出会い
俺はずっとあの人に憧れていた、だから沢山の戦場に赴いたし、戦争の歴史から戦闘技術まで学んだ
けど、俺はあの人に勝てなかった、いくら努力しても経験を積んでも年の差と自力の差は超えられなかった。
そして、俺はあの人を超えることが叶わないまま
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新暦25年
彼は今傍から見ると絶望的な状況に陥っている。
彼の周りにはおぞましい形をし、化け物という言葉が似合う生物が十五体近くいるのだから。
けれど、これは彼にとって、そう、西条蓮也にとっては日常である
これは、『名家の恥』とまで言われた彼が『世界のイレギュラー』と言われ、尊敬されるまでの物語。
「さて、いつもの調子で制限時間三十五秒………さぁ 始めるか」
今のセリフが誰に放った言葉か理解する間もなく周りにいたはずの化け物たち、いや、この世界では呪物と呼ばれる生物は跡形もなく消えていた。
鮮やかな戦闘から約三十分、蓮也は自宅の門を開いた、だが、それと同時に後ろから、制服姿の女子が声をかけてくる。
「蓮也〜」
その声の主、大波葛葉は蓮也の幼なじみである。
「なんだ?朝からハイテンションだな、その元気を俺にも分けて欲しいんだが?」
蓮也が少し面倒くさそうに返すと、先程の戦闘を見てきたかのように
「何言ってんの蓮也、朝から呪物を十体以上倒して来た人に分けてあげる元気なんてありません」
と言われてしまった
「なぜ分かった?」
そう蓮也がたずねると
「なぜも何も、それが蓮也の日課みたいなものじゃない。それで?蓮也の、求めてるモノは見つかった?」
この会話は今回だけじゃなく、蓮也が呪物討伐から帰ってきた時は必ずと言っていいほどしているものだったが答えはいつも同じだった
「いや、何も見つけられなかったよ」
葛葉は素っ気ないのか、それとも気を使ってくれているのか、分からない声で「そっか」といい、
「いつか、見つかるといいね」
と言い残して去っていった。
自分の部屋に戻り戦闘用の服を洗濯に出し部屋でくつろごうとした時、急に部屋の外から声が聞こえた
その声の持ち主は蓮也の父親、西条烈斗である。
烈斗の声は低くどっしりしていて落ち着いたものだった
「なんだ、親父、まだ朝飯には早いだろ?」
と、よくある日常会話を持ち出した、だが、烈斗は日常とはかけ離れた言葉を蓮也に言った
「蓮也、今から十五分後私の書斎に来なさい、仕事の話だ」
まだ蓮也の歳は17歳である、そんなまだ若い息子に向かって父親が仕事の話というのは日常では考えられない、だが蓮也は何も変わらぬ口調と様子で「わかった」とだけ言った。
そうすると部屋の前にいた父親の気配は遠のいていった。
十五分はあっという間にすぎ、蓮也は烈斗の書斎にいた。
「蓮也、今日の呪物の様子はどうだった?」
「別にいつもと変わらなかったよ」
「そうか」
烈斗はいつも蓮也に仕事の話をする時歯切れが悪い。
これはいつもの事だ。
どうも烈斗は蓮也に呪物討伐の仕事を任せることに罪悪感を覚えているのかもしれない、
しかし、蓮也にはそんな感情はなかった。
これをやれと言われたら言われたようにやる
そこに特別な何かの感情がある訳でもない。
蓮也は歯切れの悪い父親に自分が聞きたいことを話してくれるように仕事のことを聞いた。
「今度はどこの呪物を何体倒せばいいんだ?」
そうすると、烈斗は少し安堵したような表情をみせてから、真面目な顔になり、任務の説明をした。
今回の任務は蓮也にとって、何も難しいものでもなかった。
蓮也が受けた仕事は二十体の呪物討伐、並びに近くの地形調査であった。
目的地に着くと、すぐに五体近くの呪物を観測した蓮也は十秒たらずで瞬殺し
次の標的へ的を切り替えた瞬殺彼の目には
八体くらいの呪物に囲まれている美少女が映っていた。
彼女は綺麗な銀髪を揺らし周りの呪物を見て怯えているように見えた
そして、一体の呪物が銀髪の彼女に向かって右手を振り上げた瞬間、蓮也は走り出した。
蓮也は、彼女に振り下ろされる呪物の手刀を自分の腕で受け止め、腰についている愛刀『焔丸』を引き抜き、周りの呪物を目にも止まらぬ速さで一掃した。
そして、蓮也は彼女の方に振り返る、蓮也は彼女に少し見とれてしまったが、「怪我はないか?」
と、蓮也自身では普段通り言葉をかけたはず、だったが彼女にとっては面白かったらしく「ふふっ」
と可愛らしい笑顔で笑った、その顔は蓮也が生きてきた中で二番目に魅力的だった。
蓮也が彼女の笑顔に見とれていた時彼女の方も蓮也の顔をずっと見つめていた、蓮也もさすがに美少女に見つめられると照れるものがあるが、蓮也の表情には一切揺らぎがなかった
「こっから家に帰れるか?」
蓮也は人と話すのがあまり得意ではない、ましてや美少女と話すことなんてそうそうない、
だから蓮也はいち早くここから逃げ出したかった…
続く