第26話 第二、三、四種目
第二種目の玉入れが始まった。
最初は順調に玉が入っていったが、後半で他チームの追い上げにより2位で終わってしまった。
第三種目は大縄。
これは比較的運動神経の高い人で固められている。
勝てる可能性は高いな。
「………ん?」
よく見ると、選手の中にはシエルの姿があった。
あいつ大縄も出るのかよ。
この感じだと、ほぼ全種目にでそうだな……
そんな事を考えている間に、開始のホイッスルが鳴った。
しかしそこには、信じ難い光景があった。
「……1!2!3!4!………」
大声で回数を数えながら、縄を回している、シエルの姿だった。
あいつのことだから、跳ぶ側にいるもんだと思ったら……
そういえば、今日は一人欠席がいたっけな。
その代役として、シエルが行ったのかもしれない。
昨日のこともそうだが、あいつは案外、こういった祭り事は熱心にやるんだな……
そういや、さっきシエルの態度が変だったな。
それも終わったら聞いてみるか。
そうして大縄は順調に終わり、1位をとることができた。
さすが我がクラスが誇る体育会系だ。
俺に引けをとらない良い筋肉をもっているな!
などと一人で思い一人で悲しくなっていると……
「見てたわよね幸一!私達勝ったわよ!!」
シエルはいつも通りの元気なままこちらへ走ってくる。
さっきのはなんだったのか……
「見てたよ、おめでと。けどお前がでないなんて珍しいな」
「私が毎度毎度出てたら他のみんなが出られないでしょ!皆んな勝ってこその体育祭なのよ!」
わかってないわねー、とでも言いたげな様子で、シエルは腕組みをして仁王立ちする。
「……昨日のお前もそうだが、そういう風に熱心なところ、すげえいいと思う。ほんと、救われてる」
「き、急にどうしたのよ!褒めても何もでないわよ!私はただ、あんたに騎馬戦本気でやってほしくて言っただけだから!」
ツンデレなところは変わらずだな……
「それでも、ありがとな」
「……っ!ど、どういたしまして……」
「てことで、俺は綱引きがあるから行くわ」
「え!私も代役で綱引きあるんだけど!」
おお、まじか。
正直心強い。
素であれだけ足が速いんだ、力だって相当なものだろう。
「じゃ、一緒に行くか」
「……うん」
シエルは小さく頷いた。
……ここ最近のこいつ、なんか可笑しくないか。
こんくらいのセリフじゃ、いつものあいつは照れたりなんかしなかった。
でも、今はこうやって、こんな普通のセリフひとつで、照れながらついてくる。
正直言って、めっちゃ可愛いので全然ありなんだが……
さすがに毎度毎度は……周りの視線がね?
周りを見ると、シエルを狙った男達が、俺を冷ややかな目で見てくる。
そういえばこいつ、転校してきた時の評判良かったからなー。
まあ、そいつの正体は、出会って初日で銃を突きつけてくるような野蛮女だったわけだが。
「……幸一、一ついい?」
ん?と俺は横を見た。
「さっき言っていた女の人……カラオケに誘われたって人……どんな人だった?」
「どんな人かー。普通に、美人。あと、身長がめっちゃ高い。あと筋肉質な体してたと思う」
「見た目のことばっかりね!」
「そりゃあんな可愛かったし!……あと、自分を僕呼びしてる」
「見た目以外の特徴はそれだけって……」
「初対面だししょうがないだろ」
「まあそっか。可愛いのね……」
また、シエルは黙り出す。
次は照れでもなく、どこか寂しそうな顔で俯いていた。
「あ、綱引き始まりそうだぞ!」
そう言って俺はシエルの手を掴み、走った。
「………そういうところよ」
シエルが、何やらボソボソ呟いているみたいだったが、聞き返すことはしなかった。
俺達は急いで、綱引きの配置についた。
後ろから力の強い人順で並んでいる。
勿論、俺は最前列だ。
ピーッ!
ホイッスルと同時に全員が立ち上がり、縄を思いっきり引く。
くそ、力を少しでも抜いたら、一気にもっていかれそうだ……
それほどに拮抗した力関係だった。
声を出し、力いっぱい引っ張った。
全員が、最高に全力で挑んでいたと思う。
それでも、結果は最下位。
これで合計点は、一位から三位へと転落した。