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新たな自分の門出に風を吹かせて~風鳥未果~(4)

4

 何だかすごく疲れました。

慣れないことをしてもここまで疲れることってあんまりないのに。

「失礼します。」

職員さんに案内された部屋に松葉さんとマルロート先生がいた。

「お疲れ様、待ってたよ。」

「こちらへどうぞ。」

四角い机にマルロート先生と松葉さんが横並びに座っていて、私は二人の正面に座る。

「風鳥さん、体調が悪くはありませんか?慣れないことを長時間にわたってさせてしまいましたから、どこかに不調をきたしていてもおかしくないんですが。」

「少し疲れた感じはありますが、そこまでではないので大丈夫だと思います。」

「分かりました。もし疲労感が明日になっても取れていなければ飲んでもらうお薬があるのでスマスに遠慮なく連絡してください。」

「すみません、私連絡先知らなくて。」

「糸奈、僕は会って一日も経たない女性にほいほい連絡先を渡したりしないよ。」

何か言い方が違う気がする。

「そうなの?知らなかったよ。」

「僕を何だと思ってるのさ?」

「生まれる時を間違えた伯爵。」

松葉さんが淡々とした口調で答えるから面白くてつい笑ってしまう。

「いい褒め言葉だね。覚えておくよ。今度自慢しよう。」

「それは分かったから、早く本題に入りなよ。二人が帰らないと僕は通常の研究に戻れないんだ。」

「そんなに急かさなくてもいいだろう。まだ風鳥さんの体力が回復してないと思うけど。」

「風鳥さんだって早く家に帰った方がリラックスできると思うよ。」

「なるほど、それは糸奈の言うことに一理あるね。分かった、話を進めよう。」

マルロート先生が私に書類を差し出した。

「これが今日の測定の詳細なデータだよ。オンライン上で見てもらうこともできるけど、ひとまず紙に印刷したから持っておいて。」

「分かりました。」

「今日はいろいろ話しても疲れるだけだと思うから大切なことだけ話して決めよう。まず風鳥さんの魔道適性だけど、立派な魔道師になれるだけの素質があるよ。これからトレーニングを重ねればもっと能力を上げられる。一緒に頑張ろう。」

「本当ですか?」

「うん、本当。」

マルロート先生がにっこり笑ってくれた。

嬉しい、本当に良かった。

魔道適性があるって言っても大したことのないレベルなんじゃないかと心配していたから本当に安心しました。

「嬉しそうですね。」

「はい、魔道適性があると言われてもどの程度のものか分からなくてずっと不安だったので。」

「そうなんですか。大丈夫ですよ。魔道師と言っても全く恥ずかしくないレベルですから。」

「それで風鳥さんの魔道適性なんだけど、自然魔法にかなり適性があるみたいなんだ。」

「自然魔法。」

名前から何となく鹿イメージができません。

「そう、そのうち授業で習うと思うから概要だけ説明するとね、火や水、土に草、それから風、こんな風に自然界に元々ある物に関連する魔法が自然魔法って言うんだよ。人の認識に作用したり、超能力みたいな力を発動したり、実際の減少に干渉したりする魔法もあるんだけど、風鳥さんが魔道師として使える魔法のほとんどは、自然魔法に関係する物だと思う。」

マルロート先生の説明は何となく分かった。

「分かりました。」

「ということで、風鳥さんの所属コースは自然魔法探求コースにしよう。」

「はい。」

「次に決めてしまいたいのは専攻なんだけど。」

「専攻ってことは自然魔法の中でも何かの魔法をより詳しく学ぶってことですか?」

「そうそう、たとえばさ火魔法と水魔法では特性が対局と言ってもいいくらいに違うだろう。それを同じ専攻で一緒に指導するというのはあまり効率が良くないからね。それぞれの得意な魔法に合わせて専攻に所属するんだ。風鳥さんの場合は風魔法が一番使えるみたいだから、風魔法専攻に入ってもらおうと思うけど構わないかな?」

木漏れ日さんが使ってくれたあの魔法を私も使えるなんて嬉しい。

「嬉しそうだね。」

「はい、嬉しいです。」

「雫が君に入学祝いとして使った魔法だからね。しかも雫がくれたのは魔法だけじゃなかったみたいでね。」

マルロート先生がタブレットを示しながら見せてくれた。

「今回の測定でいろんな物をイメージしてもらっただろう。あの時それぞれのイメージを元に使える魔道の種類を計測してたんだけど、適性のある自然魔法の中で唯一風魔法だけは魔法として成立していたんだ。」

「じゃあ他の自然魔法は全く使えないってことですか?」

マルロート先生が首を横に振る。

良かった。

「いやいや、威力や規模は横に置いておいて他の自然魔法もそれなりには使えそうだよ。今言いたいのは、君がまだ魔法の使い方なんて何も知らないはずなのに、なぜか風魔法はしっかり使えていたってことなんだ。これはすごいことなんだよ。生まれつき魔道適性を持っている魔道師の中でもきちんとした教育を受ける前から魔道を使えるなんて魔道師はあまりいない。これは僕の推測なんだけど、君は雫の使った風魔法を経験して、そこから風魔法の使い方を模倣したんだよ。」

「じゃあ木漏れ日さんがくれたのは。」

「雫がくれたのは魔法を体験するという経験だけじゃなくて、魔法の使い方も。」

もう一つあります。

私が魔道師として生きて行く未来への楽しみもくれました。

三つも贈り物をもらえるなんてびっくりです。

「木漏れ日さんってすごいんですね。」

「すごいよ。ねえ糸奈。」

「それはスマスの意見でも同意するところだね。君の魔道適性をきっと最初から分かっていて全部やったことだろうから。」

「また会いたいです。」

マルロート先生がなぜかくすくす笑い出した。

「うんきっと間無しに会えると思うよ。」

「はい。」

何でそんなににこにこしているのかは聞けなかった。

「じゃあ風鳥さんは自然魔法探求コースの風魔法専攻に所属ってことで手続きを進めておくよ。」

「よろしくお願いします。」

これから私の魔道師としての日々が始まります。

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