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第13話 勘違い

「つまり………今まで俺に見せた姿は全部偽物だったってわけか?」

「今までとはいっても、まだ二日程度だけどね」


 長良の正体は女だった。

 最初に見せた汗臭いおっさんの姿も、次に見せた筋肉マッチョのおっさんの姿も、全て偽物だったってわけだ。

 本来の姿は、こんなにも美しかったんだな。

 とはいえ………


「………まずは服を着て下さい」

「えー、着てるじゃん」


 長良の偽物の体の下は、下着とパンツ一枚だけであった。

 ………目のやり場に困る。


「それのどこが着てるって言うんですか!?」

「いやいや、別に裸って訳じゃないんだからいいでしょ?」


 よくねぇよ……

 こっちの立場にもなってくれよぉ……


 ………まぁいいか。

 そっちがその気なら、俺もでるとこでるぞ!


「………へぇ、堂々と見るね」


 俺はガン見だった。

 彼女の胸元を、谷間を、左右の大山を、目をガン開きにしてじっと見ていた。


「だって、別に裸じゃないんですよね?」


 俺はそう煽る。


「その考えに陥るとは、中々優秀だねぇ」


 いやアンタが言ったんだろ。


「まあでも、そんなに見たいのなら………見せてあげてもいいよ?」


 彼女はそう言って、ブラジャーをめくろうとした。


「ダメェェェェェェェェェェェーーー!!?」


 しかしそれを、シエルが止めた。

 くそっ!良いところだったのに!


「はぁ……はぁ……そんな事よりも、さっきの説明をお願いするわ、長良」


 シエルはやけに焦っていた。

 よっぽど長良の大山が羨ましかったんだな。

 うん、分かるぞ。お前は小さそうだもんな!


「そうだね、さっきの説明をしようか。私の見えた限りだと、蜂木は爆発した」

「………爆発?」


 爆弾とかなら分かるが、蜂木が爆発したってのはどうもなぁ………

 

「そう、爆発。証拠も理由もないけれど、間違いなく見た。蜂木の体が膨れ上がっていき、破裂したかと思うと、爆裂音と共に周りが火だるまになっていた」

「それは、体に爆弾が埋め込まれていたって事なのか?」


「その可能性もあるけど、もしかしたら能力者による犯行かもしれないよ。爆弾を埋め込む能力、無いとは言い切れないよ」

「それだとすると、革命者レンブラーの誰かによる、情報を吐かせない為の措置って事になるな」


 情のない奴らめ。


「そうだね。それと、もう一つ気になることがある」


 ………他に何かあったっけ?


「レンブラントブラ………」


 シェリアがそう呟いた。


「よく覚えてたね」


 あ、これなのね。


「レンブラントブラ、奴が死ぬ間際に言い放った言葉だ。レンブラーの情報であるだろうこの言葉、恐らく人名だね」

「いやいや待て待て、別に人名とは限らないだろ?」


 俺はあまりに話がスムーズに進みすぎたせいで、よく理解できていなかった。


「じゃあ、この世に存在する似た人名を挙げていこうか」

「え?」


 ここから、彼女の狂気の片鱗を味わうこととなる。


「レンブラントブラッド・レンブラントブラウン・レンブラントブーシェル・レンブラントブラマー・レンブラントブライン・レンブラントボマー・レンブラントライテル・レンブラントアリスティ・レンブラントハーネス・レンブラントパーリー・レンブラントアリゲル・レンブラントレッドバンク・レンブラントレンジデンシ・レンブラントマンブラント。この世に存在する似た名前だけでも、ざっとこれくらいは存在するね」


 いや、待って?

 何で当たり前のように記憶してんの?

 ちょっと怖いって!

 

「そして続く文字の『ブラ』を参考にして考えると更に絞れてくるね。ちなみにそれって言うのは………」

「いや、もう充分だから!!?」

「あ、そう?」


 そう聞かれ。俺は首を縦にふる。


 危なかったー!

 あんな地獄のような早口、二度と聞きたくねえよ。


「これだけ名前を聞ければ、今日中に特定できるね。忙しくなりそうだし、今日はここらで解散とするね」


 ということで、解散となった。

 ちなみに部屋の火は、消防隊が必死に消火中です。

 え?

 じゃあ俺達はどこで会議をしていたのかって?

 そりゃあ決まってんじゃん………


「今更ですけど、何で俺の家で会議してるんですか?」

「そりゃあ、幸一君が優しいからじゃない?」

「………俺は許可した覚えありませんよ」


「そんなじゃモテないわよー」


 シエルがそう煽ってきた。


「でもシエルちゃん、本当に幸一君がモテてもいいの?」

「え?別に何とも無いわ………いや、やっぱりダメぇ!!」


 急にシエルが叫び出した。

 情緒不安定かよ。


「何で俺がモテちゃダメなんだ……?」

「えっ!?そ、それは………」


 シエルはそこで言葉をきった。

 顔は赤く染まり、どこか恥ずかしそうにしていた。


 ………あれ、これってまさか。

 なんか、確信があるわこれ。

 うん、絶対にそうだ。

 だってそうとしか思えない。


「………シエル、俺の事が好きなのか?」


 そう言うとシエルは焦っていた。

 更に顔を赤く染めて、恥ずかしそうにしていた。


 ………これは確定演出ですね。


 さぁ、答えをどうぞ!

 分かりきってるけどね、わはははは!


「そ、そんなわけないじゃ無い!自意識過剰野郎ーーー!!」


 そう叫びながら、シエルは家を出て行った。


「幸一君、そこは分かってても言わない方がいいんだよ。はぁー……この恋は長くなりそうだなぁ……」


 やれやれ、と言った様子の長良だった。


「………て、あれ?幸一くん?」


 長良は幸一の姿を見て『あちゃー……』と言った。


「恋に敏感だと思ったけど、案外鈍感だったのかもね……」


 長良は、『ドンマイ』と幸一に言って、家を後にした。


「俺の………勘違い………?」


 膝をついたまま、俺はぼーっとしていた。

 今の出来事が、忘れられなかった。

 無限に脳内で再生できる。


「勝手に好きだと思って……あんな事言ったとか………」


 そして、頭が真っ白になった。

 さっさと消えてしまいたい。

 

「………ダサすぎるだろ……おれ………」


 俺が恋にトラウマを抱くようになったのは、この頃からであった………

 


 


今回のポイント!

タイトルの『勘違い』には、

・長良の姿を〝勘違い〟していた事。

そして

・幸一の、恋の勘違いをした事(これは本当は勘違いではなかった)


 の二つがありました!

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