丑三つ時の恋
いい加減にしろ。
俺のどこがセクハラだって?いや、そりゃキミのスカート短いし、胸元も大きく開いてるし、男なら誰でも見ちゃうだろ。正直隙あらば覗き見はしてたよ。デスクの下に潜り込んだりして覗いたこともある。今日のアンタのブラとパンツは黒だ。夜のオカズにもしてたよ。悔しいけどキミ美人だし、つい…ついね。
「いつもセクシーでお洒落な服だよね。まったく、犯罪級だよ…キミを逮捕していい?」
それ言っただけで問題かよ。前からちょこちょこ声かけてたけどさ、だからって幹部連中集めてまで懲戒会議する程か?俺が変態みたいじゃん。
「処分は追って下す」
だってよ。あぁー俺は終わったよ。やっとの帰宅。
初夏の猛暑に焼きつけられた一日がようやく暮れたはずの夜十一時。だが駅のホームにはまだ昼間の熱気がこもり、照明に照らされた空気はじっとりと肌にまとわりついていた。
蒸し返すような暑さに意識がぼんやりと揺らぐ中、足元がふと滑り、身体の重心が前へ傾く。視界がぐらりと傾いた。ホームの縁が遠ざかり、熱の残る暗い線路の底へと吸い込まれるように落ちていった。
───午前二時───
俺はどうやら死んで幽霊になったようだ。だが見掛けは全く変わってない。けど、何か特殊な能力あるっぽい。
俺のやる事は決まってる。復讐だ。セクハラだの何だの言ってきた奴ら全員皆殺しだ。
先ずは神頼みにする事にした。転生と言うか、単なる幽霊なのだが、身嗜みを整えることから始めた。
呪いの白装束姿に身を包む。思うだけで思う服装になれた。幽霊万歳。頭に白い八巻をして蝋燭を立てた。幽霊の癖になんだが、蝋燭のロウが頭に落ちたら熱そうだから電池式の蝋燭に変えた。そして四体の藁人形とハンマーと釘を用意した。自分でも惚れ惚れする呪いの白装束の完成だ。
さあ、向かうは神社だ。近所にくたびれているが縁結びの神様とかで有名な神社がある。目的地はそこだ。恋人がわんさか集まる忌々しい場所だ。
掘ってやれ。スコップを念力で具現化させ、神社の入口に二つ、膝丈位の落とし穴掘ってやった。恋人どうしで落とし穴に落ちやがれ。神社で転ぶの縁起悪いしな。
落とし穴できた。ふぅ、幽霊になっても汗かくんだな。
俺は神社の奥深くに進む。気味悪ぃ。幽霊の俺が気味悪いんだから、深夜の神社の奥地など一般人はまず来ないだろう。
俺は藁人形を打ち付ける木を探していた。たっぷり怨念込めてや・る・ぜ。
「あの…幽霊さんですか?」
へ?何か知らんけどいきなり眼鏡の女に話しかけられた。心臓が止まるほど驚いた。って、既に止まってるけど。
お互い暫し見詰めあった。何故なら、二人とも全く同じ姿をしていたのだ。女も白装束に白鉢巻に蝋燭立てていた。俺とは違いちゃんと普通の蝋燭を頭の鉢巻に挟んでる。黒い長髪というのもあって、かなり本格的に見える。藁人形とハンマーも持ってる。ただ、何と言うかあらためて呪いの白装束見るとちょっと引くわ。関わっちゃ行けない人だなぁ。と自分をさて置き思った。
「ま、まぁ幽霊?っちゃ幽霊なのかな?あの…お宅も?」
女は少しホッとした表情をみせた。幽霊にあって安堵の表情ってどゆこと。
「私…上司のセクハラや職場のいじめに耐えられなくて自殺して…その幽霊なんです」
あれ?眼鏡で分かりづらかったけど、童顔で結構可愛い顔してるぞ。それにその胸。すんげー巨乳。いったい何食ってんだその巨乳。
「私の上司『いったい何食ってんだその巨乳』とか言ってきて…」
「…へ、へぇそりゃ酷いよな」
俺は思っただけで言ってない。セーフだ。それに女の良さは巨乳だけじゃなく、色々とある。あそこのしまりとか。童貞だから知らんけど。
「巨乳だけじゃなく、あそこのしまりもどうなんだとか言ってきて…」
…な、何だこの女、読心術でも使えるのか?それとも俺が根っからのセクハラ気質なのか?
「そんなの気にする事ないよ。そんなの抜きにしてもキミは可愛いよ」
下心丸出しで言ったが、勘づかれてないだろうか?可愛いのは本音だ。何なら一発で惚れたと言ってもいい。
「そ、そんな…嬉しいです…私根暗で、そんな風に言ってもらえるの初めてです」
彼女は頬を赤らめ、嬉しそうな表情を浮かべていた。 え?男に免疫ないタイプ?これはもしかしたら…
取り敢えず、俺は幽霊どうしのセックスが可能かどうか考えてた。