〈プロローグ0〉運命が動き出す前日ー新たな人生は唐突にー
モノローグのためここだけ少し重いです。本編は次の話からなので、苦手な方は読み飛ばしてください
運命は存在するのか?
陳腐な問いだと思う。しかしあえて答えるならば、私はこう言うだろう。
存在するだろう。
だがーーー運命に翻弄されるぐらいなら、この手で全て終わらせてやると。
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私の心をかき乱し、激しく渦巻く夜風。
普段は煩わしい乱れた髪も、今はむしろ心地いい。
見慣れた自室の窓の外の景色。どこまでも広がる、淡々とした日常の象徴。
この風景とも、今日でさよならだ。
やれるだけのことはやった。
でも、どう足掻いても、幸せになれる未来が見えなくて。
待っているのは悲劇だけじゃないはずだ。きっと、逃げ場がどこかにあるはず。
そう思って探すたびに、悲観的な未来が強固になる。まるで出口のない迷宮に迷い込むように、視えざる手に導かれるように。
ここに自由はない。私の意思など全て無視して世界は回る。本当に私は「この世界で生きている」のか?
ゆっくりと、窓の外へ身を乗り出す。
遠くに見える地面、恐怖で震える腕、高鳴る鼓動。
あぁーーー私は今、生きている。自分の意思で、道を切り開いている。
手に入らなかった自由を、自身の意思を。ドクドクと激しく心臓が高鳴るたびに全身で享受する。
思い返せば、後悔の多い人生だった。
私には救えなかった、愛しいあの人。
いつも私を見守っていた、優しいエメラルドの瞳。
心を揺らす思い出を、雑念を、無理矢理押し込むように強く唇を噛む。
でも、私は知ってしまった。あの本が、私に運命の残酷さを教えてくれた。
私は、ただのマリオネットでは終わらない。
世界の意思に従う操り人形じゃない。
誰かのために消える命? ……馬鹿馬鹿しい。これは私の命だ。誰のものでもないーーー私だけのものだ。
「私はっ! 運命を変える!」
狂気を孕んだ甲高い声が、暗闇に響き渡る。
涙の枯れた赤い瞳は、もう何も映さない。広がるのは、ただただ空虚な闇夜だけ。
その中に飛び込み、重力すらも味方につけて加速する。
鈍い音と飛び散る紅が、私の答えだった。
ここで私の話は終わるーーーはずだったのに。
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