表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/41

第1話 恵まれた凡人

『才能のある者には、才能のない者を羨む資格はない』

『才能のない者でも、努力次第で、才能のある者を越えることもある』

『だけど、才能のある者が努力をすれば、誰も越えることができない』

『だからお前は、努力を怠ってはならない』


 同じ言葉を、何度も何度も聞かせられる。

 何千という時間、それを聞いていたような気がする。

 気づけば俺は、ベッドに横になっていた。


「夢………か」


 最近、こんな夢ばかり見ている気がする。

 高校生活の疲労が溜まっているのかもしれない。


 高校一年生である、早瀬川幸一はやせがわこういちは、そんな風に思っていた。


 高校生になってから、約三ヶ月が経過。

 多くの生徒が高校生活に慣れ始め、仲の良い友達や恋人ができる、そんな青春を謳歌しているであろうこの時期。

 俺は未だに馴染めず、友達作りにも失敗した、可哀想な人間だった。


「はー………」


 今日もこうして、俺は学校に着いた。

 そしていつもの通り、一人で本を読んでいた。

 そんな俺を気にかけてか、話しかけてくれる奴もいた。


「今日も元気なさそうだな、幸一」


 クラス委員長の、沢山信木さわやまのぶきだ。


「そりゃいつも一人だし、元気でいられるかよ」


 投げやりな態度で俺はそう言い放った。


「そう思うなら、なんで自分から友達作りに行かないんだよ?」

「うーん、だって気づいちゃったんだよ。お前以外は、俺を言い風に思ってないってことにさ」

「はー?そんなの喋ってみないと分かんないだろ」


 ………分かるんだなー、これが。


「……まあ、機会があれば話してみるよ」


 そう言って俺は、気怠そうに体を起こし、席から立ち上がった。


「ちょっと教頭先生に呼ばれてるから行ってくる」


 そう言い残し、俺は教頭の所へ歩き出す。

 

 ◇◇◇


 教頭のいる生徒指導室に来た。

 部屋の中は、今は教頭しかいないようだ。

 俺は礼をして、教頭の前へ行く。

 

「待っていましたよ、早瀬川君。どうぞ座って」


 教頭は正面にある椅子を指してそう言った。


「それで、用事というのは何ですか?」

「実は今日、あなたのクラスに転校生が来る予定なんですが……知っていました?」

「いや、知りませんが……」


 何のことやら、転校生が来るからって俺を呼び出す理由になるのか?


「そうですか……その転校生ですが、〝能力者〟の可能性があるそうです」

「あー、そういう話ですか」


 能力者……世界でも数万人だけが持つと言われている、人間の常識を覆すような力を持つ者達のこと。

 未確認生物や、アスリートのトップ選手なんかのほとんども、能力を持っていると言われている。


 ……そして、俺も能力者だ。


「ですから、転校生の動向には、しっかりと注意してください。もしかしたら、能力者を狙った殺し屋かもしれません」

「なるほど、注意しておきます」


 自分でも、心にもないことを言ったと思う。

 今時、そんなことをしに学校まで来る奴なんていないと、そう思っている。


 そんな馬鹿な俺を、数時間後の俺はぶん殴ってやりたいと思っていることだろう。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