第35話 I NEED YOUR HELP
「……………」
顔中がケチャップまみれだ。
心底イライラする。
なんでこんな目にばっか遭わなきゃならねえんだよ。
………落ち着け、碓氷さんへの好感度のためだ。
ここで怒ってはいけない。
「………あー、布巾もらってもいいですか?」
「オォ、ソーリィ!間違えまーしたぁ!今持ってきますぅぅ!」
喋り方うぜえ。
反省してないだろこれ。
「どおおぞ!布巾でございまぁぁぁすっうう!」
そう言って店員は、顔の前に布巾を置いた。
「ありがとうございま
言い切るところで、身体が壁に吹っ飛んだ。
「痛いっ……」
なんだ、何がおきた?
全く理解できなかった。
布巾を取ろうと、手を伸ばした時にはもう、身体は吹っ飛んでいた。
そして、頬にはジンジンと痛みがあった。
殴られた……?
見ると、布巾を渡してきた店員は、ニヤニヤと笑っていた。
「お前、リンチ、確定〜!それが嫌なら、〝早瀬川源蔵〟の居場所を、吐け!」
爺ちゃんの居場所?
何言ってんだこいつ。
「あぁ、言ってやる。爺ちゃんはとっくの昔に死んだよ」
よくわからんが、これで逃がしてもらえるか。
「………はぁぁ?そんなわけねえだろうがよ。こっちは前に、あのジジイに襲われてんだよ!死んでるわけねえだろ!」
「………どういうことだよ?」
「まあ、言えるわけねえか。仕方ない……」
店員は高くジャンプした。
そして、真っ直ぐ俺に向かって突進する。
単純すぎだろ。
俺は見え見えの突進を、簡単に避けてみせた。
「……は、はぁ?」
俺は、そのあまりの驚きに、声が漏れた。
店員は俺にぶつかることはなかった。
だが、止まることもなかった。
減速することなく、無理やり、壁を抉るようにひたすら特攻していった。
ゴリゴリという音が止んだと思い、俺は貫通した壁を見た。
壁には、とんでもなく長い穴ができていた。
いくつもの部屋を通り、そして最後には、外まで続いていた。
嘘だろ、バケモンかよ。
能力者なのは間違いないだろう。
それでも、ここまでの迫力を見せられたのは、初めてだ。
「ま、馬鹿やってる今がチャンスだ。碓氷さん、逃げよう!」
そう言って、俺が碓氷さんの方を向いた時。
カチャ
いくつかの金属音が、同時に鳴った。
俺は、囲われていた。
拳銃らしきものを握った、店員数名と……碓氷さんによって