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荒々しいセックス

フローライト第八十八話

年末から年明け、美園は利成と明希の家で過ごした。奏空と咲良は元旦に帰ったけれど、美園はそのまま残った。何となく帰りたくなかった。


二日の日、リビングでゴロゴロしていたら明希が「ちょっと出かけて来るけど、夕方までには帰るね」と言って出かけて言った。


(彼氏かな・・・)とおしゃれしている明希の後姿を美園は見送った。


(あーヒマだな・・・)


朔でも呼ぼうかなとスマホを開いたら、ラインが来ていることに気がついた。


(あ・・・)と美園はソファに寝そべっていた身体を起こした。


<あけましておめでと。美園ちゃん、元気?>


それは晴翔からだった。美園は複雑な思いでそのラインを見た。


(今頃彼女と過ごしてるんじゃないの?)


<あけましておめでとう>


それだけ返した。何でラインなんかしてくるんだろと正直思った。


<今は家?>


少し経って返信が来る。


<利成さんのところ>


<そうなんだ、何してるの?>


<別に何もしてないよ>


<そうか・・・会えないよね?>


(は?)と思った。


<彼女はどうしたの?>


<彼女はどうもしてないよ>


<どうもしてないって?>


<結局よりが戻らなかったんだよ>


<そうなんだ>


<虫がいいのはわかってるけど・・・会えたら会いたいな>


(あー虫が良すぎ・・・)


<今は会えないよ。晴翔さん、まだ彼女が好きでしょ?


<そんなことないよ>


<嘘ばっかり>


<嘘じゃないけど、美園ちゃんがそう思っちゃうなら仕方ないね>


<ごめん、晴翔さんの気持ちがよくわからなくて>


<いいよ。俺が悪いんだから。もし会えそうだったら連絡ちょうだい。俺、明日までは休みだから>


<うん、わかった>


正直なところ心が揺れた。本心は会いたかった。


(でもそれして、また元カノのところ戻られたら・・・?)


(今度は立ち直れるだろうか?いや、許せるだろうか?晴翔さんを嫌いになっちゃわない?)


やっと晴翔のことを忘れかけていたのに・・・と連絡してきた晴翔を恨めしく思った。


苛立ちを感じて何だか朔にラインしてしまった。


<あけましておめでとう。何してる?>


<あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします。美園の曲でアニメ作ってたよ>


<そうなの?どんな感じ?>


<まだ色々考え中>


<そうなんだ。今日とか明日とかヒマ?>


<ヒマだよ>


<じゃあ、おいでよ>


<美園のうち?>


<利成さんのところ>


そう書いたら次のラインまで少し間があいた。


<ほんとに行っていいの?>


<いいよ。今明希さんいなくて利成さんだけだけど>


<すぐ行く>


<わかった、待ってる>


ああ、きっと今頃朔は飛び上がって喜んでるんだろうな・・・と美園はちょっと可笑しかった。


 


