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海底の蕾
耳鳴りみたいにこびりついて離れない
蝉の鳴き声。
必死に存在感を訴えるものだから
もういいよ、充分だよ、と心の中で呟く。
奴らはそんなつもり毛頭なのだろうけど。
右手に持ったビーニール袋が僕が一歩踏み出すたびに音を立てるので、
時々蝉とのハーモニーを奏でていた。
ジリジリと侵食するみたいに肌を焼かれながら辿り着いたのは、この街で一番古い駅。
古すぎて駅員もいない無人駅である。
電車は1時間に2本しか通らない。
これを当たり前だと思っていたから、
東京に出た時、あまりの違いに驚いた。
そして自分の地元がどれほど田舎か思い知らされた。
そもそも電車の本数ではなく、無人駅というところで気づくべきであった。