七不思議が日常の学校
とある日本の中学校では、学校内にて所謂「七不思議」と呼ばれる怪現象が起こる。
それだけなら珍しくもない事だが、この中学が変わっているのは...
ありえない程、七不思議が多発するということだ。
音楽室のピアノなど、人間の有無など関係なく、ポロンポロロンと鳴りまくる。
誰かが弾いていても、構わず鳴る。
音楽家の肖像画は、視線が定まっている時の方が珍しい。
彼らの目が動いていない日など、「何か起こるんじゃないか!?」とすら恐れられる。
家庭科室の包丁は、戸棚の木扉を抉り削って飛び出すものだから、金庫の如き重厚な包丁ケースを用意されてしまった。
それでもめげずに、鉄の扉と格闘する音が四六時中響いている。
理科室の人体模型は、泳ぐホルマリン漬けのカエル瓶を携えて、当然の如く校内中を練り歩く。
そして外に出ようとしては、校門の守衛に取り押さえられている。
女子トイレには花子さん、男子トイレには太郎くんが、全箇所のトイレ、しかも全てのブースに存在する。
利用するたびに、怖い話のショートストーリーを聴かせてくれるのだ。
12段の階段は13段がデフォルトとなってしまい、時々12段に戻っては皆を驚かせている。
校庭の桜の木の下には、しょっちゅう人骨が転がっている。
大抵、捜索願いが出されて久しい行方不明者の人骨なので、警察には有り難がられている。
二宮金次郎の銅像は、時々、理科室の人体模型と組んでストリートダンスの練習をしている。
屋上のプールでは常に怪しい黒い影が泳いでおり、水泳の授業では、生徒一人につき3回は足を引っ張られる。
しかしあまりにも高頻度の為、周囲もすぐに気づくし、むしろ全員の泳ぎがたちまち上達する。
...しかし。
逆に、夜間は何も起こらない。
たまに外から悪意を持った人魂が飛んでくるが、学校の敷地に入った瞬間に消滅する。
それは何故か。
そもそも学校で怪現象が起きる理由は、生徒たちの溢れるエネルギー…喜怒哀楽の濃すぎる、若い感情が行き場を無くして、「現象」として発現するものだ。
だがこの学校は。
そういう負のエネルギーが出た瞬間に、怪現象に変換されて発現する。
ゆえに、夜や休暇期間は何も起こらないのだ。
もう一つ、この中学校には特徴がある。
...もの凄く、空気が良いのだ。
試験前や始業式など関係なく、常に明るく軽い雰囲気が漂っている。
イジメや陰口も無く、不登校の生徒もほとんど居ない。
全生徒がサッパリとした表情で、元気に登校している。
卒業生のうち教師になった者たちは、尽く、この母校に戻って教鞭をとりたがるという。