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高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
9/63

A組vsB組 前編

「すまん柳、もう一度だけ聞かせてくれ……何を申し込みに来たって?」

「んもー! だからボクとタイマンだってばー!!」


 プリプリと怒りながらも、柳は俺の胸をポカポカと叩きながら怒鳴り散らす。だけど、それに全然怖さを感じなかった。何故なら、俺には子供が駄々をこねている光景にしか見えないからだ……。


「随分な挨拶カマしてくれてんなぁ? 柳」

「おぉ〜、村田ではないか! 新聞の記事を見たぞ! 早々にコケやがって……ボクたち “一年五本の指” 同士の喧嘩を楽しみにしてたのに、残念だ!」

「チッ! 気に入らねぇ女だよ、お前は……!」


 あ、そういやそうだった。見た目からは思えないが、彼女も村田同様に “一年五本の指” の一人。人を見た目だけで判断しちゃいけないな。

 俺は深呼吸を行い、自分を落ち着かせてから再度柳に声をかけた。


「柳……タイマンを申し込みに来たって今言ったが、今日()るのか?」

「分かってるじゃん、紅蓮二君。そうだよ! 今日の放課後、体育館裏に来てね。もし来なかったら、A組の頭は女相手に尻尾巻いて逃げたって事になるけどさ」


 この娘何気に容赦ないな……。つまり、俺の行動次第ではA組の評価も落ちるってことだろ? まぁ、俺は自分から喧嘩を売るのはあまり好きではないから、売られた喧嘩は買うけどさ……?


「選りに選って頭が女とはな。やりにくいぜ」

「むっ! 相手が女だからって理由で戦う気は無いの!?」

「いや、そうは言って無いだろ? やりにくいって言っただけだ」


 心の中で思っただけだったが声に出てたか。女と喧嘩するってのは男にとっては一番避けたい。これは極道の俺としてではなく、一人の男である俺としてだ⋯⋯!


「そうかそうか! それなら安心した! では、今日の放課後に待ってるからね?それじゃ!」


 ウキウキしながらスキップをして教室を去る柳を俺たちは普通に見送った。柳が教室から出た瞬間、周りがやたらと盛り上がり始めた。


「待ってました!!」

A組(うち)の頭とB組の頭のタイマン!」

「見逃す手はないっしょ!!」


 この盛り上がりを見るからに、この学校の皆は喧嘩が好きなのだろう。まぁ俺としては避けたいんだがこの学校が許してくれないようだ。なってしまったものは仕方ないから割り切るけどよ……。


「はぁ〜……! まさか頭になった直後に、カチコミ食らうとは思わんかった。タイミング良すぎだろ」

「柳さんは破天荒ですけど、計算高い所もあります。もしかしたら先程の会話を聞いていたのかもしれませんね」


 神奈さんが俺の元に近付きながら話してくれたんだけど……え? 柳が破天荒だけど計算高い? 何でそんなに詳しいんですか?


「神奈さん、もしかして柳の事を知ってるんですか?」

「はい。私と柳さんは同じ中学でしたので……」


 何と意外な接点!? あの柳と神奈さんが同じ中学って信じられねーけど神奈さんが嘘を吐くメリットがないし、まっすぐ俺の目だけを見つめている。こんな人が嘘をつくとは思えなかった。出会った時から変わってないっすね、貴女は……。


「もしかして、柳とも同じクラスになったことありますか?」

「はい、なったのは中学二年生の時に一度だけですね。その時からあの様な感じでしたよ?」


 うわぁ、マジか。そりゃ神奈さんが破天荒だって認めるわけだ……。まぁ、元気がいいのは悪い事ではなくいい事なのだが、度が過ぎると良くないと思う。

 それに加えて計算高い、か。それは俺も今さっきのを見れば分かるよ神奈さん。


「柳さんは男子にも負けない馬力をあの小さい身体に秘めていると思います。ですから蓮二さん、油断大敵ですよ?」

「それは分かってます。柳が弘人と同じ “一年五本の指” の一人って事は、忘れてませんから」


 柳の力は恐らくではあるが、最低でも弘人並だという認識はできている。この学校の “一年五本の指” って言うんだから、力が拮抗しているか下手すりゃ差があるかもしれん。だが、立ち会った時に何となくそういうのは分かるんだよな、俺は。喧嘩してきた経験がこんなところで役に立つとは思わんかった。

