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第35話 まりょく

 それから程なくして試作魔導機ができた。

 オリジナルの魔導機に合わせて、杖に魔法式が付与されている。見た目は古い小さな杖だけど、これを使えば魔力干渉が遠距離からでもできるということみたい。


 それを持って演習場に向かう。

 パドレアさん達は私達と演習場に入るのではなく、少し離れたところで様子を伺ってる。多分観測用の魔導機を操作してるのだと思う。

 ……いきなり爆発したりしないよね?


「えっと……まずはどうすればいいんですか?」

「まずはどちらかが杖に魔力を流してください」


 パドレアさんの声が音声機から聞こえる。

 言われたとおりに、杖に魔力を流す。

 杖の魔法式が光って、魔力が流れたことを教えてくれる。


「次はメドリさんですね」

「はい」


 杖をメドリに手渡す。

 メドリが杖に魔力を流す。その流れは綺麗でほとんど感じ取れなかったけど、杖が光ることでそれを知らせる。


 それに……なんだか私の中の魔力にも、何かが入った気がした。入るというか……玄関の前に誰かいる感じというのかな。


「なんか……これがイニアの魔力?」

「うん……あるね」


 メドリも私と同じような感覚があるみたい。

 なら、やっぱりこれがこの魔導機の効果。


「あとは……?」

「あとは、各々で調整する感じ……と資料には書いてましたが……それは経験がないので、どうにも……」


 メドリと顔を見合わす。

 調整する感じと言われても困る。

 どこまで受け入れるかみたいな、ことなのかな……それなら全部だけど……


「えっと……多分こう……」


 急にメドリの感触が強くなる。

 昨日も触れたメドリの魔力が突然触れれる距離に現れたような。これが魔力干渉の遠隔化……? すごい……


「ど、どうやったの!?」

「ぇ……っと、なんていうか普通に?」


 わからない。

 多分メドリが私の魔力を受け入れてくれたってことなんだと思う。それはすごい嬉しい。

 けど、私もメドリを受け入れたいのに、この玄関の開け方がわからない。


「なんですか!? 何が起きてるんです!?」


 アマムさんが興奮して、大きな声を出してるのが音声機からわかる。

 何と言われても、よくわからない。メドリに触れてないのに、魔力がそこにあるというか……いや、まだ手は繋いでるけど。


「魔力干渉はできそうです……なんというか、相手の魔力がどれぐらい自分に干渉するかを決めれるみたいですね」

「メドリぃ……助けて……」


 どうにもうまくいかない。

 魔力をなんとか操作して、メドリの魔力を受け入れようとしても、魔力はその場で跳ね回るばかり。


「もう……仕方ないね」


 私がメドリに泣きつくと、メドリは少し呆れたような顔で、私の首筋に触れる。顔が近づいて少し動悸が早くなる。


「私がやってあげる……いつもみたいにして……?」

「いつもって、なっ……んぁ……っ!」


 いつもっていつのことと、聞こうとした時には、メドリの魔力が私の魔力に触れていた。杖を経由した遠隔ではなく、直接首筋から。


 メドリの魔力が私の魔力に干渉していく。

 舐めるように、焦らすように、這うように、私の魔力にメドリの魔力が重なる。それがどうにも快感で、私の身体から力が抜けていく。


 いつもってメドリに魔力を触れられてる時のことねと、弱くなった理性で気づく。その弱々しい理性が、こんなところで触れられたら、羞恥心でおかしくなるということに気付いて、必死になる。


「めどりゅ……っ」

「だーめ。ほら、もう少しだから……」


 メドリの名を呼ぼうとしても、舌がうまく回らない。

 羞恥心と快楽で全身が熱を持ってるのがわかる。

 けどもうだめかも……外なのに、パドレアさんもアマムさんもいるのに……おかしくなるっ……!


「はい、多分これでできたよ……どうかな……?」

「……ぇ?」


 私の魔力に絡み付いてたメドリの魔力が急速に離れていく。

 それと同時に私の思考も少し冷静になる。

 私今……なんかとんでもないことしそうじゃなかった……?


