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第30話 秘匿の肉体

「君は、能力者なのか?」

「能力者です」


 ガンッ!!


 俺が答えた途端、鈍い音が頭部に響いた。

 

「ぐっ…………」


 俺はこのクソ野郎に、首を捕まれ、壁に頭を押し付けられていた。


「な、んで………」

「まさか革命者レンブラーが紛れ込んでいたとはなぁ!!ここで確実に殺す!!」


 さっきまでの好青年とは思えないな……

 というか、俺が革命者?

 勝手なこといいやがってよ全く。

 あんな危険なやつらと俺を一緒にするんじゃねえよ!

 俺からすれば、お前の方が革命者だっての!


 ………まあいいか。

 ()()()()くらいは自業自得だぞ。


「何してるのよ!」


 と、シエルが飛び込んできた。

 クソ野郎の腕に飛びかかるも、びくともしない。


「お前もこいつの仲間か?」

「そうよ!幸一を離しなさい!」


 こいつも革命者か……

 フンッ!


「きゃっ!」


 右腕を振り払い、女を飛ばした。

 女に手を出すのは気が引けるが……犯罪者は殺すべし……

 

 ………グギッ!


 な、なんだ!?

 突如、鈍い金属音と、腕に強烈な痛みが走る。

 お、俺の右腕が……逆向きに曲がっている!?


「はぁ………はぁ……はぁ」


 痛い。

 こんな激痛は、生まれて初めてだ。


「少し、話しを聞いてもらいますよ」


 さっきまで首を締めていた男が、頭上で話しかけてくる。


 まさか、こいつがやったというのか!?

 こんなヒョロそうな奴が……!?


「俺は、革命者じゃありません。ただの能力者です」

「なんだと…?」


 嘘だ、だまされるな……


「証拠はあるのか!」

「ない、てか逆になんで俺がそうだと思ったんだよ」


 だが、この学校に革命者がいるという情報は確か。

 能力者として生きて、何もしていないなんて、正直信じがたい。

 でも、もし本当に革命者じゃないとしたら……


「背中を見せてくれ……革命者には、背中に刺青があるはずだ」

「ほらよ」


 俺は背中を見せた。

 もちろん、そんな刺青はない。


「そんな………」

「てか、最初からそれを聞いてこいよ」


 勝手な勘違いをされて、首まで絞められて、こっちはイライラが止まらないんだよ。

 まあ、暴力を振るったのはこっちもだし、自業自得ではあるが、誤っておこう。


「まあ、腕を折ったのは悪かった。すまん」

「も、申し訳ありません。勝手な勘違いで、大変なご迷惑を……」


 と、態度が一変。

 優男からクズ男に落ちて謝罪男にグレードアップしたな。


「まあ俺は怪我もしてないしいいけど。てかあんた、すぐ病院行った方がいいと思うぞ」

「……治り次第、また伺います」


 そう言って、勘違い野郎は痛そうに腕を抑えながら去っていった。

 二度と来んな。


「ね、ねえ幸一……」


 シエルは、あたふたしながら尋ねてきた。


「さっきの人……腕が変な方に曲がっていたけど……あれ、幸一がやったの?」

「まさか、俺がそんなことできるわけないだろ?あいつは滑って腕を床に打ち、自分から腕を折ったんだよ」

「そ、そうよね!幸一がそんな力あるわけないし!」


 俺だって、昔は筋トレしてたんだぞ!

 ……昔はだけど。


「そろそろ騎馬戦の結果もでるし、戻るか」


 俺たちは、グラウンドへ戻った。


「結果発表!騎馬戦の順位は、一位赤チーム!二位黄チーム!三位青チーム!四位緑チーム!」


 おおおおおおお!!

 俺たち赤チームが一位だ!!


「やったわね!これで合計は……」


 一位、黄チーム

 二位、赤チーム

 三位、青チーム

 四位、緑チーム


 黄と赤の点差は、ほとんど変わらない。

 次のリレーが勝負どころだ。

 リレーで勝てば、間違いなく優勝。


「シエル、リレー任せたぞ!」

「もちろん!!」


 俺たち一年のリレーには、信木…平山…大橋…そしてアンカーのシエルが出る。

 平山は、騎馬戦でひっそりと怪我をしてしまった勝浦の代わりだ。


 リレーは全学年の総合で順位を決めるんじゃなく、各学年ごとに順位を決め、その順位ごとにポイントが決まる。つまり、一年が勝てても、二年三年が負ければ優勝はないってことだ。


 あとシエルの能力だが、能力の調整ができないため、使用は禁止。

 まあ、素であんだけ速けりゃ、能力がなくとも十分だと思うが……


「それじゃ、リレー並ばないとだから」

「おう、頑張れよ」


 シエルを見送り、応援席に戻ろうとしていた時。

 俺は、リレー待機中の人達の中に、見覚えのある顔があるのに気がついた。

 黄チームの中。

 そこには、青髪で高身長、さらに僕っ娘という数多の属性を兼ね備えた女子がいた。

 

 そう、短距離走の際、俺をカラオケに誘ってきた、あの女子だ。


 そういえば、名前なんだっけな。

 ………言われてないな。


 まあ、カラオケの時に聞いてみよう。


 ……俺は応援席に戻った。


「それでは、体育祭ラストをしめる!リレーの始まりです!」


 四人が横に並び待機している。

 いよいよ始まるのか。

 

「それでは……よーい!」


 審判がピストルを上にあげる。

 そして………


 パンッ!!!!


 甲高い音とともに、四人が走り出した。

 リレーが……始まった。


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