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第十九話 情報整理

 俺はソファーにもたれ掛かりゆるりとツバキの帰りを待っていた。帰ってくるとしても三十分くらいはかかるだろう。今のうちに現状を整理し、今後の方策を練っておくか。このまま彼女が帰ってくるまで呆けていてもいいが最悪な可能性もあり得る。油断はできない。


 まずは領主ガルニエについて考えなくては始まらない。そもそも俺たちがこの街を訪れたのは領主がアリエスが調べるはずだった亡者発生事件と関連があるという情報を得たからだ。今改めて考えるとこの情報はガセだとは言わないが何か目的を持ってもたらされたものだと思える。


 その理由はガルニエの対応が完璧に近く、反応があからさまだったからだ。救世機関はどれほどの地位を持った貴族であろうと裁くことができる。つまり、貴族にとっては天敵だ。罪を暴かれれば権力ではどうにもできない独立性を維持している。それなのに彼は焦りを一切見せず寧ろ余裕をもっていたようだ。通常ではありえない。


 だからこそ過る可能性。それは俺たちの来訪は領主にとって当然のものであったということだ。情報も領主自身が流し俺たちを誘い込んだ。今のところそうだとしてもその目的は闇の中だ。そもそももし亡者を発生させた原因が領主なら情報を出す意味が分からない。あの情報がなければ俺たちがここに来ることもなく彼が疑われることもなかっただろうに。


 いや、このあたりでやめておこう。現状の情報ではこれ以上深淵には踏み込めない。まだ他にも考えることはあるのだから。


 次に考えるのはヴィクトル・グランツのことだ。こいつがこの事件の犯人である可能性は著しく低いが解決の糸口になるのは明白だ。アリエスが言った『体温が低い』、『能力が通じない』この二つから考えられるのは彼はもう死んでいて誰かに操られている可能性だ。アリエスの能力はものには通じない。彼女曰く私が読み取っているのは人間の内部にある魂のような物であるらしい。それにずっとずっと昔、古代文明が反映していた時代の記録では<死霊術師/ネクロマンサー>と呼ばれる聖者が存在しており、数千の死体を操り国を内部から崩壊させたというものがある。このような前例があるため俺の憶測は突拍子もないものというわけではないだろう。


 だが、これもおそらくとしか言えない。結局のところ確たる証拠は何もないのだ。それにこれも相手から提供してきた情報だ。ヴィクトルはアリエスの能力を知っているはずなので普通なら領主のように接触を拒むはずだ。だが、それを嫌悪するような様子は微塵もなかった。サラも含めて。


 情報を整理するつもりであったがあまりにも不可解なことが多すぎて逆に混乱してきた。俺はため息をつきながら天を仰ぐ。低い天井を見上げなげ、ゆっくりと瞑目する。


 現状の完全な整理は諦めよう。分からないことが多すぎてこのまま考えてもドツボに嵌りそうだ。今現状の結論として最も疑わしい人物は領主のガルニエと思うことにしよう。ヴィクトルのことはツバキの話を聞かないことには判断できない。


 俺はふーっと息を吐き、思考を止める。大海を揺蕩うように体の力を抜き唯々時間が過ぎ去るのを待つ。


 そろそろかと思い片目を開け、壁に掛けられた時計を見ると既に一時間は経っていた。何か不測の事態があったのかもしれない。だが、俺がこの部屋から出ることはできない。入ってきた扉もツバキが出ていった扉もあの生体認証の神具だからだ。


 あと、二時間ほどは待とう。それ以上帰ってこなければ仕方ない。部屋の一部を破壊して出るしかない。出来ればそんなことはしたくはない。俺は早く戻って来てほしいという願いを込めて横目で扉を見つめている。


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