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第二十一話 ハクヨウと告白

 私はハクヨウさんの後を付いていく。するとハクヨウさんは中央通り近くの店へと近づいていく。朝日を反射する白い外装は美しく、高級感を醸し出している。店に入るとカウンターがあり、左右に奥へと続く廊下が見える。


「いつものところ使わせてもらっても?」


「どうぞ、お使いください。二時間ほどでよろしいでしょうか?」


「とりあえずそれでええよ。変更があったらまた伝えます」


「ごゆっくりどうぞ」


 正装した男声は綺麗な所作で頭を下げる。ハクヨウさんたちは右の道を突き当りまで進んでいく。


「ここはうちらパシフィック商会が経営してる場所じゃありません。その方が安心やろ?」


 ハクヨウさんは笑顔でそう告げる。おそらく彼女が意図的に私に話しかけてきたということを察していると察して発言したのだと思う。やっぱりこの人は大商会を率いる人だ。


「お気遣い感謝します」


 ツバキさんが扉を開けてくれ中に入るとそこには広々とした空間が広がっていた。豪奢な家具の数々も並んでいる。高級ホテルの一室の用だ。


「どうぞ座ってください。聖女はん」


「御言葉に甘えさせて頂きます」


 私は柔らかそうな長椅子に座る。ハクヨウさんも私の向かいに腰かけている。ツバキさんはハクヨウさんの後ろで立っている。何だか自分とシンのようでどことなく親近感を抱いた。


「それで聖女はん。話ってなんですの?」


「その前に改めて自己紹介をさせてください。いつまでも聖女と呼ばれるのは少し……」


「確かにそうやなー。ごめんなー。気つかへんで」


「いえ、最初に名乗らなかった私に責任はありますから。では改めて。私は救世機関所属<全能の聖女>アリエスです。以後お見知り置きを」


 ハクヨウさんは驚いたかのように可愛らしく口に手を当てる。


「あの有名なアリエスはんやったんや。あまりにもかわいらしゅうて全然そう見えんやったわー」


 その賞賛とも侮蔑ともとれるような言葉に私は気を張り直す。


「ご冗談をおっしゃらないでください。あなたは最初から私と話をするためにあの場所にいたのでしょう?」


 ハクヨウさんは妖しく微笑む。その蠱惑的な笑みを見た瞬間ぞくりとした悪寒が走った。得体のしれないおぞましさを感じのだ。見るからに非力な少女に歴戦の戦士のような迫力を幻視したのかもしれない。


「やっぱり分かりますか?アリエスはんの言う通りうちはあんたを待っとった。理由は……そうやなー。ヴィクトル・グランツという男について伝えておきたいことがあったからやな」


 私は高鳴る鼓動を押さえつけるように右手を左胸に当てる。この街に来てからの動向が知られていること、今の発言そのどちらもが精神を揺さぶってくる。私は精一杯冷静さを保とうと大きく息を吐き、真っ直ぐにハクヨウさんを見つめる。


「それは彼に何か重大な隠し事があるということでしょうか?」


「そうとも言えるかもしれんなー」


 私はその発言の意図を量りかねたため首を傾げる。その仕草が可笑しかったのか愉快そうな笑い声をハクヨウさんは発する。


「まあ、商人は隠し事があってなんぼみたいなとこあるからなー。でもそれとはちゃう、アリエスはんたちがこの街に来た目的に関係するかもしれんちゅー隠し事があるんや。知りたいやろ?」


「ええ、ぜひ知りたいです」


「でも、ただで教えるんも親切すぎると思わん?」


 ハクヨウさんは可愛らしく手を合わせながら問いかけてくる。私も負けじと余裕のある笑みを浮かべる。


「いいえ、そうは思いません。あなたの告白は商売敵を潰すために私たちを利用しようとしていると捉えることもできます。あなたは話すだけでメリットがあるのですから素直に話してはもらえませんか?」


 この返しは意外だったのか目をぱちぱちとさせる。そして、その後楽しそうな表情を浮かべながらクスクスと笑いだす。


「確かにそうやなー。ふふっ、うちの負けや。おとなしく話すわー」


「いいのですか?ハクヨウ様」


「構わん構わん。どうせうちのお願いは結果的に叶えてもらえるはずやから」


 その意味深な発言に怪訝な表情をするが何事もなかったかのようにハクヨウさんは告白し始める。


「それでうちの知っているあの男の秘密を話すんやったな。それはなー……あの男はもう死んでるっちゅうことや」





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