ。同じ宗教省の、リリア・キャンベル様。美しいプラチナブロンドと、赤く煌めく瞳が特徴的なご令嬢。


決して主張するタイプではないのに、目を奪われるような存在感。


あぁ、この方がデービット様の婚約者なのだと、思わず納得するような神秘的な雰囲気を纏った方だった。


あの方と、結婚なさるんだろうか。


おめでたいことのはずなのに、祝福すべきなのに、喉が詰まって言葉が出てこなかった。


でも……なんで、デービット様も浮かない顔をされてるんだろう。

それが、なんとなく気になった。


デービット様は膝を抱えて俯いたまま、ぼそりとつぶやく。


「『婚約者のリリア嬢とはどうするつもりだ』と。……4年前から、ろくに話もしてもいない」


「そう、なのですか……?」


予想外の言葉に目を見開く。

確かにお二人が話しているのを見たことがない。


「リリアは、昔は僕にべったりだったんだ。それなのに、急に避けられるようになって……。僕は婚約者として、リリアにきちんと向き合う必要があるのに。……なのに、上手くいかないんだ。ずっと、リリアに理解してもらえないままで」


丸まった背中、抱えられた片膝。どこか遠くを見つめるその瞳が、酷く寂しそうだった。


あぁ、デービット様は……リリア様を、深く愛していらっしゃるんですね。


そう思っただけで胸の中が焼けるように痛んだ。目頭が、熱くて仕方なかった。


ぐっと気持ちを飲み込んで、デービット様の手をとる。


「誰かを想うことは素晴らしいことです。理解してもらえないなら、理解してもらえるまで伝えればいい。デービット様のその真っ直ぐな思いは、きっとリリア様に伝わるはずです」


「メアリー……」


「伝えましょう、その気持ちを。私も微力ながら協力させていただきます! 一緒に、頑張りましょう?」


顔を上げるデービット様。うつろな瞳がゆっくりと私に向けられる。その目は私を見ているはずなのに、どこか遠く感じられて。


「まるで、昔のリリアみたいだ」


ぼそりとつぶやいた声は、今まで聞いたことがないような甘えた色を孕んでいた。


いけないことだとわかっているのに、心臓は早鐘を打つ。熱が目頭から頬へ移っていく。


「ありがとう、メアリー。僕なりに頑張ってみようと思う」


デービット様は背筋を伸ばして立ち上がる。先程までの弱さを全て覆い隠すように。


……これで、よかったんだ。デービット様が幸せになれるならば、私はそれを応援しよう。例えこの気持ちを、飲み込むことになっても。


この時の私は、本気でそう思っていたんだ。


これが悲劇の幕開けだなんて、知る由もなかったのだから。

お読みいただきありがとうございます!

皆様の反応が励みになりますので、よろしければブクマ&リアクション&コメントお願いします!

ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨

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