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蓮華 ~外伝~  作者: 釜瑪秋摩
長田鴇汰 ~あれから~
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第1話 西区での生活

 目覚ましが鳴り、目を覚ます。

 襲撃に備える緊張感がなくなってからか、以前よりも目覚めるのに時間が掛かっている気がする。


 シャワーで頭をスッキリさせ、着替えをしてキッチンのドアを開けた。

 朝食の支度をしながら、リビングへ視線を移し、鴇汰ときたはため息を漏らした。


「おい、おまえらも、もう起きろよ? 朝飯、食ってくんだろ?」


 ソファと床に雑魚寝しているのは、七番の隊員の矢萩やはぎ大石おおいし豊浦とようらだ。

 一昨日から昨日に掛けては、岡山おかやま石場いしば瀬野せのが来ていた。

 その前は、高尾たかお蓮見はすみ住谷すみたに


「んぁ……おはようございます、長田おさだ隊長、いつも早いですね……」


「あれ? 隊長は?」


麻乃あさのは今朝も早くから、修治しゅうじと手合わせに行ってるよ」


 三人を起こしてシャワーを使わせ、朝食の支度を手伝わせた。

 毎朝、こうだ。


 西区に越してきてからというもの、毎日のように七番のやつらがやってきて、泊っていく。

 最初のうちこそ、物珍しさもあるからだろうと思っていたけれど、ここに移ってきて腰を据えてから半年を過ぎるというのに、まだ来る。

 おかげで鴇汰は、未だに麻乃と別々の部屋で寝ている。


 大陸でクロムや梁瀬やなせたちと、土地の息吹を吹き返す術を使ったあと、泉翔に戻ってきてから東区で過ごしていたあいだは、本当に幸せだったのに、西区に戻ってきた途端、これだ。

 この家は呪いでも掛けられているんだろうか?


 バタンと玄関で音がして、麻乃がリビングに入ってきた。


「あれ? みんな、もう起きていたんだ?」


「あ、隊長、お帰りなさい。お先にいただいてます」


「麻乃、すぐメシにするか?」


「うん、着替えをしたらすぐ食べたい。もう、お腹空き過ぎたよ」


 そう言いながらシャワーに行くあとを追って、タオルを手渡し、くれぐれも着替えをちゃんとしてからリビングに来るように言い含めた。

 最近は減ったけれど、下手をすると下着姿のままで出てこようとするから、油断ならない。

 ちゃんと着替えてきているのを確認して、テーブルに麻乃のぶんの朝食を出す。


「あ、そうだ。大石、今日の角猪つのじしの依頼、何時からだったっけ?」


「今日は十三時に、居住区の第二農場の前に集合ですよ」


 戦争に出ることがなくなって、戦士たちはどうなるかと思ったけれど、思ったよりもいろいろと仕事がある。

 角猪だけじゃあなく、山からおりてくる猛獣の退治依頼が、各区から出ているし、おおよその頭数などを、猟師たちと一緒に調べることもある。


「わかった。十三時ね?」


「遅れないでくださいよ? 暗くなると厄介になりますからね」


「大石、心配しなくても、俺がちゃんと送り出すよ」


「そうだ、長田隊長、どうせなら長田隊長も来てくださいよ」


「えっ? 俺?」


 豊浦が突拍子もないことを言う。


「いいね、鴇汰、そうしなよ。鴇汰も来てくれたら、うちも助かるしさ」


「えぇ……?」


 麻乃まで一緒になって、そんなことを言うもんだから、断りようがなくて参加させられることになってしまった……。

 時間になって指定の農場の前まで来ると、もう七番のやつらが集まっていた。


「長田隊長、お久しぶりです」


「なんか、すみません。うちの依頼につき合わせてしまって」


 小坂こさか杉山すぎやまと挨拶を交わす。

 二人に会うのは、本当に久しぶりだ。

 この二人だけは、来る前には連絡をくれるし、泊っていくこともない。


「別にいいよ。俺も暇だし、うちの部隊のほうは特に依頼も請けてねーしな」


「だったらいいんですけど」


「鴇汰! 小坂も杉山も、手順の確認するよ!」


 麻乃に呼ばれ、隊員たちとともに、今日の手順を確認した。

 昨日のうちに、七番のやつらが罠を仕掛けているそうだ。


「前回のときは、二班に分かれたけど、今日は三班でいこう。一班で一頭、経験あるからいけるよね?」


「はい!」


 全員が応え、麻乃が組み分けをしていく。

 そのあいだに、小坂が罠の位置と、それぞれの持ち場を決めている。

 手順を決める早さを、鴇汰は感心しながら眺めていた。


 自分の部隊で同じことをしたとき、ここまでスムーズにいくだろうか?

 西区に移り住んだことで、五番のみんなと会う機会も減っている。

 今、みんな中央にいるけれど、たまには会いに行って、東区の依頼を請けたいと思った。


「鴇汰、鴇汰は小坂と一緒に三班をお願い。あたしは一班、杉山は二班ね」


「ああ、わかった」


 本当は麻乃と一緒が良かったけれど、力のバランスを考えたら、別々のほうがいいんだろう。

 一班が十七人ずつで、三班だけが鴇汰が入ることで一人多くなる。

 だからなのか、年下の新人たちが他より多い。


「それじゃあ各班とも、しっかり頼むね」


 麻乃の号令で、それぞれが担当の場所へと移動していく。

 農場奥の広い森の中を、三手に別れて探る。

 小坂が罠を仕掛けた場所に、小さな赤い旗を立てた。


「おまえら、前にも角猪を倒しているよな? そのときも罠に掛かりにくかったんだろう?」


「ええ。ですが、うまく誘導すると掛かるので、やつらを見つけたら、まずは罠へ誘導してください」


「わかった」


「長田隊長、うちだけ取り逃がすわけにはいかないんで、頼みますよ?」


「角はマジでヤバいですからね? まあ、長田隊長は大剣だから、そう心配もいらないでしょうけど」


 矢萩と豊浦が変なプレッシャーをかけてきて、鴇汰は苦笑いを返した。

 というか……古株は何人もいるのに、よりによって矢萩と豊浦と一緒か。


 離れた場所で、大声がいくつも響いているのは、きっとほかの班が角猪と接触したからだろう。

 小坂の指示で木々のあいだを探して歩く。

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