一時間後、朔が到着した。


「おめでとう」と美園が言うと「おめでとう」と朔が笑顔で言う。


リビングに入ると「天城さんは上?」と朔が聞いた。


「そうだよ。挨拶する?」


そう言ったら嬉しそうに「うん」と朔が言った。どうやら朔は利成の絵だけじゃなく、本人の方もかなり好きになったらしい。


利成さんの仕事部屋をノックすると「はい」と利成の声が聞こえて、美園はドアを開けた。


「利成さん、朔が挨拶したいって」


「え?朔君?」と利成が振り向いた。


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」と朔が丁寧に頭を下げた。


「おめでとう。よろしくね」と利成が言う。それから「良かったらアトリエ見ていってもいいよ。少し昔の絵も置いて置いたから」と言った。


朔が「ありがとうございます」とすごく嬉しそうな顔をした。


すぐにアトリエに入ると、朔が「やっぱ、すげー」と言う。


前に見た時はなかった絵が数点、部屋の片隅の壁に立てかけられているのが目に入る。朔も気がついてその絵の前に立った。


それも抽象画だが、どこか陰湿な感じの絵だった。昔の絵というよりは、今も色濃くその存在をアピールしている感じだ。朔がその絵の前に座る。


「ちょっと吸い込まれそうな感じだね」と美園は言った。


朔は絵をじっと見つめながら何も言わない。美園は他の絵も見てみたが、昔描いたというその数点の絵は、どれも何かしらの影を秘めているように見えた。


「・・・俺みたいだな・・・」と朔がポツリと言った。


「どうして?」と美園もその絵の前に座った。


「・・・淀んでいるのは世界じゃない・・・俺自身で・・・俺が淀んでるから世界が泥水のように感じるんだ・・・」


「・・・・・・」


「自分の苛立ちや怒りが自分を攻撃するのがわかっていて、わざとそうしてるんだ・・・」


「どうして?」


「自分がそんな攻撃の被害者であり、加害者だから・・・。そんな闇を作り出した自分自身に価値をつけるんだ」


美園は朔の横顔を見つめた。朔は絵を見つめながら、まるで意識だけをどこか遠くへ飛ばしている・・・そんな目をしていた。


ふと朔が美園の方を見た。


「・・・美園は俺のものだよね?」と朔が言う。


「どうかな?」


「違うの?」


「だって”もの”っていうのは失礼じゃない?」


「そうかな・・・」


「そうだよ」と美園が答えたら朔が唇を重ねてきた。


今日は舐めるようではなく、美園の唇を割って舌を入れてきた。そして口の中のかき混ぜてくる。


(あ・・・ちょっと・・・)


何だかまた感じてしまう。朔が唇を離して美園の顔をじっと見つめてきた。


「・・・またしたい・・・」と朔が言う。


「ここではダメだよ」


「どこならいい?」


「そうだね・・・うちはもうダメだし・・・」


「うち来る?」


「朔のうちだってダメでしょ。親がいるんだから」


「・・・そうか・・・」と朔が考えるような顔をする。


「・・・ホテルでも行く?」


そう言ったら朔が少し驚いた顔をした。


「ホテル?」


「そう。ラブホなら大丈夫だよ。安いし」


「どこにあるの?」


「まあ、探せばあるんじゃない?」


夕方まで利成の家で過ごし、それから朔と一緒に利成の家を出た。明希はまだ帰宅していなかったので、利成に帰ることを伝えておいた。


帰り際「朔君、今回の絵は順調?」と利成が聞いた。


「いえ・・・まだこれから・・・」と朔が言った。


「そうか・・・じゃあ、またいつでもおいで」と利成が言うと朔が物凄く嬉しそうな顔をして頭を下げた。


 


「・・・ホテルってどこ?」と帰り道、朔が美園の手をつないできた。


「一番近いのは○○駅裏の辺りかな・・・」


美園はスマホを見ながら言った。


「じゃあ、行こう」と朔が言う。


「いいけど、時間大丈夫?」


「全然大丈夫」と朔が笑顔を美園に向けた。


そのホテルはラブホと言っても普通のホテルのような作りで、何故か住宅街の中にあった。入り口辺りまで行って、何となく周りを気にする。二人で手をつないで一気に建物の中に入った。


部屋を選んでから部屋へ行く。その一室はどことなくきらびやかで壁は鏡が張り巡らされていた。


「何かすごーい」と美園は部屋の中を見回した。


「美園も初めてなの?」と朔も珍しそうに部屋の中を見回しながら言う。


「初めてだよ」


「その・・・あの晴翔とかいう人とは?」


「あー、晴翔さんは一人暮らしだから家に行ってたよ」


「そう・・・」


「あ、こっちお風呂だね」と美園はドアを開けて浴室の中を見た。「案外広いんだね」と美園は浴室の中をのぞきながら言った。


「朔、先に入る?」と美園が聞くと「美園が先に入っていいよ」と言う。


「そう?じゃあ、シャワーだけ入るね」


美園がシャワーから出ると入れ違いに朔が浴室に入った。美園は下着をつけようか迷ったが、一応下着はつけた。それからベッドに入って適当にスマホを見ていると、朔が浴室から出てきた。パンツだけ履いてバスタオルで身体を拭いている。そしてそのままベッドに入って来た。


美園は布団をかけて仰向けになった。天井にも鏡が張られてあって自分の顔が見えた。


「不思議・・・どこを見ても私がいる・・・」


美園が言うと、朔も仰向けになった。天井の鏡に朔の姿も映る。


「こんなに鏡があると、どっちが本当の世界かわからなくなるね」


「・・・・・・」


「朔は私が好きだからしたいの?それともしたから好きなの?」


いつかの奏空の言葉を使って聞いてみた。


「・・・美園が好き・・・したいのはしたいから・・・」


「アハハ・・・そうりゃそうだね」


そう言ったら朔が口づけてきた。遠慮なく猛烈に口づけてくる。そしてブラジャーを押し上げて乳首を口に含んできた。前の時のような恐る恐るというような自信のない感じでとは正反対で、胸を揉み、荒々しく口づけて来る朔。


