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第四十二話 深い闇

 「どこまでも何も最初から………あなたたちが街を訪れた時、いやあなたがあの村で亡者もどきを始末したところからすべてが僕の計画なんですから」


 レンリの告白に流石に俺は驚きを隠せないでいた。あのときからということはそもそもレンリの目的は俺たちをおびき寄せることにあったということだろう。だが、その理由がわからない。


「何故と思っているのでしょうね。普通はあなたたち救世機関の方々を敵に回すようなことはしませんから。実際あなたたちは何も悪くありませんよ。恨みも特にありませんし」


「じゃあ、何故俺たちをわざわざ呼び寄せた?」


 俺あ会話を続けながら冷静に思考する。レンリとの距離を概算し、反応させる間もなく仕留められる位置へ気づかれぬように少しずつ移動していく。だが、それは読んでいたとばかりにレンリの周りにいるローブで体をすっぽりと覆った人が片手を上げる。すると、中空からどこからともなく紫色の鎖が出現し、俺の体に巻き付いてくる。その鎖は手足の関節を固め、巧みに俺を縛り付けた。


「諦めてください。ここに来た時点であなたは負けているんです。これで体の動きも聖者の力も封じました」


 俺は沈黙をで答える。おそらくレンリの周りにいる四人の内の一人が能力を封じる力が使えるのだろう。


「ちなみに能力を封じる力はこの人の力です。彼の力は視界に入った聖者の能力の封殺です。便利なものでしょ」


 レンリは隣にいた人物の肩を叩き、聞いてもいないことをぺらぺらと話し出す。作戦が成功してよほどうれしかったのだろう。本人の言う通り、関係が薄い俺でも分かるほどに上機嫌だ。


「これでもうあなたは死を待つのみの木偶の坊。フフッ、惨めなものですね」


 レンリはそれはもう愉快そうに笑う。その笑顔は今まで見てきた彼とはまったくの別物で得も言われぬ邪悪さを孕んでいるように見える。


「もうわかっていると思いますが僕の聖者としての力は死者を操る力、伝説の<死霊術師>と同じ力です。この力の凄いところは死者を唯人形のように操るのではなくその人間の肉体に染み付いた記憶をもとに生きてる時と変わらない行動をさせることができることです。しかも、都合の悪い記憶を消したり、植え付けたりもできるおまけつき。自分の力の真価に気づいたときは思わず震えてしまいましたよ」


「だが、制約もあるんだろ?」


「何でそう思うんです?」


「俺が供養した村の亡者たちは生きている時と同じとはとても思えなかった。つまり、お前の能力では生前と同じように復活させ操ることもできるし、魔物である亡者のように本能に従うだけの人形にすることもできるのだろう?だが、どちらもつかえるなら亡者のようにする必要性がない。少しでも知能の高い駒を作り出す方が使い勝手がいいだろうからな。だから、亡者のようにお前自身がしているのではなくそうなってしまうのではないかと思っただけだ」


 レンリは俺の推測を聞くとぱちぱちと手を叩いた。


「流石ですね。その通りです。生前のように操るためには二つの条件が必要です。一つは脳に外傷がないこと。二つ目は僕自身が対象を殺すことです」


「なるほど。だから、わざわざ俺をここに呼び出したのか」


「理解してくれたようですね」


 レンリは不敵に笑う。レンリは取り巻きの一人から細く長い剣を受け取ると俺に近づいて来る。


「何か言い残すことはありますか?」


 レンリは握って剣を俺の心臓の前に構える。


「おいおい、そんなに焦ることはないだろう。もう少し生の余韻を楽しませてくれてもいいはずだ」


 断られるのを前提に俺はそう提案する。だが、レンリはにっこりと笑い突き付けた剣を下ろした。


「それもそうですね。僕もこの楽しい時間をすぐに終わらせたくないですし、それに『法』と『正義』を代表するあなたに僕の身の上を告白するのも乙なものでしょう」


 そう言ったレンリは取り巻きの一人に椅子を持ってこさせる。椅子を俺の正面に置き、レンリはそこに座る。足を組み、頬杖を突きながら俺の方をにやにやしながら見つめている。


 彼は余裕綽々といった様子でこの状況を楽しんでいるようだが俺の心は穏やかだった。彼がアリエスを殺していない時点で彼の負けは決まったようなものだ。何せ俺の力は俺のものではないのだから。

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