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Break Ground Online   作者: 九芽作夜
第四章 SHINNINGGIRL&GHOUSTREMAINS
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第百十話 掲示板





 キャンプイベント三日目

 シロはイベントが始まって二回目の朝を迎えていた。

 いつものように人数分の朝食と軽く昼食を作りながら爽やかな風を穏やかに感じていた。自然の中での調理は開放的で中々いいものであった。

 ゲーム時刻で午前7時。

 そろそろ女性陣を起こしてもいい頃であろうと、シロは並べられているテントに近づく。

 昨夜は何故かエルに調理を止められたシロとミルフィーであったのだが、他のメンバーの手際の悪さと危うさに痺れを切らしてしまい、結局昨夜はカレー(二日目)と簡単なサラダとなってしまった。

 食後は遺跡調査と【女郎蜘蛛】の騒動があって疲れたためテスト勉強は自習ということになり、シロは早々に就寝した。


「もしもし~? 朝ですよ~?」


 シロが片方のテントに声を掛けると中からモゾモゾ、と人が動く気配がした。

 シロは取り敢えず、コーヒーでも入れようとポットに水を入れる。


(コーヒーまであるって凄いよな。しかも焙煎された状態だったし)


 なんてことを考えながらカップをテーブルに並べるシロ。

 すると、テントのチャックがジジジ、と開く音がした。


「ふわぁ~、おはよう~」

「おはようございます。今コーヒー淹れますから顔でも洗ってきてください」

「そうする~」


 一番に出てきたのは意外にもミルフィーであった。

 遺跡での行動があったためか、シロとミルフィーの間には以前のような険悪な空気はない。

 今では、普通に接していた。その変化に気付いているのは周りだけであるのだが。

 ミルフィーが顔を洗いにいった後から続々とメンバーが起き始めた。シロはコーンスープを人数分用意して、自分用にコーヒーを淹れるとようやく席に座って落ち着きを見せた。


「おはよう、シロ君」

「おはようございますエルさん、目覚めはいいみたいですね」

「うん、寝心地は悪くないし、何もしなくても朝食は用意されているし、一家に一台シロ君が欲しいね」

「俺は家電かなんかですか?」

「はは、まぁ、悪いとは思ってるよ。シロ君に任せきりで……」

「いえ、別に気にすることはないでしょ。戦闘はそちらに任せていますし、リアルでも同じようなことやっているのでそう苦労はありませんよ」

「……いよいよシロ君のリアルに興味が湧き出してしまったよ」


 シロとエルはそんな会話をしている内に、全員が起床したみたいでいつの間にか席が埋まっていた。


「それじゃ、いただきます」

『いただきます』

「召し上がれ」


 キャンプイベント三日目は平和な朝で始まった。



☆☆☆☆☆☆



 朝食を摂り終わったシロたちは、今後の予定について話し合っていた。


「さて、今日はどうしようか?」


 コーヒーを片手にエルは全員に訊いた。メンバーは皆「う~ん」と腕を組んで考え込んでいた。

 シロとしては、勉強一択なのだが、それで収まらないのがミルフィーたちである。

 通常ならレベリングなのだろうが、【向日葵の輪】(イエローホープ)的にはあまりここのモンスターは経験値はおいしくないのかもしれない。

 ユキもレベリングに行きたいのかもしれないがまだ今日を除いても二日はあるから、他のことをしたいという気持ちもあるのだろう、悩ましげに頭を抱えていた。

 そんなメンバーを見て、エルは一つ提案を出した。


「じゃあ、今日はここで遊びましょうか?」

「遊び?」

「うん、いくらイベントだからってずっとモンスター狩ったり、ボス探したりするのも飽きるでしょ? だから、今日はいつもとは違うことをしようってわけ」

「……まぁ、一理ありますね」


 エルの出した提案にシロは考える。

 確かに一理あるかもしれないがそれでも勉強をする方針を変えるつもりはなかった。

 エルの提案に皆異論がないように頷く。すると、何故か皆の視線がシロへと集まった。