「イニア……? 大丈夫?」

「あ……う、うん! 大丈夫……」


 メドリの私を心配するような声に急いで答える。

 体内の魔力に感覚を向ければ、そこにはメドリの魔力があった。私の中にある。少し意識を逸らせば、メドリの中にもいけるのがわかる。


「うん……大丈夫そう……メドリは?」

「大丈夫。イニアの魔力に触れられるよ」

「ぁ……んっ……!」


 そう言って、メドリが私の魔力を撫でる。

 また快楽がびくっと全身を貫いて、つい恥ずかしい声が漏れてしまう。


「イニアの顔……すごいえっち……」

「だ、だってぇ……」


 自分でも顔から力が抜けてだらしない顔になってるのはわかる。メドリの魔力の触り方が快楽を生むから。

 理性を保ってるだけすごいと思う。もし、ここにパドレアさん達がいなかったり、もう少し長く触られてたら、今頃メドリを襲ってたかも。


「あのー……どうですか?」

「ひゃっ!……もう少しです! ちょ、ちょっと待ってください……!」


 メドリが焦ったような声を出して、私の顔を胸に埋める。

 私のだらしないとろけた顔を、見られないようにということに、戻ってきた理性で気付く。

 元々メドリの身体で隠れていたけれど、これでもう誰にも見えない。私もメドリ以外に熱に浮かされた顔なんて見て欲しくない。


「大丈夫そう……?」


 メドリが私を心配するように、頭を撫でてくれる。

 けど……メドリはもう少し、自分の魔力の触り方がえっちなことを自覚したほうがいいと思う。誰だって、あんな風に触られたら、おかしくなると思う。

 ……私の魔力が弱いわけじゃないよね?


「ごめんね……けど、イニアの魔力かわいくて……」

「なら……家帰ったら……続き、して?」


 顔を上げて、俯いて私を見つめるメドリと目が合う。

 メドリに甘えるように、懇願するように、謝るメドリに対価を要求する。


 さっき……おかしくならないのはよかったけど、正直……なんていうか、気分はえっちなままで生殺しというか……

 ここじゃだめだけど、家ならいいっていうか……


 私の要求を聞いたメドリは少しを顔を赤らめて、首を縦に振る。その顔がすごく可愛くて、誰にも見せたくないって思っちゃう。


「ありがと……! うん……もう大丈夫です!」


 メドリの胸から脱出して、パドレアさん達へ手を振る。


「はい。魔力が繋がってる感覚はありますか?」


 繋がってる感覚……というより共有してる感覚がある。

 私はメドリの魔力を使えるし、メドリは私の魔力を使える。

 もちろん自分の魔力ならメドリより優位だけど、メドリの魔力操作だと、そんなこと関係なしに私の魔力も操作できると思う。


「大丈夫……だと思います」

「どんな感じですか!?」

「アマム……今は黙っててください」

「後で聞かせてくださいね!」


 音声機からもアマムさんが興奮してるのがわかる。

 こういう実験とか好きそうだもんね……


「では……離れてみてください」


 パドレアさんの声が開始を告げる。

 ここからが本番……私がメドリから離れても大丈夫かどうか……


 恐る恐る手を離す。

 まだ……やっぱり怖い。メドリから離れるのは。


「大丈夫……? やっぱりまた今度でも……」

「う、ううん……大丈夫……メドリのこと、感じる」


 胸に手を置いて、身体の中に意識を集中させれば、そこにメドリの魔力があるのがわかる。メドリを感じれる。

 暖かい……これなら、大丈夫……かもしれない。

 怖い……怖いけど、もしうまくいけば、メドリを守れるようになる。そうならなくちゃいけないんだから。


 きゅっと手に力を込める。

 メドリの魔力が私を包んでくれる。

 それに勇気をもらって、私はメドリから一歩離れた。

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