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第十三話 行動開始

 窓から覗く陽光が俺の顔を照らす。その光に思わず俺は目を細める。俺は木造りの低い天井を見つめそういえば自分がアルカン王国の都市メルリアにいるのだと思い出す。ベッドから重い腰を上げ、両手を頭の上まで持ち上げて体を伸ばす。くぐもった声が漏れるが生憎この部屋にはそれを聞きとる人間はいない。


 完全に目を覚ました俺は体を青い炎で体を包み込む。聖者として得た能力の一つ、その名は<選別の蒼炎>。俺が燃やしたいものは塵も残さず燃やし、その他のものには一切影響を与えない。とても便利な能力だ。戦闘においても役立つし今のように体を清めるためにも使える。


 俺は数秒ほど炎に体を浸すとすっきりしたように顔を上げる。寝る前に外しておいた神具を腰に取り付け脱いだ外套を羽織り、くたびれた扉を開け廊下に出る。アリエスがまだ寝ているかはわからなかったが特に急ぐ必要はないだろうと思いそのまま一階へと降りていく。


「おはよう」


 一階に降りるとアリエスがテーブルに座り朝食を取っているところだった。


「……早いな」


「なんだかあまり深く眠れなくてね。いつもよりかなり早く起きてしまったわ」


 おそらくアリエスも今の現状に不安を覚えているのだろう。こんな不気味な事件は久しぶりだ。無理もない。


「そうか。だが、睡眠はある程度は取っておけよ。十全な力が発揮できなくなるかもしれないからな」


「はいはい、分かってるわ」


 アリエスは小言はもう十分と言わんばかりに柔らかそうな白いパンでこんがりと焼かれた肉と瑞々しい緑の野菜を挟んだものを口に運ぶ。彼女の食べている姿を見たからか強い空腹感に襲われた。俺はアリエスの対面に座り店の奥に向かって声をかける。


「おーい、店主。俺の分も朝食を用意してくれ」


 男は一分もしないうちに白く丸い皿にアリエスが食べているのと同じものを乗せてきた。見た目に反して丁寧に皿を置く。


「おい、にいちゃん。これから俺のことはアンガスって呼んでくれ。少なくとも数日は顔を突き合わせるんだからずっと店主じゃ味気ないだろう?」


「いや、そんなことどうでもいいんだが……」


「なら俺の言うとおりに呼べよ。そっちの嬢ちゃんもな」


 アリエスは突然自分に飛んだ要求に思わずこくりと頷いた。アンガスは満足そうに頷き、俺の方を凝視してくる。


「分かった。これからはアンガスって呼ぶことにする」


 アンガスはにんまりと笑うと店の奥に消えていく。食べ終わりそうなアリエスに追いつくために俺は皿の上の料理を口に押し込んでいく。数分ほどで完食し、向かいに視線を向けると空の皿が目に入る。


「さて、朝早いがもう出るか」


「そうね。ここにいてもやることもないしね」


 俺たちは席を立ち宿の出口へと向かっていく。


「おーい、お前たち。昼飯はいるか?」


「いや、いらない。次にここに来るのは日が落ちてからだと思う」


「そうか。了解だ。今晩もお前たちの舌を唸らせるものを用意してやるからちゃんと戻って来いよ」


「ああ、分かった」


「善処します」


 俺はアンガスの言葉に違和感を覚えながらも気にせずぎしぎしとなる扉を押す。外はまだ日が昇り切っていないためか若干薄暗い。


「とりあえず昨日話した通り中央通りに向かうの?」


「いや、俺はこっちに向かう」


 俺は右手をアリエスの方へ差し出す。彼女は俺の手に触れるとレンリと俺の会話の記憶を読み取る。


(そういうことね。分かったわ。通りの方は私一人で調査するわ)


(ああ、頼む。緊急の連絡がある場合はいつもの方法で知らせてくれ)


(了解。また夜に会いましょう)


 アリエスの手が離れるとそれが合図であったかのように俺とアリエスは別々の方向へと歩き出す。


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