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第二十七話 偶然の再開

 俺は窓から覗く陽光で今日も目覚めた。両手を上げ、体を伸ばすと思わずくぐもった声が漏れる。いつも通り体を蒼い炎で覆い汚れ等を消滅させる。を消滅させる。清々しい気持ちで外套と神具を持って一階に降りていく。昨日とは違いまだアリエスはそこにはいなかった。


「おう、起きたか」


 当然のように食事の準備をしているアンガスがエプロン姿で出迎えた。やはり筋骨隆々とした男がエプロンを着て食事の用意をしている光景は滑稽に映り、何度見ても笑いそうになる。だが、彼の料理の腕前に敬意を表しその感情を飲み込む。


 アンガスが向かった厨房の方から食欲をそそる匂いが漂ってくる。それに誘われるように二階からアリエスが下りてきていた。


「おはよう」


 アリエスはまだ眠いのか呂律があまり回っておらず、目を擦りながら椅子に座る。背を椅子に預けだらりとしている。


「おはよう。何だか眠そうだが眠れなかったのか?」


「……そうよ。色々考えてたらあんまり眠れなかったのよ」


「じゃあ、今日は休んどくか?明日のパーティーまで特にやることはなからな」


「昼まではそうさせてもらうわ。そこからは……えっと……地図出して」


 俺は神具から地図を取り出しテーブルに広げる。


「私は昼からこっちに行くからシンは反対の……この辺をお願い」


 アリエスは外壁沿いを指さしてから中央通りから少し外れた住宅街のところを指さす。はっきり言って昨日以上の収穫は得られないだろうがもう探索するところもアリエスが示したところくらいしかない。だが、何もしないのも手持無沙汰だ。


「了解だ」


 俺たちの結論が出た丁度いいタイミングで料理が運ばれてくる、俺は広げた地図を神具に素早く入れスペースを開ける。俺とアリエスは極上の料理に舌鼓を打ち、その後アリエスは二階に俺はアンガスに昼は帰らないことを伝えると宿から出ていく。ゆっくりした足取りでアリエスの示した地点に向かっていく。


 まばらな人の通りに気を配りながら進んでいく。中央通りを少し外れ住宅街への道に入る。朝だからなのか窓から顔を覗かせている人の数が中央通りにいる人たちよりもあるかに多い。ほとんどの人物がつるされた紐に衣類を干している。だが、人はいるが洗濯物を干している人たちばかりだ。通りを歩いているものは俺を含めて数人程度しかいない。それも大きな荷物を持っている人ばかりで明らかに中央通りで商売を行おうとしている人たちだ。


 この状況では俺の存在はかなり浮いている。旅人らしき軽装の男が住宅街をふらふらしているが絵になることはないだろう。寧ろ不振に思われるはずだ。その証拠に先ほどから上の方から刺すような視線を感じている。どうしたものかと身を縮ませながら歩いていると視界の端に大きな塔が目に入った。


 それはグランツ商会の本拠地だった。


(ここで都合よくグランツ商会の人員が通らないものか……。まあ、俺が知っている人間で通るとすればサラかレンリくらいのものだがそんな偶然はありえないだろう)


 俺がそんな都合のいい妄想をしていると自分の方へと近づいて来る気配を感じ目を凝らす。すると、向かいから大きな荷物を持った灰色髪の少年が走ってきているのが見えた。まさかと思いながら確認するととその姿は見覚えのある人物だった。


 俺が少年い向かって手を振ると向こうも気づいたのか満面の笑みを浮かべながら手を振り返したのだった。





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