〈第8話〉断罪イベント4日前ー強張る表情ー
目の前に佇む、こぢんまりとした教会。
白い壁に青い屋根、落ち着いた雰囲気。人々の祈りを一心に受け入れる、清廉なその姿。
それなのに、私の心はざわついたままだった。
あの顔、なんだったんだろ。
そんな疑問が、胸の中に広がっていく。
好感度上がった時の反応だよなぁ、あれ。もしかして私に対する好感度があがったってこと?
そんな可能性に思い至って、私は思わず頭を振った。
いやいやいや、私はリリアでもなければ主人公のメアリーちゃんでもないんですが??
ぐるぐると思考を巡らせ頭を抱える。それでもやはり答えは出てこない。
うん、たぶんあれかな。リリアと同じ顔と声で言われたからそちらに反応したんだろう。うんそうだ、きっとそう。
私は自分を無理やり納得させてから、恐る恐る来た道を見る。
そろそろミカも着く頃だろう。きっとミカは普段通りだろうし、私もいつも通り振る舞わなきゃ。
道の奥、視線を向けた先にはーーー物凄く険しい顔で、ツカツカと歩いているミカがいた。
あるぇ?
思わず二度見するが、そこにいるのは変わらぬ表情のミカ。
……なんで?
いやさっきまであんな真っ赤だったしわなわなだったじゃん!? なんでペンでそのまま書き足したんかってぐらい眉間に皺よってるの!?
あれか?? 馬車に乗せずに置いてったからか?? いや悪かったとは思ってるけども!
何が原因かわからず頭の中でぐるぐると思考が回る。本日2度目のその感覚に、脳はオーバーヒート寸前だった。
その間に距離はどんどん縮まる。正直今すぐダッシュで逃げたい。でも逃げたところで追いつかれる確率は100%。フィジカルお化けと鬼ごっことかどんなホラゲーよりも無理ゲーである。
考えている間に距離はなくなり、ミカは無言で私の前に立っていた。
おし潰されそうな強い威圧感に、思わず口の端が引き攣る。
……来てしまったものはしょうがない。
私は覚悟を決めまだ険しい表情のミカを見上げた。
「え、えっと……置いてってごめん……?」
「謝んのそこじゃねぇよ……! そもそもお前、一応婚約者いるから同乗なんてしたら大問題だろうが」
ミカはぐっと何かを堪えてから、肺の空気を全て出すかのような大きなため息をつく。
「それはそうなんだけど……怒ってるから……」
残念ながら他に怒っている理由が思いつかなかった。首を傾げ、ミカを見つめ続ける。
ミカは呆れた顔で天を仰いでから、ゆっくりとこちらに向き直る。
その顔つきは、いくらか先ほどより和らいでいた。
「怒ってねぇよ。ただ、驚いただけだ。急にあんなこと言うとは思わなかったからな」
「まあ、それは……」
目が泳ぐ。
確かに、あれは少しストレートすぎたかもしれない。オタクとしての脳内1人語りが外に出てしまったのは不可抗力だけれど……
「お前無防備なとこあるよな……あぁ言うこと言うとその気が無くても誤解されるぞ。気をつけろ」
その口ぶりにすこしむっとする。まるで私が節操なしみたいじゃないか。
「大丈夫だよ、あんなこと言う相手ミカぐらいしかいないし」
私だって言う相手ぐらい選ぶ。ミカじゃなきゃあんなこと言ってない。
ミカは一瞬目を見開いてから、再び眉間をおさえだす。
「あんたなぁ……人の気も知らないで……」
しばらく目元を手で覆ってから、ミカは何かを諦めたように首を左右に振った。
「とりあえず、さっさと中入るぞ。誰かに見られても面倒だし、お前が寝坊したせいで時間押してんだから」
「うっ……ごめん。了解」
確かにそれはそうだ。結局遅刻した訳だし。
教会へ向かうミカの後ろをついて歩く。速度を合わせてくれているのか、とても歩きやすい。
一波乱あったが、こうして私たちは無事教会で調査を始めることになったのだ。
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