 前回、シロがユキに対して勉強するように言ったためか、遊ぶならシロの許可が必要と思ったのだろう。

 シロの発言を刻一刻と待つメンバーを見て、シロはどこか居心地の悪さを感じた。


「……はぁ、わかりました。昨日と同じ方式で行きましょうか」

「…小テストですか」

「逃げるんじゃないぞユキ」

「……は、い」


 シロのその言葉にユキは苦い顔をする。これでも、かなり譲歩しているつもりなのだ、文句を言われる筋合いはないとシロは腕を組んだ。

 シロの提案にユキは首を縦に振り、昨日の復習でもする気だろうか。メニューを操作しだして数学の参考書を見直しだした。その姿勢の変化はゲームをしたいがためのかと考えるとどこか納得のいかないシロ。


(いつもそのくらいのやる気でやればこんなに苦労することもなかっただろうに)


 と考えざるを得ないシロであった。


(まぁ、昨日のあれが解ければ大丈夫だろうけどな…)


 コーヒーの入ったカップに口をつけながらシロは今日の問題を考えるのであった。



__1時間後 


「……マジでか」


 ユキの解答用紙を見ながらシロは大きく狼狽えていた。

 三日目に入って二回目の小テスト、難易度も昨日と比べたら高く設定していたのだが……


「50点満点中40ってマジかよ…」


 改めてユキの答案用紙を眺めて呟く。しかし、いくら計算しなおしても結果が変わることなく赤字で付けられた点数が自慢げにそこにいた。


「シロ君…」


 背後から遠慮がちにかけられた声に反応して振り返ると予想通りユキが不安げな表情を浮かべて立っていた。


「どう、だった?」

「………」


(こんな点数取っておいて、手ごたえはなかったのかよ)


 ユキの表情を見て、シロは呆れたように嘆息をついた。


「…合格だ。あとで、間違った問題を添付して送っておくから復習しておけ」

「!? うん! 分かった!!」


 あえて点数は言わなかった。今の状態なら赤点どころかうまくいけば50位くらいは狙えるくらいである。 しかし、点数を伝えることによって今までの集中力が途切れるのをシロは危惧したのだ。

 シロが合格ということを伝えると先ほどの不安げな表情から一変して花が咲いたような笑顔になった。

ユキはそのまま合格ということを他のメンバーに伝えに行ってしまった。その背中を眺めながらシロは再びユキの点数を見下ろしたのであった。



☆☆☆☆☆☆



「ぜっっっったいに、覗かないでね!」

「覗きませんよ別に…」


 ユキがテストに合格して数分後、朝食のあと片付けやらなんやらを終わらせたシロは、何故かテントの前でミルフィーに睨まれていた。

 何やらテントで準備があるらしいが、はて、一体何の準備だろうか。首を傾げつつもシロはその辺に設置されている椅子に腰かけてみた。

 とくにやることはないのでシロは掲示板にアクセスした。




 209:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 三日目、みんなおはようー! 今なにしてる?


 210:名無しの魔職 ID:q7WEaxo2

 おはようって俺寝てないけどねwww


 211:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 マジでか! 徹夜かよ…(震)


 212:名無しの魔職 ID:q7WEaxo2

 いや、三徹(`・ω・´)


 213:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 バカだ、バカがここにいるwww


 214:名無しのヒーラー ID:PMV2frq8mNZ

 それ、デバフどうしてんの?


 215:名無しの魔職 ID:q7WEaxo2

 ステータスが少し減少して、体がだるいです。でも、それ我慢して経験値稼いでますwww


 216:名無しのヒーラー ID:PMV2frq8mNZ

 wwwwwwwwwwwww


 217:名無しの槍使い ID:Jpo\\5mb2yOA

 おはようございます。話は変わりますが、みんな遺跡とかって調べた?




