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第二十五話 ハクヨウと告白 再び

「それで勇者はん。言いたいことはそれだけですの?」


「そうですね。現状の情報は貰いましたしあとは今後相手が動いてくれないとどうしようもありませんから」


「そうやなー。その通りや」


 ハクヨウは何が言いたげな様子でたっぷりと間をおいて話し始める。そのもったいぶった姿勢に俺は若干の苛立ちを感じる。それを察したのか挑発的な笑みを浮かべたハクヨウが満を持して口を開く。


「あんさんが知りたがっとる相手の次の動きうちは知っとるよ」


 俺はいきなりの重大情報に鼓動が早まる。この話が本当ならこの事件の終幕にかなり近づけるかもしれない。だが、その話を今し始めたことに違和感を感じるが。


「分かっとるよ。何で最初からこの話をせんかったか不思議に感じとるんやろ。その話もちゃんとさせてもらうわ」


「……そうですね。その話をしてもらえないとどうしても不信感を覚えてしまうわ。『信頼』を築いたものとしてはね」


「本当にすまんなー、アリエスはん。本当は言う気はなかったんよ。例え言わなくてもあんさんらにはさして影響せんことやし」


「それはどうゆうことですか?」


「それを今から説明させてもらうわ。まず、言わなかった理由やけど言わんでも問題ないと思っとったからと確実とは言えんあくまでうちの考えやからや」


 ハクヨウは伺うように俺の方をちらりと見る。


「でも、事情が変わったわ。うちもこの話をしとかんと安心できへんわ。そこの勇者はんを見てな」


 皆の視線が俺に集まる。だが、ハクヨウの真意を理解できたものは俺を含めて誰もいなさそうだ。だが、ハクヨウが聖者ということを考慮すれば十中八九その力が関係しているのだろう。


「うちはアリエスはんを見て救世機関の人間は所謂良い人っちゅうやつやと思っとった。せやから契約を交わさんでもその場にいれば勝手に守ってくれるもんやと思っとった。けど、勇者はんはそんな人間とちゃう。気質で言えばうちらに近いはずや。そうやろ?」


「あなたがそう思うならそうなのかもしれないですね」


 俺は過去を幻視させるその発言に若干の苛立ちを覚える。だが、過去は過去。何も知らない人間からすればそう見えても仕方がない。特にこの女は特別な目を持っているため余計に警戒しているのだろう。


「まあ、ええわ。せやからうちは明確な契約を躱したいと思ったわけや」


「受けるかどうかは内容によりますよ」


「大したことやない。あんさんらが招待されとるパーティーでヴィクトルだけやなくうちらも守る対象にしてくれっちゅう話や」


 さらりとハクヨウはヴィクトルとの間の話を知っていることもアピールしてくる。


「差し出がましいようですがハクヨウ様。この際ヴィクトルとの契約の解除も交渉された方がいいのではないでしょうか?」


 その問いに答えようとしたハクヨウよりも先にアリエスが口を開く。


「それはやめた方がいいでしょう。契約を破棄すれば確実にこちらが相手の正体に気づいていることがバレます。そうなればヴィクトル氏の裏にいる人物の特定はさらに混迷を極めてしまう」


「確かにそうですね。失礼いたしました」


 ヒイラギはそう言って深々と頭を下げた。どうやらハクヨウは聡い部下を持っているらしい。


「そういうことやからうちの依頼も受けてくれるん?もちろんこれはうちの我儘や。当然その対価は支払わさせてもらいます」


「その対価とは?」


「領主ガルニエの情報でどうやろ。まあ、今は大して情報はもってへんから今から調査しますよって話やけど」


 ヴィクトルの情報はそれなりに持っていたが領主の情報はあまり持っていないところを見ると本当に領主はこの人たちに相手にされないくらいの存在なのだろう。だが、俺たちが会った領主と印象が違いすぎて違和感を覚えるがそこを注視しても仕方がない。


 俺はアリエスの肩にぽんと手を置く。彼女はその意思を感じ取り返答する。


「それで構いせんよ。私たちにとっても願ったり叶ったりです」


「契約成立やな」


 ハクヨウは椅子に深く座り直し、こちらに美しい笑顔を向けてくる。それに答えるようにアリエスも綺麗な笑顔を見せていた。


「さて、一応明後日のパーティーの打ち合わせくらいはしときましょか」


「そうですね」


 アリエスとハクヨウを中心にこの話し合いが進んでいく。一人一人が意見を出し合い有意義な時間が過ぎていく。夢中になったせいか建物を出た時にはすっかり日は暮れ外套の明かりが街を照らしていた。


 

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