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【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
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〈第16話〉断罪イベント3日前ー実行犯と黒幕ー

ソファに腰掛け、天を仰ぐ。


「問題は誰が何の目的で噂を流したのか……ですね。正直、心当たりがありません」


あえて記憶の有無には触れない。またメアリーちゃんを悲しませたくないし。


「兄貴、確か最近実績もないのに昇格した奴がいるって言ってたよな? そいつが噛んでるんじゃないか?」


ミカの指摘に、ラファエルは顔を伏せる。


「現時点では、関与していてもおかしくないと思ってる。証拠はないから、あくまで疑いだけどね」


断言しないのがラファエルらしい。だが、どう考えても怪しさしかない。


「名前はルーバン・ロビンソン。本当なら今日話を聞く予定だったけど……まだきてないんだよね」


この時間に来てないということは無断欠勤だろう。


完全に黒じゃん、そいつ。


「ルーバン様は真面目な方ですし、不思議ですね……」


メアリーちゃんも首を傾げている。

やはり、何かしら理由があると考えるのが妥当か。


「そのルーバンさんって、どんな人なんですか?」


ラファエルは口元に手を当て、軽く眉を顰めた。


「どうって言われると難しいな。俺の主観だけど、なんの変哲もない真面目で大人しい新人君ってイメージかな。あとは……黒髪で、細身でーーーあぁ、いつも白い宝石のついたピアスをしていたな」


白色のピアス……?


私はばっと体を捻り、急いで自身の鞄をあけ中を探る。内側の収納ポケットから出てきたのはーーー昨日ご夫人の足元に落ちていた、所有者不明のピアス。


まさか、ここで繋がるなんて。


いくらなんでも出来すぎじゃない……?


一瞬そんな考えがよぎるが、今はこれしか手掛かりがない。


ゆっくりとピアスをつまみらラファエルに見せる


「もしかして、これですか?」


ラファエルの瞳が大きく見開かれる。


「それは……!」


椅子から立ち上がらんばかりに身を乗り出すラファエル。その反応がこのピアスの持ち主が誰であるかを物語っていた。


「……説明する手間が省けたね。どこで手に入れたんだい?」


やはりこれはルーバンのピアスか。

すっと目を細め、淡々と語る。


「昨日、ご夫人の鞄を盗った不届者がいたんですよ。おそらく、夫人にぶつかった瞬間落としたんでしょう」


しかし、宗教省本部に勤められるのはエリートのみ。何故わざわざただのご婦人の鞄を盗む必要があるのか。


もしやそれすらも、何者かの指示だった?


その瞬間電流のように脳内を駆け抜けたある可能性。


私はバッとメアリーちゃんの方へ視線を向ける。


「……そういえば、あのご婦人『ホワイトさん』って呼ばれてました。孫からの手紙がバッグにって……もしかして」


そう、彼女はメアリー・"ホワイト"。もし彼女からの手紙が目的なら。


メアリーちゃんは私の視線を受けてわずかに身を強張らせた。


「まさか……そんな……確かに、手紙は出しましたが……」


メアリーちゃんは震える手で口元を抑える。血の気が引いたその顔は、青白く変色していた。


ーーービンゴ。


頭の中で響く、パズルのピースがはまる音。重く鋭いその音が私の思考を加速させる。


「偶然とは思えないですね。……犯人はその後すぐ逮捕されました。ホワイト婦人も無事ですよ」


メアリーちゃんは胸を撫で下ろし、小さく息を吐く。


「よかった……。おばあちゃんを助けてくださってありがとうございます」


その顔から見てとれる安堵。口元が緩み、手の震えもおさまっていた。


うん、やっぱりこっちの方がいい。推しには笑顔でいてほしい。


「いえいえ。……ルーバンさんは、完全に黒ですね」


物的証拠が出てきた今、他の可能性は考えられなかった。


「そもそも、なんでご婦人を狙う必要があったんだ? リリアの噂とは関係ねぇだろ」


ミカは顎に手を当てて、ため息をつく。


確かにそうだ。噂の件と鞄の件、どこにつながりがあるのか皆目見当がつかない。


一体、なぜ?


「それに関してなんだけど」


普段より微かに低いラファエルの声が、思考の波を断ち切った。


「実は俺……ルーバンがデービット殿下と話してるの何度かみてるんだよね。ただ話してるだけって可能性もあるけど、デービット殿下がそんなに宗教省へ興味があるとは思えない。そんなに信心深いなら、もっと貞淑に振るまいそうじゃない?」


「貞淑さのかけらもない兄貴がそれをいうのか?」


ミカの訝しむような声に、ラファエルは笑みを引き攣らせる。

いや、確かに特大ブーメランだとは思うけど。


ラファエルは仕切り直すように咳をして、真面目な顔で続ける。


「手紙が入ってたんだろう? ーーーその手紙を見ようとした、なんて可能性は?」


あくまで可能性の話だよ、とでもつけたしそうな言い方。しかし、どこか確信したような声音だった。


「は……? いやいやいや、流石にそれはないでしょう。人の手紙見るためだけに鞄ごと盗みます??」


いくらなんでもそれはない。ゲームのデービットと違ってリリアのこと放置気味だし、婚約者を守るという男気もないクズだけど……それは、ないよね……?


先ほどから目の前でそわそわしているメアリーちゃんを見る。

彼女は私の視線に気がついて、気まずそうに目を逸らした。


「えっと……これはあくまで、私の予想に過ぎないのですが……デービット様ならーーーあり得ない話ではない、かと」


「えっ……」


想定以上の落ちぶれっぷりに、思わず声が出る。


いや流石にメアリーちゃんにそれ言われたらおしまいじゃない?

ていうか言われるようなことしてるんかあいつ??


メアリーちゃんは目を伏せ続けて語りだす。膝の上の拳はぎゅっと握られ、わずかに震えていた。


「デービット様、最近凄く色々聞いてくるんです。誰といたんだ、何してたんだって。……お前は、僕の事裏切らないよなって。凄く、不安そうにしてらして」


ミカは呆れた様子でため息をつく。


「メアリーの手紙を見て自分がどう思われてるか知ろうとしたってとこか」


「あくまで可能性、ですが。」


メアリーちゃんの声は今にも消え入りそうで、それが酷く哀れを誘った。


「てことは……噂を流したのも、カバンを奪うように指示したのも全部、あいつの指示なのか」


鋭い視線と、震える肩。ミカの怒りが、隣からひしひしと伝わってくる。


「あいつが、リリアをこんなふうにしやがったのか……!」


ミカの声を否定するものは、この空間には誰もいない。


私は額を手で覆い、天を仰いだ。


「それ完全に踏み入れちゃいけない領域じゃないですか? メアリーさん、本当にそんな男でいいんです? 婚約者の私がいうのも何ですけど……」


そう、一応私の婚約者なのだ。形式上、今はまだ。


どう考えてもやばいでしょそのメンヘラ王子。そんな相手じゃメアリーちゃんは幸せになれない。推しカプとか言っている場合じゃないよ完全に。


メアリーちゃんはびくりと肩をゆらして自身の前でバタバタと手を振る。


「えっ……!? あ、ち、違うんです。デービット様にはリリア様という婚約者がいますから。私はあくまで……お友達で……」


待って今なんつった???

お読みいただきありがとうございます!

皆様の反応が励みになりますので、よろしければブクマ&評価お願いします!

ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨


また、ついに3000pvを突破しました!

ありがとうございます!

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