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新たな自分の門出に風を吹かせて~風鳥未果~(5)

5

 昨日も昨日で1日とっても濃厚な時間を過ごしましたが、今日も今日で顔が引きつるくらいにスケジュールが詰まっています。

魔道師専門学校の学生はこんなに忙しいのが当たり前なんだろうか。

魔道師専門学校の90分講義の時間割は、朝7時から8時半までが1時間目、9時から10時半までが2時間目、10時45分から12時15分までが3時間目、13時半から15時までが4時間目、15時半から17時までが5時間目、17時半から19時までが6時間目、19時半から21時までが7時間目と1日に7コマ授業があって、大学生の私は基本的にこの90分授業を履修する。

ただし科目によっては中学生や高校生を対象とした授業を受けることもあるから、その時は45分や50分の授業を受けることになる。

こんなにスケジュール管理を困難に感じたのは今が初めて。

そして今私は、7時からのオリエンテーションに出席するため寮から教室に向かって歩いている。

昨日は大学部の1年生全体に向けたオリエンテーションと魔道領域の新1年生に向けてのオリエンテーションと魔道研究学科の新1年生向けのオリエンテーションがあって、昨日の午後からの健康診断やヒヤリングで各自の所属するコースと専攻が決まった今日は、その辺りのより細かなオリエンテーションが目白押し。

1時間目は自然魔法探求コースの新1年生全体に向けたオリエンテーション、2時間目は風魔法専攻の新1年生を対象としたオリエンテーション、3時間目は魔道師専門学校の大学部に入学した新1年生の中でも魔道師専門学校の所属年数が1年目の学生を対象にしたオリエンテーションがある。

昨日の夜、今日の予定が分からなくてそわそわしていたらメールが届いて、今日のスケジュールがびっしり書いてあった。

ちなみに午後からは4時間目と5時間目に科目履修に関するオリエンテーション、6時間目に校内案内、7時間目は専門学校のクラブ活動についてオリエンテーションがある。

午前中しかオリエンテーションのなかった昨日でさえ家に帰ってからもらった書類や確認しないといけないデータの管理に1時間くらい掛かっていたのに、いったい今日はどれくらい時間が掛かるんだろう。

家に帰るのも21時を回るのに。

「自然魔法探求コースのオリエンテーションはこちらです。」

魔道師専門学校201校東校地の15校舎2階で自動音声が流れている。

今日のオリエンテーションも一つの教室に学生は入り切らないらしい。

教室の扉の横に入場する学生の学籍番号が書かれた大きな紙が貼りだされている。

私が入るのは201教室で席は指定席になっていた。

前から3列目の左から7番目、途中で退室したくなっても左右に人が座っているから難しい場所です。

それに正面に教卓があるからウトウトしていればすぐに見つかる。

これはつまり、寝ないように頑張ってオリエンテーションを受けざるを得ないということだ。

せっかく入学した魔道師専門学校でこれから私の魔道師としての日々が始まるんだから頑張ろう。

 1時間目と2時間目のオリエンテーションが終わりました。

もうヘロヘロです。

1時間目が終わる8時半から2時間目が始まる9時までの時間に教室を移動して少し仮眠を取ったから睡魔はもう襲って来なかったけど、やっぱり情報量が多過ぎて、あと周りからの圧が強過ぎて疲れた。

1時間目の自然魔法探求コース新1年生のオリエンテーションはまだ学生がたくさんいたけど、2時間目の風魔法専攻のオリエンテーションは200人ぐらいが入る教室に全員が収まっていた。

そしてこれから受ける魔道師専門学校の大学部新1年生のうち、魔道師専門学校への所属も1年目で魔道適性のある学生を対象にしたオリエンテーションは、これまでみたいに一クラスに全員収まらないくらいの人数が集まっている。

でも話の内容を聴いていると、みんな魔道師としてのキャリアはそれなりにあるようで、私にはみんなの話の中身が全く分からない。

「皆さん、おはようございます。お待たせしました。それでは始めたいと思います。このオリエンテーションは、魔道師専門学校201校大学部の新1年生の学生さんのうち、魔道師専門学校への所属1年目で、なおかつ魔道適性のある学生さんを対象としたものです。お間違いありませんでしょうか。それでは、出席いただいた学生の方の確認をするため、こちらのQRコードから出席確認サイトにアクセスしてください。」

このオリエンテーションも90分みっちり内容が立て込んでいる。

他のオリエンテーションと違うのは、魔道適性に関する簡単な説明や自主的なトレーニングに使える施設、参考になる文献紹介などに内容が偏っていたこと。

みんなは何を言われているのか何となく分かったようだけど、私はさっぱり分からなかった。

だってその初歩の初歩ですら何を言っているのか分からないのだから。

 疲れた、午前中だけでお腹いっぱいです。

お昼を食べたら午後からのオリエンテーションに出席しないといけないし、お昼はしっかり食べておかないといけない。

そもそも授業開始は4月の6日なのにどうして昨日と今日でこんなにオリエンテーションが立て込んでいるかというと、明日から5日の金曜日までの3日間は、専門学校の学生さんの中でも魔道良や魔道良研究所に所属している人たちが、そっちのオリエンテーションに出席できるようにしているかららしく、私みたいに専門学校にしか出席していない人は、明日から3日間ただただお休みなんです。