「おっ、いいこと聞くやつがいるな」




 218:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 あぁ~、なんか遺跡があちこちあるみたいだな。ちなみに俺は何も知らない(`・ω・´)


 219:名無しのヒーラー ID:PMV2frq8mNZ

 いや、(`・ω・´)っじゃなくて(呆)


 220:名無しの弓使い ID:XWas9rti$0

 俺、マップの南側にいるんだけど

 そこに小さな遺跡を発見。

 しかし、中はすでに誰かが侵入したような形跡が……


 221:名無しの平ギルド員 ID:vqd8NAy6

 現在、確認できている遺跡の数は13ほど。そのどれもがギルド単位での捜索で分かった

 ほかに遺跡があるのか不明

 しかし、あとどのくらいあるのかわからないため調査の必要あり

 あぁ~、モンスターとモフリテェェェ!!

 あっ、ちなみに確認出来ている遺跡のどれにも謎の石ころが発見された


 以上、調査報告


 222:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 >>221

 すげぇ、情報ありがとう!


 でも、途中で壊れている(笑)

 にしても、こんな情報載せていいのか?


 223:名無しの平ギルド員 ID:vqd8NAy6

 問題なし

 ギルマスの許可は得ている

 より多くの情報を求むとのこと


 224:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 ちぃっす、ボッチです。


 225:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 急に悲しい奴が……


 226:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 遺跡に潜ったら変な石を発見した。

 

 2227:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 石?


 228:名無しのヒーラー ID:PMV2frq8mNZ

 いし?


 229:名無しの魔職 ID:q7WEaxo2

 ISHI?


 230:名無しの弓使い ID:XWas9rti$0

 ISHI?


 231:名無しの平ギルド員 ID:vqd8NAy6

 ISHI?


 232:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 >>230

 >>231

 

 いや、お前らなんで知らないんだよwwww


 233:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 で、その石を取ったら変なモンスターに襲われてあっという間に死に戻り……


 234:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 ソロの弊害だな。

 ちなみに他の人たちもそうなの?

 

 235:名無しの平ギルド員 ID:vqd8NAy6

 確かに、祭壇みたいなところにぽつりと、置かれていた。持ち出してみようとするやつもいたけど、モンスターを倒さないと祭壇から出られないし、倒してもどっかに石が飛んで行ってしまった。


 236:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 ボス関係なのかね? あっ、そういえば、この土地の歴史がどうのとか書いてあったな

 それも、なんか関係してるのかな?


 237:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 それなら、私の出番だ!

 

 238:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 なんか出てきたwwwww


 239:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 この土地には昔、多くの人が住んでいたのだが、人が住んでいた跡が確認されていないことから住んでいたというのはかなり昔だということが分かる。

 そして、その際に何かしら儀式が行われたという記述があるが誰か(集団? 一人?)がその儀式の邪魔をしたらしい。そして、その後人々はその誰かとともに移住したらしい。だから、こんなに自然が豊かになったのではないかと思われる。


 240:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 なにかスイッチが入ったな……

 

 241:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 ちなみに、これが自分が撮った壁画(訳済み)スクショ

 画像表示


 242:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 おぉ! すげぇ、これかなり有益な情報じゃないか!? 

 いいのかこんな情報流して?


 243:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 いいんだよ、どうせ仲良しこよしのゲーム充な奴らなんかに優越感なんぞ与えないわ!

 ふははは、ざまぁ!! これでどんどん他のプレイヤーが遺跡に探し出すぞ、その間に自分はレベルを……ぐへへへ


 244:名無しの剣士 ID:hneH0Fnie2

 ダッ(逃走)


 245:名無しの平ギルド員 ID:vqd8NAy6

 ダッ(撤退)


 246:名無しの弓使い ID:XWas9rti$0

 ダッ(後退)


 247:名無しのヒーラー ID:PMV2frq8mNZ

 ダッ(とりあえず走る)


 248:名無しの槍使い ID:Jpo\\5mb2yOA

 ダッ(頑張れ…)


 249:名無しの魔職 ID:q7WEaxo2

 ダッ(敗走)


 250:名無しのボッチプレイヤー ID:pmq1zOR3

 …あれ? 誰も、いない……




 



 シロはそこまで掲示板を読むと静かにメニューを閉じた。













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