3−天罰落ちちゃったw
(嘘だろ……)
近くで男の大事な部分を両手で押さえピクリとも動かない男2人と、周りに大勢いる神官服なのか真っ白な服を着た連中も今はどうでもいい、今は水に写った自分のありえない姿を見て不幸のどん底に落とされた気分になっていた。
(あの悪魔め……)
本人は女神とか言っていたが、あの邪悪な笑顔(顔はかわいい笑顔だったのに後ろから立ち上る気配は真っ黒だった)と、俺をこんな姿にしたあいつは、俺にとって悪魔以外の何者でもなかった。
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穴を落下中……
自分の姿さえ分からないほど真っ暗な闇、平衡感覚もほとんど無くなっていたが足から真っ直ぐに下に落ちているのがかろうじて分かった。
(どこまで続いているんだこの穴? 落ち始めてから大分たってる気がするがいっこうに何も見えないし……。 それに、さっきから体中が変な感じがするんだよな。」
俺はさっきから早く着いてくれと願っていた。 出口の見えない闇と体中から感じる違和感からくる不安……、この不安から開放されるならこれから行く世界がどんなでもいいから早く着いて開放して欲しかった。
願いが通じたのか、遠くのほうから光が近づいてくるのが見えてきた。
(あれが出口!!)
早く、この不安から開放されたいというはやる気持ちを抑えきれず、気がついたときには手を光の方へ伸ばしてしまっていた……今どういう状況か忘れて……。
(やっと出られ……た?)
光をくぐり外に出たと思ったのもつかの間、周りは先ほどの闇から一転して明るくなっていたのに対し、なぜか体が下に向かって行ってる浮遊感が消えなかった。
(ってまだ落ちてる!!)
先ほどまでとは違い、今近づいてきてるのは硬そうな地面……しかも光に手を伸ばした向き(光は最初下からだったが手を伸ばしたときに上になっていた)のままだったから頭から真っ直ぐに……。
(このまま落ちたら痛いどころか死ぬ!!)
人間の生存本能が働いたのか、足に力を入れ体をひねり足から着地できるように無意識のうちに体が動き、ぎりぎりで足から地面に降りることができた。
(着地成こ……う!!)
硬いと思っていた地面が予想外に軟らかかった……。いや、軟らかいと思っていたのは着ていたズボンでそれを踏んだためだと直ぐに理解できた……んだが、理解出来たからといって次の対応が直ぐに出来るかといえばNOなわけで、ズルッっと効果音が聞こえそうなほど勢いよくズボンで滑った。
(なんの!!まだまだぁ〜!!)
再び顔に迫って来ていた地面を回避するため両手を前にだし……。
(あれ?手が見えない!?)
両手を前に出したはずなのに目に見えたのは服の袖だけが見え、手は袖の中にあるらしく袖に触れている触感があった。
(このままだとまた滑るんだろうな……。)
近づいてくる未来を急に冷静になった頭で考えていた。
(それならいっそのこと!!)
そこまで考え、あえて両腕と両手に力を入れて滑る力を利用して跳ぶことに決めた。
(跳ぶ事で滞空時間を延ばし、受身を取れればそれほど痛くないはず!!)
そして予想していた通りに服で両手が滑った。
(今だ!!)
両腕と両手に力を入れ一気に跳ぶ、ある程度地面から離れた所で背中から落ちるため空中回転をしようとしたんだが……。
「ふぐぅ!!」
??回転が途中で止まり変な軟らかい物を蹴ってしまった。
(苦しそうな声が聞こえた気もするが……そんな事よりこのままじゃ受身どころか真横から落ちる!!)
足で何かを蹴ってしまったことで横向きに飛んでしまい方向が変わってしまった。しかも、蹴ったものが軟らかかったせいで勢いが絶望的に足りない。
(何か!!何かないか!?)
このまま地面に落ちても死ぬことは無いが、体が横を向いてしまっているため地面で片方だけ削られる事態になってかなり痛そうだった。 そうならないために、なんとか首だけを跳んで行ってる方に向けてもう一度跳ぶことが出来るものはないかと探す。
(ん? あれは壁?か、あれを通り過ぎる時に蹴ることが出来れば。)
考えている間にもう体が通り過ぎ始めていた。
(間に合え!!)
右足にありったけの力を入れて蹴りぬく。
「ぎゃっ!!」
また軟らかい感触が足にあったが、硬い部分も蹴ることができ、反動で蹴った方向と反対側に体が浮き上がった。
(また変な声が聞こえたが……。まあいいか、今のでかなり減速できたうえ受身を取れるぐらい地面から離れたし、これで後は受身を取れれば。)
そう想い、受身を取るタイミングを計るためにチラッと地面の方を見て、目の前に広がった物に一瞬頭が真っ白になった。
(水!!)
なんとか目の前に広がっているものが水だと認識できたときには受身が間に合わないぐらい近くまで迫っていてそのまま…
バッシャーン!!
