表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/53

第四十五話 理不尽な正義

 黒い炎が辺り一帯を包み込こむ。正直この範囲にいた人間は目の前がいきなり暗くなり、何も見えなくなってしまうため混乱するだろうが今は有象無象にまで気を遣うことはできない。だが、この光景が広がるのはほんの一瞬、刹那の間だけだ。


 実際黒い炎は何もなかったかのように一瞬でその姿を消した。まあ、俺が消したのだが。俺の方を見つめているレンリは今だに何が起こったのか分かっていないのか固まったままだ。


「何が起こったのか理解できないか?」


「……」


 レンリは無言で返答する。


「耳に意識を傾けてみろ。何が変わったのかよくわかる」


 レンリははっとしたように天井部分を見上げる。今静寂が空間を支配していることに気が付いたようだ。先ほどまで細かく揺れ石の欠片のようなものが落ち、細かい砂塵が舞っていたのに今はその影すらない。愕然とした様子でレンリは再びこちらへと視線を移した。


「ど、どうやったんだ! 地鳴りも俺が操っていたはずの死体の反応もなくなった。こんなのまるで……」


「神の御業見たいか?」


 レンリは図星を突かれたのか口を引き結び押し黙る。こちらを見るその視線には恨みつらみが見て取れてしまう。最初のころの余裕が微塵もなくなり、追い詰められていることがよくわかる。


「まあ、そんな偶然の奇跡が起きたわけじゃない。これも俺の力の一つ、<天秤の炎>の効力だ。これはいうなれば世界を作り直す能力。俺が不必要なもの消し去り、必要なものは復元する。だから、今回はお前の操り人形と壊れかけている塔を消し去り、必要な塔だけを復元したんだ」


 俺はわざとこともなさげに自分の力を見せつける。レンリはその言葉に愕然とした様子でわなわなと体を震わせる。レンリは怨嗟のこもった淀んだ瞳を俺に向けてくる。その暗い瞳は今まで見たものよりもずっとずっと悲壮な黒い感情を含んでいるように見えた。


「そ、そんなのあまりにも……あまりにも理不尽じゃないか! なんだよその力! そんな……そんな壊れた力を持っているなんて……俺は何のために……」


 俺に向けていた瞳は床に敷き詰められた石のブロックに移り、彼の膝はまるで力を失ったかのようにがっくりと冷たい石の上へと落下する。俺は打ちひしがれるレンリにゆっくりと近づいていく。


「圧倒的な力で問題を収束させる正当なる暴力。それが『正義』ってやつなんだよ。だから、繰り返し言うが別にお前が悪いわけじゃない。誰が悪いか敢えて言うならば大義名分という免罪符をもってお前に絶望を植え付けた俺だろう」


 俺はレンリの目の前で足を止める。レンリは何かに縋るように僅かに俺を見上げた。


「だが、それでも俺はお前に裁きを下す。それが俺の役目だからな」


 そう言って俺は手刀をレンリの首筋へと勢いよくおろす。鈍い衝撃がレンリを襲い、頭から石の地面へと倒れていった。俺はその体を丁寧に抱きかかえるとアリエスの方へと視線を移す。アリエスは無言で儚げな笑みを浮かべていた。


「やっと終わったわね」


「そうだな」


 俺は答えたと同時にふらつき、レンリを落としそうになってしまう。


「大丈夫!」


 心配そうにアリエスが駆け寄ってくる。


「ああ、大丈夫だ。少し神力を使いすぎただけだ」


「私がレンリくんを背負っていきましょうか?」


「本当に大丈夫だ。このまま地上に出るぞ」


 アリエスは仕方がないなといった瞳をこちらに向け嘆息する。


「それじゃあ、行きましょうか……」


 アリエスは俺を先導するように長い石段へと足を踏みだした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