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【第一部完結】あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー  作者:
あと7日で断罪とかマジですか!?ー断罪回避RTAー
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【初レビュー記念】間違い探しは永遠に【過去編・ラファエル視点】

暖炉の火がパチパチと弾け、炎がゆらめく。その度に、ミカの眉間の影が微かに揺らいだ。


「……宗教省に就職するって、本気なのか?」


どこか強張ったその声に、俺は困ったように肩をひそめる。


「そのつもりだよ。父上に凄い反対されたけど」


「当然だろ。建国以来の伝統が途絶えるんだから反対しない理由がねぇ」


"建国以来の伝統"


何度も聞いたそのセリフに、思わずため息が漏れる。


「カーター家の当主は代々近衛騎士団長だ、ってやつでしょ? 俺は父上みたいに強くないからなぁ。そもそもそんな器だと思う?」


「兄貴がちゃんとやらねぇからだろ」


俺を責め立てるようなミカの鋭い視線。そこから目を逸らすように、俺はふっと目を伏せた。


俺だって昔は真面目にやってたつもりだ。でもどれだけやっても、父上のように強くはなれなかった。あろうことか、14歳のミカにすら負けてしまった。


俺がどんな気持ちで剣と向き合っていたか、ミカエルが知る必要はないと思う。


それでもこの少々真っ直ぐすぎる言葉に、何も思わないほど俺は人間が出来ている訳ではなかった。


「形だけの大将ほど虚しいものはない。ミカみたいに才能があればそうはならないかもしれないけど、俺じゃそうなるのが関の山さ」


出てきた声は普段より何処か刺々しい。我ながら大人気ないとは思うが、このくらいならば許容範囲だろう。


息を吐いてから手の中にあるティーカップを傾ける。口の中に広がる苦味が、じんわりと体へ滲んでいった。


「そもそも俺は当主になりたい訳じゃない。才能がある人間が継いだ方が、家のためになると思わない?」


ゆっくりと目線をあげミカを見つめる。彼は目を見開いてから、きっとこちらを睨みつけた。


「俺に当主を押し付けようってわけか?」


俺ははぐらかす様に薄く笑い、ティーカップを静かにテーブルに置く。


「人間向き不向きがあるからね。俺は剣筋を探り合うより、腹の中を探り合う方が向いてたってだけさ。ミカが嫌なら俺がやるしかないけど……そういう訳じゃないだろう?」


こいつが誰よりも剣に打ち込んでいることを俺は知っている。例えそれが何かから逃げるためであっても、努力した事は揺るぎない事実だ。


それなのに弟だというだけでそれが認められないなんて、そんな理不尽なことはないだろう。


ミカは言葉につまり、ぷいと顔を背ける。


……図星だな。


「まあ、俺は最悪どこかのご令嬢にでも見初めてもらうさ。そういうの、得意だからね」


頬杖をついて僅かに首を傾げて微笑んだ。普通のご令嬢なら、この表情に顔を赤らめるところだ。


それなのにミカは怪訝そうに眉をひそめ、吐き捨てるように言葉を投げてくる。


「婚約者に振られたくせに何言ってんだよ、バカ兄貴」


ミカの容赦のない言葉が、グサリと胸に突き刺さった。


「人間にも、合う合わないがあるからね」


出てきた声は、微かに震えている。


自分で言うのもなんだけど、モテる方だと思う。思うが……どうやら俺は、世間一般的に少しばかり愛が重いらしい。


それが原因で婚約者にまで愛想を尽かされるとは思わなかったが。


「もう3年も前の話だろう? 今度はもっと上手くやるさ」


「上手くやるって言うのは、毎回違う香水の匂いまとわせて朝帰りすることか?」


「さぁ? どうだろうね?」


自分なりに軽く振る舞ってみたが、どうにもしっくりこない。何度やり方を変えても、いまだに答えは見つからない。


「なんでそんなんになっちまったんだよ。昔は違かったろ。兄貴は、もっと……」


それ以上、言葉が紡がれることはなかった。

伏せられたミカの瞳は、暖炉の火のようにゆらゆらと揺れている。


なんで、か。


「さあね。……どこで間違えたのかな」


俺の呟きは、温められた空気に溶けていく。


それを1番知りたがっているのは、多分、俺自身だ。


だけどきっと俺はその答えに辿り着けない。辿り着くことを、心が拒んでいるから。


いつか俺すらも見つけられなかった俺を、見つけてくれる人が現れたなら。その時俺はーーーまた昔みたいに、何かに本気になれるのかもしれない。

お読みいただきありがとうございます!

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ブクマ5ごとに番外編を追加予定です✨

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― 新着の感想 ―
わーなんだかトキメキますね。誰が推しっていったら現時点でミカエル様かな。かっこいいです。読ませていただきありがとうございます。
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