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第12話 真犯人

「……………ん?」

 

 今、何て言ったの?

 

「もう終わらせた………って、え?どうゆうこと?」

「捕まえたって事だよ、犯人を」


 え?

 捕まえた?

 犯人を?

 犯人って、私に知識をくれた男の人の事だよね!?

 

「ちょっと待って!いくらなんでも早過ぎない!?というかいつの間にそんな事を!?」

「実は、色々あってね………」


 幸一は、何があったのかを話し始めた。




◇◇◇


 これは昨夜、俺と長良が話をしていた時の事だ。


「間違いなく裏に真犯人がいるね、これ」


 長良の推測から、真犯人がいる事はほぼ確定であった。

 そしてその時、別で疑われていたのがシエルの犯人説だ。

 長良の指示で、俺はシエルが犯人かどうか分かったら連絡しろと言われていた。

 そして案の定、シエルは犯人だった。


 それで俺は予め打っておいた文を、シエルとの会話中にこっそりと送信していたのだ。


 そしてシエルが犯人と分かった瞬間、長良は真犯人を凄まじい勢いで捜し始めた。

 長良からすれば、シエルが犯人なのはほぼ確定であったみたく、シエルと関係している人物を既に昨夜から捜しだしていたみたいだ。


 そして真犯人を見つけた長良は、俺がシエルと会話をしている間に、真犯人を捕まえたみたいだ。


「じゃ、じゃあ!あの男はもう捕まって、長良の所にいるってこと!?」

「そうなるな」


 そう言うとシエルは『えぇぇぇぇぇーー!!?』と奇声をあげて驚いた。


「まさかそんなすぐに捕まえられるとは思ってなかった………」

 

 嬉しいんだろうけど、なんかショックそうだな。

 

「まぁ、()()探偵の貴方様ほどじゃねえよ」

「褒めてんのか貶してんのかどっちかにしろ!」


 俺達はそうして軽口を交わし合った。

 シエルも、さっきよりかは元気そうでよかった。




◇◇◇


 放課後になり、俺達は長良の家へと訪れた。

 

「やぁ、二人共」


 部屋には長良と、縄で縛りつけられた真犯人と思われる男がいた。


「というか長良、あんたまだその格好でいるわけ?」


 その格好?

 見た感じ、別にいつもの長良だと思うが………


「しー、それはまだ内緒だよ」


 筋肉ダルマの大男が、口に指を当てて『しー』なんて言うな!

 まあこれはこれで、特定の人向けにはありなのかもしれんが。

 で、内緒っての何のことだ?

 見た感じ俺に隠してることっぽいが………


「それでシエルちゃん、この男で合ってるわよね?」

「えぇ、そいつよ」


 冷静に、そして力強くそう言う。

 迷いはもう無いみたいだ。


「し…える………シエルッゥゥゥ!!!」


 男は叫んだ。

 まずい!

 流石の彼女でも、あんな出来事はトラウマになってるに違いない。

 それも彼女を操った本人にそんな叫び声をあげられれば、今の彼女じゃ耐えられないかもしれない。

 俺はシエルを見た。


「シエル………」


 流石の一言だった。

 彼女は堂々と、怯むことなく、立っていた。

 自分の罪に向き合ったからこそ、トラウマを克服できたんだ。

 

「裏切りやがったな!!!クソ野郎ッ!!!」

「裏切り?私はただ、自分の行きたい方について行っただけよ!」

「はっ!俺は見限られたってか!」


 男は開き直っていた。

 

「長良さん、その男は一体何者なんですか?」


 俺はそう長良に尋ねた。


「僕も驚いたよ、こいつの名は蜂木衆水はちきしゅうすい。《革命者レンブラー》だ」

「………は?ちょっと待って、何でレンブラーがこんなところにいるんですか!?」


 《革命者レンブラー》ってのは海外に潜伏してるんじゃなかったのか!?

 何で日本にいんだよ!?


 ヤバい予感がビンビンしてきた。

 

 教頭に言われてた事が現実になってきつつある。

 日本だからって安全とは限らないのかもしれない………


 俺がそんな事を考えていた中、シエルの姿が隣にいない事に気がついた。


「ッ殺す!!!」


 見ると、シエルが蜂木に飛びつこうとしていた。

 長良はそんなシエルを抑えつけていた。


「落ち着くんだ、シエルちゃん!」

「あぁぁ!こいつは殺さなきゃ!殺さなきゃ!」

「ははは!やってみろよバカ!まあそんな事をすりゃ、()()()()が黙ってねえだろうがな!」


 ピタッ、と急にシエルの体が止まった。

 

「………今………何て言ったの???」

「何だ、分かんねえか?だったら言い換えて教えてやるよ!」


 下卑た笑みを作りながら、蜂木は言葉を続けた。


「俺を殺せば、お前の兄がお前をぶっ殺すって言ってんだよ!!!」

「そんなわけないでしょ!!!」


 明らかな動揺。

 さっきまでの冷静だった彼女とは裏腹に、明らかに焦りが見えた。

 『兄』の言葉に反応したみたいだが………


「お兄ちゃんはそんな事しない!お兄ちゃんは、家族を守る為に《革命者レンブラー》になるような優しい人なのよ!」


 切実な訴えだった。

 果たしてこれは、第三者でしかない俺が見ていていいものだったのか?


