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第7話 完璧伯爵

 弁当を食べ終えた俺は今、シエルの謎解きに協力している。


「気になってんだけどさ、『知恵の輪』って別に何か悪いことしてるわけじゃないんだろ?ただ、知識を与えてあげるだけなんだし、それはいっそ良いことなんじゃないのか?」


 俺は、前々から思っていた疑問を解消すべくそう尋ねた。


「………投資よ」

「投資?」

「一々聞き返してくるな!めんどくさい!」


 えぇ………

 無意識にやってたが、そんな風に思われていたのか。

 これからはやめておこう。

 俺が少し、しょぼくれていると………


「っぁあ、もう!私が言いたいのは、話す事が無いのに無理に何か言って話を繋げてこようとするのが不快だって言ってるの!つまりは!」


 シエルは俺に顔を近づけて、よくよくよーく聞こえるようにこう締めくくった。


「気を使わなくていいって言ってるの」


 だけどそれは、堂々としていて、真顔で、真面目で、信憑性のあるいい言葉だった。

 今のも俺なりに訳すと、つまりは心に残る言葉だった。って事だ。


「りょ」


 正直、気を使うという事がまだよく分からないが、とりあえずそれっぽく言ってみた。

 『了解』なんて言うよりも、こっちの方が短くまとめられていて、気を使っていない(?)って事になると思うしな!


「そ、そういう意味じゃなかったんだけど………まぁいいわ」

「戻る本題投資何?」


 次はさっきよりも上手くまとめられたんじゃないだろうか。

 我ながら上手いな。

 完璧パーフェクトだ。

 完璧パーフェクト伯爵とでも呼んで欲しいものだね。


「もういいわよ!さっきのは撤回するわ!戻しなさい!」

「りょ」


 俺の短文人生最後は、やはり短文で締め括った。

 果たしてこれを『短文』と呼んでいいのか、それは謎ではあったが。

 まぁ今さらいいだろう。終わった話だ。

 完璧パーフェクト伯爵は器が広いのだ。


「……………」

「本題に戻るが、投資とはどういう意味だ?」


 無言になったシエルを気にかける事なく、俺は三文ぶりの普通の言葉を放った。


「アンタ、投資も知らないの?高校生として恥ずかしくないの?」

「そんな当たり前のように高校生全員が『投資』を知っているかのように言うのはやめろ!というかそれくらい知ってるよ!」


 投資はもちろん知っている。

 俺が知りたいのは、コイツが何故『知恵の輪』の悪い部分を投資と言っていたのかだ。


「冗談よ冗談」


 そう思っているとは到底思えなかった。

 何故ならシエルの表情は、どこか申し訳なさそうにしていたからだ。


 きっとシエルは、俺は本当は知恵の輪を知らないが、意地を張って嘘をついているんだ。などと思っているんだろう。

 そしてこの顔は、それを暴いてしまった申し訳なさからきているんだろう。

 どんだけコイツは俺を馬鹿にすれば気が済むんだ。


「本題に戻りましょうか。実は、知恵の輪にハマってしまった人達は皆、知識を与えられる見返りとして金を要求されているんです」

「金ねぇ」


 でも、それじゃ投資なんて呼び方はしないだろう。

 投資ってのは見返りの方が上だ。

 だとしたら、ただ金を渡すだけじゃおかしい。

 きっと何か裏が………

 

「ごめんなさい。これは投資というより、競馬や宝くじのような『賭け』に近いわね」


 投資と賭けじゃあ全然違うな。

 まぁどちらにせよ、まだこれには裏がある。


「知識を与える人間を、仮にXとするは。皆はXに金を払い、知識をもらう。だけどその〝知識の質〟は人それぞれなの」


 知識の質。

 それはつまり、知って得するかのランクみたいなものだろう。

 得するものもあれば、得しないものもある。

 逆にどちらも得はするがその中でも優劣があるようなもの。

 どちらも得しないがその中でも優劣があるもの。

 そんな感じで、知識にも優劣がある。

 そういったもののことだろう。


「金を払えば払うだけ、貰える知識の数は増える。だけどその中の知識の質がどうかは決まっていない。ソシャゲのガチャにも似ているわね」


 なるほどな。

 確かにそれは、中毒性が高そうだ。

 実際、ソシャゲ等で課金しまくる人もいるみたいだし、人間ってのは毒されやすい者なんだろうな。

 まぁ、それは俺も同じなんだが………


「でも、本当にそれだけでそこまでハマるのか?たかが知識だぞ?ゲームとは違うんだ」

「謎はそれなのよね……」


 悩みどころだ。

 事件の犯人以前に、根本的な原因から探っていく。

 探偵らしいじゃないか。

 俺も今や、その助手に等しいじゃないか。

 いやできるなら、俺も探偵したかったよ。 

 だってそっちの方がかっこいいしさ。


「アンタ、本当に考えてる?」


 雑念が入っていたのを、あっさり見破られてしまった。

 いかんな………

 協力しているからには、ちゃんと考えなければ。


「こういう時のためのアンタなのよ、分かってんの?」

「悪い、今回は役立ちそうにないかも」


 悪気の無さそうにそう言ってみた。

 とはいえ、一応やるだけやってはみる。


 まず考えるに、発生源を断てば一発だろう。

 そうすれば、これからハマる人はいなくなるだろう。

 だが、今現在ハマっている人はどうなるだろうか?

 ハマっていたものがなくなる。

 それは耐えられることなのか?

 金を使うほどの中毒性。それはタバコの中毒者と同じなのではないだろうか。

 きっとやめられない。

 発生源を断つ以前に、まず今現在にハマっている人達を元に戻す必要がありそうだ。


「Xを離れさせるのが一番だとは思うが、それ以前にまずは、今ハマっている奴らを元に戻すことが最優先だとも思う」

「そうね」

「でも、どうやって戻せばいいのかが分からないんだ………」


 俺は頭を抱えていた。

 そりゃそうだ。そんな事ができていれば、麻薬中毒者も、タバコ中毒者も、ギャンブル依存者も、みんな簡単に戻せているのだから。

 世の中は、そんなに甘く無い。

 分かってはいたが、これは少し厳しい……………


「それなら簡単よ。宛があるは」

「……………は?」


 その発言に、俺は驚くしかなかった。

 そして内心、そんなに信じてはいなかった。

 それから、その言葉が本音だと気づくのに、そんなに時間はかからなかった。


「宛って………人間なのか?」

「えぇ、能力者のね!」


 どうやら能力者は、案外どこにでもいるみたいだ。

 





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