明日から何しよう。

そして食堂がおかしなくらいに混んでいます。

どこでご飯にしようかな。

「ここ空いてるよ。」

空いている席を探してうろうろしていたら声を掛けられた。

私と同い年くらいの女の人だ。

「いいんですか?」

「もちろん、それに早くお昼食べないと4時間目に遅刻するよ。」

女の人がにっこり笑って頷いてくれた。

「ありがとうございます。」

「気にしないで、ここの食堂って普通の時でも混むんだよ。それが新年度が始まったばっかりって時はもっと混むの。みんな他にお昼食べれる場所をまだ知らないんだろうね。」

「お詳しいんですね。」

「この辺りには少し土地勘があるだけだよ。それより早くお昼買っておいで。」

「はい。」

「荷物は私が見てるから。」

「ありがとうございます。」

女の人の正面の椅子にリュックを掛けて、貴重品の入ったポーチを手にいざお昼を買いに行く。

ここの食堂はとにかく品揃えが良くて昨日も何にするか悩んだ。

昨日はカレーとハヤシライスで悩んでカレーにしたから、今日はハヤシライスにしよう。

それにデザートのわらび餅を付けて。

 「荷物ありがとうございました。」

「いいよ、それより食べたかった物はまだ残ってた?」

「はい、ばっちりです。」

私のプレートを見た女の人が大きく頷いた。

「美味しそうだねえ。」

「昨日はカレーを食べたので今日はハヤシライスを。」

「なるほど。」

さっきから気になっているんだけど、どうしてこの人は私にフレンドリーなんだろう。

「どうかした?早く食べないと冷めるしお昼休みも終わるよ。」

「あー!」

聴きたい気持ちはあるけど、今はとにかくお腹に何か入れないと。

「美味しい?」

「はい、あのどうして私に声を掛けてくれたんですか?」

「さっきのオリエンテーション一緒だったの気づいてなかった?」

「何時間目ですか?!」

「3時間目。」

「ついさっきじゃないですか!すみません、全然気づきませんでした。」

「いいよ、私が人の顔を覚えてるのが得意だってだけだから。あとあたしたち同い年だから敬語じゃなくていいよ。」

言われてみればそうだ。

「はい、じゃなくてうん。」

女の人が数回頷く。

「あの名前は?」

「あー言ってなかったね。」

女の人がスープの入ったボトルにスプーンを入れて私を見る。

「初めまして、あたしの名前は「絆ゆな(きずなゆな)」魔道研究学科自然魔法探求コースの風魔法専攻だよ。」

「嘘!!」

思わず立ち上がってしまった。

「私も一緒!」

「専攻?」

「うん!」

「そうだった?全然気づかなかったや。」

「嬉しい、こんなすぐ同じ専攻の同級生と会えるなんて思わなかった。」

「確かにこんな偶然偶然じゃないと起きないレベルだね。それより早く座ってお昼を続ける。」

「はーい。」

私は座り直してハヤシライスを口に入れる。

「驚いた。同じ専攻ってことはそっち、あっ、名前教えてよ。」

「私も言い忘れてたね。風鳥未果、よろしく。」

「未果か、よろしく。そうだ、私のこともゆなって呼んでいいよ。」

「いいの?」

「うん、その方がお互い気楽でしょ。」

「確かに。」

「でさ、未果は魔法適性あるんだね。てっきり違う領域の人だと思ってた。」

「あー、一応適性はあるみたいだけど、最近魔法適性が開花したばっかりで私にもよく分かってないんだ。」

「それでそんな感じのオーラになってるわけか。」

「オーラ?」

「いや、気にしなくていいよ。こっちの話。オリエンテーションで見掛けた時から魔道適性があるのかないのかよく分からない感じだったから聞けて良かったよ。個人的にすっきりした。」

「それなら良かったのかな?ところで専門学校は今年からなんだよね?」

「そうだよ。」

ゆながラップにくるんだおにぎりを頬張って答える。

「でもこの辺りに土地勘があるんでしょ?どうして?」

「うん?あー!あれだよ、私魔道良に所属してるからさ、ここの図書館とか施設とかよく使うのね。それでざっくりとした土地勘はあるの。」

「なるほど、魔道良に所属してるんだ。つまりすごい魔道師なんだね。」

ゆなが少し笑って首を横に振る。

「そんなことないよ。魔道師だっていろんなのがいるからね。魔道良に所属してるからって一概にすごい魔道師とは言えない。」

「そうなの?」

「そうなの。それより早く食べなよ。あと10分以内に食べ終われるなら、4時間目の教室一緒に行ってあげる。迷子はごめんでしょ?」

「うん。」

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