「何だ、お前知らねえのか?だったら教えてやるよ。お前の兄はな………」

「黙れ」


 そう言ったのは長良だった。

 子供なら、小便ちびるくらいには怖い低音ボイスだった。


「わた…『僕』の頭には今、被害者全員の『知恵の輪』に関する記憶が全て入っている。そして今からこれらを、君に移す。さぁ、どうなると思う?」


 『知恵の輪』の被害者の記憶。

 要するに洗脳された人の記憶だ。

 何十人ものそんな人の記憶をもつというのは、例えばアルコール中毒とか、タバコ依存症とか、そんな比じゃない。

 比べられない程の依存。

 それらをもったまま、あの男は平然としているというのだ。

 それは並の精神力じゃないだろう。

 そしてそれを、普通の精神力しか持ち合わせていないだろう男が受け入れれば、それらがもたらすのはただ一つ。


「精神の崩壊だ」


 そんな状態の人間はもう、死んだも同然の人形と同じ。


「ま、待て!やめろ!悪かった、俺が悪かったぁ!」


 長良は、命乞いなんて聞く気がなかった。

 そりゃあそれだけの記憶を一気にもった長良自身、きつくないわけがなかったからだ。

 内心、早く記憶を渡したいところだろう。


「じゃあね」

「やめッ……………!」


 瞬間、蜂木が叫び出した。

 数十秒間叫び続けていた。

 そして叫び終えると、さっきとは逆に静かになった。

 というか、動かなくなった。


「これで彼は生き人形だ」


 虚ろな目をしていて、顔と目線が合っていなかった。

 確かにこれじゃ、人形だな………


「彼に与えた記憶は『洗脳されていた者達』の記憶。依存ともいえるね。洗脳や依存の記憶によって崩壊した精神、それを突き動かすのはただ一つ」

「……………それは?」

「命令だよ」


 ゾッとした。

 それはつまり、自分の意思で動けない、生きれないって事じゃないか………

 生き人形、命令に従うだけの従順な傀儡。

 何だよ、これ。

 

 俺は改めて、能力者の恐ろしさに気がつかされた。


「今からこいつに情報を吐かせる。もしかしたら、精神が壊れ過ぎて無理かもだけど」


 俺は怖くなり、シエルを見た。


「……………」


 シエルは平常心だった。

 彼女の場合、レンブラーを殺せれば何でも良いのだろう。


「貴方の仲間の情報を吐け!」

「あぁ………レンブ………ラント……………ブラ


『バアァァンッ!!?』


 とてつもない轟音が響いた。

 目の前で、爆発したんだ。

 だけどいきなりすぎて、詳しくは分からなかった。

 何が起こったんだ………

 あれ?

 というかその爆発場所だと………


「長良さんっ!!?」


 目の前が火の海と化す中、俺は咄嗟に、火の海から脱出できていない長良の方へと走った。


「長良さんっ!どこだっ!」


 大声で叫ぶ中、突如俺の腕が掴まれた。

 

「えっ!?」

「……………よくやった!!」


 俺の腕を掴み、火の海から飛び上がって出てきた男がいた。いや……………女?


「助かった、幸一君!」


 そう言って出てきたのは、長良かと思いきや違った。

 かといって蜂木の野郎でもなかった。

 ………誰だ?


 いや、今は長良の救出が最優先だ!


「シエル!救急車だ!」

「もう呼んでるわ」


 何でそんな冷静なんだよ。

 長良が火の海から出てきてないんだぞ!?


「長良さんがいない!手伝ってくれシエル!」

「ぷっ………あはははははは!」

「は?」


 急にシエルが笑い出した。

 何がおかしいんだ?

 さっきからこいつは何してんだ?

 

「いい加減にしろよシエル!」

「あははは!最高っ、幸一!!」


 は?だから何がおかしいんだよ!


「いるでしょ、長良なら」

「はぁ?どこにだよ!いるってなら教えてくれよ!」

「必死だね幸一、あはは!面白すぎるよ!」


 何だこいつ。

 さすがにムカついてきた。


「これ以上は幸一君も本気で怒りそうだから、そろそろ教えてあげれば、シエルちゃん」


 その話し方は………え!?


「そうね、からかってごめんごめん!実はね………」


 嘘だろ………じゃあ俺は、あれからずっと騙されていたのか!?


「長良は、私だ」


 俺の腕を掴み、火の海から脱出した女が、そう言った。




革命者レンブラー第三支部にて


 一方その頃、別の地点にて、別の悪意が動いていた。


「おっと、能力が発動したか。部下が死ぬのは辛いなぁムル!」

「別に、余計なお世話だ。それと、用がないなら帰れボルモンド」


 レンブラーのNo.2とNo.3が、対談を行なっていた。

 

「相変わらず冷たいやつだぜ、そんなじゃ妹ちゃんも来てくれないぞー」

「別に、使えそうだから呼び込もうとしているだけだ。使えないゴミだったら殺すまでだ」


 そんな二人を、部下達は怯えながら見ていた。


「あ、あれがNo.2!?あの二人が対談なんて何する気なんだ!?」

「おっかねぇヨォ……おっかねぇヨォ……」


「ちょい黙れ!『ヨォジジイ』!」

「お前もだ、慎めバクル」


 先程怯えていた、ヨォジジイと呼ばれる老人と、バクルと呼ばれる青年が、そう注意されていた。

 

「で、妹は誘えそうなのか?」

「まだだ、もう少し待ってくれ」

「チッ!入れたくないだの言ってたくせして、次は入れたいから待てってか!ツンデレも程々にしとけよ兄貴!」

「俺はただ、利用価値があるなら使うだけだ」


 冷え切った、レンブラー第三支部。

 レンブラー側も密かに、策と計画を練っていた………



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