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カチカチ

「その…藁人形を打ち付けませんか?」


 そう言えば当初の目的はそれだった。邪念ですっかり忘れてた。


「そうだね。適当な木を探そうか」


 二人で辺りを見回す。よく見ると、いくつかの木には既に藁人形が打ち付けてある。


「…実は私、自殺する前にも何度か藁人形打ち付けてたんです…」


 夏菜は乙女の顔で恥ずかしそうに呟く。

 おいおい、やっぱこの女ちょいとおかしいわ。いじめられるのも性格の問題じゃないか?

 しかし、巨乳なのは歴然とした事実だ。性格はこの際目をつぶる。


「じゃ、じゃあベテランなんだね。どの木が良さそう?」


 呪いに適した木なんてあるのか知らんが。しかし、夏菜は真剣な表情で木を物色している。


「そうですね…あの木は前に打ち付けて効果無かったので、もう少し奥にあるあの木にしませんか?」


 夏菜は眼鏡越しにも分かるほど、瞳をランランと輝かせていた。


「さすがベテラン。ならあの木にしよう。足元気を付けて」


 俺は誉め言葉になっているか分らんがそう言うと、シレっと夏菜の手を握った。夏菜は手を握り返してきた。やったぜ。女と手を繋ぐなんて学生時代以来だ。巨乳への第一歩だ。夏菜も心なしか満更でもなさそうだ…と思う。二人してお揃いの呪いの白装束身にまとって、まるでカップルのペアルックだ。

 二人は目標の木の前に着いた。俺は夏菜の手を離さずに言った。


「さすが夏菜さん、いい木を選ぶね。最高の呪いがかけられそうだ」


 我ながら訳分らん誉め言葉で夏菜を誉める。夏菜は俺の手を握りながら、照れくさそうにしている。


「…ありがとうございます。誠さんのために良さそうな木を選びました…それと大人の男性と手を繋ぐの初めてです」


 夏菜がそっと俺に寄り掛かる。その拍子に少し巨乳が俺の腕に触れる。

 今の俺には藁人形を木に打ち付けるのに釘は不要だ。俺の股間の五寸釘がカッチカッチやで。

 しかしながら俺は早漏だ。まだだ、まだ始まってもいない。ここで暴発はいけない。


「と、取り敢えず藁人形を打ち付けようか?」


 暴発防止のために、一旦手を離す。巨乳の感触が離れるが仕方ない。


「そうですね。いっぱい呪いかけて頑張りましょう」

「そ、そうだね」


 夏菜の呪いやる気満々の言葉を聞き、少し冷静になって股間がおさまる。


「ではお手本見せますね」

「よ、よろしく」


夏菜が藁人形を木に打ち付けようとしたその時、


「現れたな…この悪霊共め!」


何だがややこしそうな奴が現れた。



 

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