(あ、ちょっと・・・やば・・・)


晴翔とは違う。自分の根底にあるエネルギーをただぶつけてくるような・・・。


(そうだ・・・何か・・・あの、利成さんの絵・・・みたい・・・)


朔の唇が美園の下半身に下りていく。太ももから足の付け根に舌を這わして舐めまくってくる朔に、美園はだんだん感じて身体が反応していく。


朔が下着を脱ぎ、美園の中に入ってくると、美園は思わず声を上げた。


(あ・・・やだ・・・)


美園は晴翔との時よりずっと感じてしまっている自分に気がつく。


「美園・・・俺の名前呼んで・・・」と朔が言う。


「あ・・・無理・・・」と美園はどんどん感じてくる感覚にそれどころではなくなっていく。


朔がどんどん盛り上がって奥を突いてくるので、美園は少し焦って「中に・・・出さないで・・・」と喘ぎながら言った。


「ん・・・」と朔が初めての時のように美園の上に射精した。


「はぁ、はぁ」と朔の呼吸を整えている。美園が目を開けると朔の額には汗が見えた。


 


後始末を終えると朔が美園の身体を抱きしめてきた。


「美園・・・」と感極まったように言う朔。


「朔、汗でべとべとだよ」


そう言ったのに、朔はまったく違うことを言ってきた。


「美園・・・だけ・・・俺のこと真っ直ぐ見てくれた・・・」


「え?」と聞き返すと朔が美園から身体を離してからもう一度言った。


「美園だけが、俺のことただ真っ直ぐ見てくれた」


「そう?」


「うん・・・」


「真っ直ぐっていうか・・・面白かっただけだよ?」


気を悪くするかなと思ったのに、「アハハ・・・」と朔が笑った。


「俺も、美園が面白かったよ・・・」


「私が?私なんて面白くもなんともないでしょ?」


「そんなことない、面白くて・・・楽しい」


「そうなんだ」


「うん」


 


シャワーを浴びてから時間ぎりぎりに部屋を出た。会計は帰りになっていたので精算機で済ませた。


帰り道、朔が手をつないできた。


「ずっと一緒にいたいな・・・」と朔が握る手に力をこめてきた。


「そう?それはそれで飽きちゃうよ?」


「そんなことない・・・」


「そうかな・・・」


「そうだよ」


でも、きっと毎日一緒だなんてすぐに飽きてしまうに違いないと美園は思う。


 


自宅マンションに戻ると、リビングには誰もいなかった。今日は奏空も休みのはずだ。何気なく夫婦の寝室前に行くと中から咲良の声が聞こえてきた。


(なんだ・・・咲良もやってるわけね・・・)


中学生の頃、まさに夫婦のセックスの時に寝室のドアを開けてしまった時があったが、美園はまったく動じなかった。咲良から「あんたって異常」と言われたこともあるが、何故だろう・・・自分はそういうのを何故隠すのかわからなかったのだ。


最初から組み込まれているなら、当たり前のことで自分の責任でもない。確かに誰彼構わずはちょっとな・・・とは思うけど・・・。


美園は今ドアを開けたら、咲良はどうするだろうと意地悪な思いがわいたが、とりあえずそれはやめておいた。


そのまま自室に戻る。さっきの朔とのセックスがまだ身体に残っていた。


(あんなに感じちゃうなんて・・・)


思い出すとまた身体が疼いた。ふと自分の足を投げ出してみる。


(そんなにいいかな・・・)


朔の気持ちは美園にはわからない。それからスマホを開いてみる。


(晴翔さん・・・)


明日までは休みだと言っていた。けれどやはり美園は行く気持ちにはなれなかった。きっとまだその彼女が好きだろうし、いつまたよりを戻そうとするかわからない。晴翔のことは嫌いになりたくなかった。


(晴翔さん・・・好きだったのにな・・・)


”だった”と思ったのは、もう過去のことだからなのかな?


(よくわからない・・・だってやっぱり本当は会いたい・・・)


美園はそう思って目を閉じた。何だか疲れを感じてその日はそのまま眠ってしまった。


 

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