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恋人と


「ナツー、キャー♪」


 ウォータースライダーで楽しむハナ。

 誰よりも楽しんでいるその笑顔が眩しい。社会に出て数年。純粋に何かを楽しむ余裕が無くなっていたから……


【屁理屈ですな】


 結局歳取ると素直になれないんだよね。


「ナツはやらないの?」

「楽しそうなハナが見れたから私はいいかな」

「あっちのは二人で出来るやつだから一緒にやろ、ね?」

「……そうだね、じゃあやろっかな」


 腕を組んで小走りで誘導される。

 わぁ……柔らかい……


【エッッッッ!!!】


「ねぇねぇお姉さん達、二人で来てるの?」


 小麦色に焼けた肌。鍛え上げられた上半身、ワックスで固められた自慢のオールバック。

 自信に満ち溢れた白い歯がこんにちは。


【プルゴリですな】

 

 ある程度は想定してたけど、凄い奴らが来たな。


「だったらなに?」

「俺達も二人だからさ、せっかくだし一緒にどう?」


 ハナに何かしたらその無防備なキンタ○を蹴っ飛ばしてやる。

 なんて思ってたのに……ハナは俺の腕を抱きしめ、冷めた口調で──


「残念だけど恋人と来てるから。ナツ、行こ」

「う、うん……」


 バッサリと言い切り、その場をあとにする。

 この前ナンパされた時は震えていたのに……今はなんだか逞しくて、女々しくもその腕を抱き返してしまう。


「あー緊張した。やだね、男の人って」

「あははっ。でもハナに恋人がいたら嫌だなぁ」

「その……ナツが私にとって大切な人っていうか……恋人っていうか……っていうか……」


 っていうか可愛い。


「……じゃあ今日は私達恋人だね」

「うん!! ふふっ♪」


 嬉々と腕を組み、顔を擦り寄せてくるハナ。

 どうしようもない程に愛しくて……堪らず頭を撫でると、ハナは耳を赤く染めながら鼻唄を歌っていた。

 日が照ってきたので、パラソルの陰の下かき氷を食べる。


「ナツ、あーん」

「あ、あーん……」

「美味しい?」

「うん……その……恥ずかしいかな……」

「今日は恋人なんだから。はい、あーん」 

「あーん……」


 雛鳥に餌を与える親鳥のように、ハナは何度も何度も口に運んでくれる。恥ずかしいけど、その数だけハナの想いが伝わってくる。

 もしハナが本当に恋人だったなら……どれだけ幸せだろうか。


「わ、私が今度はやるよ?」

「ダメ。私がナツにするの。ナツは……ナツは私のものなんだから」

「う、うん……」


 胸の奥が疼いている。

 こんな状況なのに幸せを感じてしまう。


 いいのだろうか。

 この人生は……誰のもの……

 

「ナツ、また来ようね」

「うん、またね」

「帰ったら恋人の続きだからね♪」


 俺の……私の……葉月夏のもの。


「……いつまで恋人でいてくれる?」


 なんでこんな事言ってるんだろう。


「いつまで……私といてくれる?」


 口が勝手に……


「……死ぬまで一緒だよ、ナツ。何があっても」


 お互いに吸寄せられ、気がつくとキスをしていた。

 もう止まれない。

 

「ハナ……好きだよ」

「私も……ナツ、大好き……」


 まだ少し濡れた髪。

 蒸せるアスファルトの照り返し。

 蝉の鳴き声、夏の匂い。


 日傘の下……恋人と、手を繋ぐ。


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