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別れと出会い

廃れた建物が並ぶ荒野に金属と金属がぶつかり合う音が響き渡る。

遠くからは爆発音のような轟音が鳴り響く。


目の前には7人の少女たち、そして人型の影が戦っていた。


その光景を見た瞬間、僕には無力感が生まれていた。

僕には才能がない、その事実が胸を締め付ける。

剣の才能も魔法の才能もなにもない。

自分でもなぜここに立っているのかわからない。


ただ一つ、強い思いが自分の中にあるのを感じた。


(彼女たちを守らないと…)

強く地面を蹴り土埃が舞う。


影に対して剣を振るうがいともたやすく受け止められた。


「くっ…そ……!」

必死な僕をあざ笑うかのように影の口元が綻びる。

その刹那、影以外のその場にいた全員が吹き飛ばされた。

倒れこむ少女たちが視界に入った。

誰一人としてピクリとも動かない。


少女たちが動かないことを確認した影はこちらを見るとゆっくりと近づいてくる。

そして僕の目の前で静止し、言葉を発した。


「私を倒して。」


僕はその言葉に対し絶句した。

こいつは何を言っているのか、少女たちを殺めたのはお前だろう、と。

影は微笑みながら言葉を紡ぐ。


「あなたには力がない、自分自身でも分かっているはず。だから運命に抗えなかった。」


僕はその言葉を聞き、言葉が出なかった。

自分が弱いのは自分が一番分かっていた。

僕が強ければ少女たちを守れていたのに、一緒に戦えたのにと心の中で嘆く。

そんな心を見透かしたような表情を浮かべ影はさらに言葉を紡ぐ。


「あなたとはまたここで出会うことになるでしょう」


僕はその言葉の真意を問おうとしたが、それを遮るかのように影は僕の心臓にめがけてナイフを振りかざした。

最後に影は何か言っていた気がした。


「また…、約束…いで…」


意識が朦朧とし聞き取れないまま視界が暗転していく。


(もしやり直せるなら…最初から…)


そんな叶うはずもない願いが心によぎり、僕の意識は深く沈んでいった。






窓から差し込む光とうるさいアラーム音で僕の意識は覚醒した。

アラームを止め時間を確認し、気怠い体を起こして着替え始めた。

現在日曜日の時刻は九時半、大学が休みなので一日満喫しようと思ったが冷蔵庫の中身が心許ないことに気が付いた。


「なんもない…、なんか買いに行こう。」


大学とバイト以外ではあまり外に出ない僕にとっては駅前のスーパーに行くのにも重労働だ。


「もう少し近くにコンビニとかできてほしいな。いっそのこと家の中に…。」


そんな独り言を呟いていた時だった。

妙な気配がしたのでそちらに目を向ける。


「神社…?こんなところにあったっけ?」


ここは駅へ行く途中によく通る道で、大体の景色は覚えているはずだったのだが、見知らぬ鳥居とその先に少し古くなっている神社が目に映った。

いつもなら面倒くさがり絶対に行かないのだが、妙に気持ちが落ち着かないので行くことにした。


「思ってたより立派だな。」


近くで見ると思っていたより立派でそんな言葉が漏れる。

先ほどまで感じていた妙な気配もいつのまにか無くなっていたので、引き返そうとしたその時だった。


「 … 」


誰かが呼んでいる気がした。

その方向を見るとかなり大きい木があった。


「御神木ってやつかな?」


その木に近づいた瞬間激しい光に視界を奪われ、次の瞬間には体が浮遊感に襲われていた。

周りを見ると青い空、白い雲。

下を見るとあたり一面が森になっていてその中にポツンと建築物が見える。

まるで空を飛んでいる感覚だ。


「え?」


その瞬間僕は気づいた。

僕は空を飛んでいるんじゃなく落下しているのだと。

何が起きているかわからずパニックになる。

唯一分かることは、このままだと地面とキスを交わしてお陀仏ということだけ。


「掴…て!」


声がした気がした。

パニックになりすぎて幻聴が聞こえ始めたのだと思ったが、今度はしっかりと聞こえた。


「掴まって!!」


声がしたほうを見ると綺麗な金髪の少女がこちらに手を伸ばしていた。

僕はこのままお陀仏はいやだと思い、目の前に差し伸べられた手を掴むのだった。


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