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…… 静寂 ……
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「痛つつ!」
体中に叩きつけられた痛みがはしり動くのもつらかったが、冷たい水が体中の体温を奪い始めていたため寒さで凍え死ぬ前に早く出ようと最後の力を振り絞り水中から脱出をした。
「あの女神わざと出口をあんな高い場所にしたな。」
水で頭もかなり冷やされ思考が冷静になってきたので落ちてきたと思われるほとんど閉じかけの穴をしばらく見ていたが、ふと、いくつもの視線が自分に向けられていることに気がつき、そのまま視線を下におろした。
(周りを囲むようにいっぱいいるな、あの真っ白な服装……この世界の神官服かなにだろうな。)
神官など神に仕える者の服装ってどの世界もほとんど変わらない。
(ん?あそこに倒れてるのは司と八代か?なんで前屈みになって倒れてるんだ?)
痙攣しているようだが、あの二人ならそう簡単に死んだりしないだろう。
(それより、無言のまま大量の視線を向けられるってのはかなりきついものがあるな。)
ため息をついて下を向いたところ、水面に見覚えがあるような無いようなものが見えた気がした。
(ん?)
今度はさっき見えたものを確かめるため、ゆっくりと水面を覗き込んで……そのまま固まった。
「母さん?」
水面には聖女によく似た少女が写っていた。
ここで、なぜ聖女によく似た少女を俺が母さんと呼んだか説明しておこうと思う、たしかに俺は前世で聖女を守っていた騎士の転生した生まれ変わりだというのは事実だ。だけど、前世とまったくの同一人物かと問われたらNOになる、生まれ変わった新しい体には騎士と聖女の魂が混ざり合い、騎士とも聖女ともちがう新しい魂が生まれ宿っていたからだ。俺は、直接二人の間に生まれたわけではないが、俺という個は二人によって生み出されたと言っていい。だから俺は、聖女を母と呼び騎士を父と呼ぶことにした。
(よく見ると全体的な顔の作りと大きな目は母さんと似ているけど他は違うようだ。)
母さんは、金色の瞳にたれ目がちの目じり、髪は真っ白な雪のような色をし肩口より少し下ぐらいの長さのに対し水面に写る少女は、血のように真紅の瞳に少しつり上がった目じり、髪は漆黒に黒檀のような艶のある色をし水面に写りきらないほど長いのか先が見えていない。
(母さんも綺麗でかわいい美少女だったけど、幼い感じが残っているけどこの少女も母さんに負けないぐらい美少女だな。)
幼さを残す美少女の顔を見、おもわず顔が緩むと水面に写っている少女の顔も緩んだように見えた。
(??? 今、俺と同じタイミングで動かなかったか?)
もの凄く嫌な予感がしたが、焦る心を抑え可能な限り冷静さを保つように落ち着けながら右手を上にあげてみたら水面の少女も同じように右手を上げてきた。次に、左手を上にあげ右手を下ろしたみたら同じように水面の少女も左手をあげ右手を下ろしてきた。
「お前は……俺か!!」
水面の少女(俺)に対し人差し指を突きつけたら水面の少女(俺)も人差し指を突きつけてきた。
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冒頭の時間に戻ります……。
(あの女神の奴、こんな下らないことに力を使ったのか。)
今頃、あの女神はこの状況を見て笑ってることだろう。
(女になっただけじゃなくてかなり身長も縮んでるみたいだな、目に見えるもの全てが大きく感じる。)
大分落ち着いてきたので改めて目線を自分自身におろし状態を確認してみる。 身長はかなり縮んで120前後ぐらい、顔は見えないがさっき水面で確認済み、髪は水面に浮かんでいるが真っ直ぐに伸ばしたら足元ぐらいまでありそうだ、胸は……無い?いや、ほんのりとわずかにあるような気がする、男の象徴に手を伸ばすが何も無く平らだった。
(完全に女になってるなこれ……。)
自分の体を確認し完全に女になっていることを認識させられ、どん底になっていた気分が底を突き破って落ちていく。
(男から女になるなんてな……この先どうしたらいいんだ……。)
先行きの不安からか、急に目の前が暗くなっていくのを感じながら、俺はその暗闇に身をまかせたくなりそのまま意識を手放した。
こうして世界を救うために呼ばれた3人の勇者(内1人は聖女)異世界での初日は全員気絶という形で過ぎていった。
・・・今回のパーティー全滅内容・・・
雲母・・・無茶な動きをした反動と、女性化によるショック死
親友2名・・・男の急所破壊による激痛死
以上3名
雲母ちゃんパーティー全滅回数・・・合計1回
雲母ちゃん達3人の気絶で第1部完になる羊です。
今回の話では雲母ちゃんの女性化、雲母ちゃんのプロフィを若干追加、全滅カウントの開始等入れてみました。
本当はこまごまとした設定があるんですが、書き始めると長そうなのでここでは書かずに、補足説明用のため女神様に出てきてもらって1回分を使って第一部のまとめをしてもらおうと思います。
第1部完までつきあっていただいてありがとうございます、第2部でもよろしくお願いします。