 だけどそれより――――


「ならいいんですけど……。それよりも、大丈夫ですか? 昨日今日で、喧嘩続きになりますが」

「何とかなるとは思いたいですね……」


 そう、そこが心配だ。確かに俺は昨日、弘人との喧嘩に勝った。だが、喧嘩のダメージはまだ完全に抜けきっていない。下手すりゃ半分以上は残っているだろう。

 狙っていたのか、或いは偶然なのか分からないけど、柳美紅は俺に喧嘩を売ってきたのだ。正直大したものだと感心すらしている。俺が『計算高い』という神奈さんの言葉に、賛同している理由もそこにあるからだ……。


「柳がどんな喧嘩スタイルか知ってれば対策が練れるんだが、神奈さんは “大嵐闘” に参加は?」

「私は “大嵐闘” に参加せずに見ていたんですけど……あの中で個人を特定して見るというのは難しかったので、柳さんの喧嘩スタイルは分かりません。申し訳ありません、蓮二さん」

「神奈さんは何一つ悪くないですから、謝らんで下さい。俺に罪悪感が芽生えますから」


 となると、このクラスで柳の喧嘩を知ってる筈である弘人に聞くしかないな。何せアイツは柳同様 “一年五本の指” の一人だし、間違いなく知っていると思うから……。

 俺は弘人の元に近付き、肩に手をかけた。


「ん? 何だよ蓮二」

「お前さ、柳の喧嘩スタイルとか知ってるか?」

「あ〜、ワリィ! 俺、来る敵を薙ぎ倒すのに必死で相手の喧嘩を見る余裕無かった!!」

「マジか……!」


 パンッ! と手を合わせて弘人が謝ってきたのを見て、俺は顔に手を当てて落ち込んだ。というのも、結構あてにしてんだよな~、弘人からの情報を。


「おい蓮二、そんな落ち込むなよ! 俺が悪いみたいになってんじゃねーか!」

「すまん……」


 いや、弘人にすがろうとした俺が悪いのだから落胆するのは筋違いだよな。そう思いながら立ち上がり俺はガーゼや絆創膏を剥がして、顔をビンタして甘えていた気持ちをリセットし、俺はゆっくりと背伸びをした。

 仕方ねぇ! もう腹括ってやるしかないか……。


「やってやんぞコノヤロー!」

「うおっ、いきなりどうした蓮二!?」

「俺なりの抱負だ! 言わんと気が済まない!」

「ははっ! やっぱお前面白いわ!!」


 俺と柳のタイマンはもう決まったんだ。今更ジタバタしてもしょうがない。至った結論がそれだった。

 ならもう、さっき抱負にしたけど腹を括るしかない。俺も女相手だからって理由でもし逃げたりでもしたら、橘組 “若頭” としての名が泣くからな。

 そして教室からガラッとドアが開く音が聞こえ、先生が中に入ってきた。


「はい皆席ついてー! HR始めるから!」


 俺はこの流れに身を任せ、HRを受けた――――






「来てくれたか紅蓮二君。待ってたよ」

「おう……! 来てやったぞ、柳」


 時は流れ放課後、俺は柳が指定した体育館裏に来た。柳は仁王立ちしながら笑みを浮かべ、俺を見つめている。後ろにいる大勢の生徒は恐らくB組の奴等だろう。

 ま、それは俺もなんだけどな。俺の後ろにはA組の皆が集まってくれてるし。


「何だ、随分と人数が多いな? 紅蓮二君」

「そっちもな、柳。でも今日は総力戦じゃねぇ……一対一(タイマン)だろ?」

「そうだよ。ここにいる皆はこの喧嘩の見届人って事! これで嘘は吐けないからね」


 そりゃそうだ。何せ、当事者同士のクラスメイト全員がこの場にいるわけだからなぁ。それにしても一クラス四十人ってかなり多いと思う。二日目でだからってのもあるけど、クラスメイトの名前まだ殆ど覚えれてない。

 だけど今、俺はこのクラスの頭として立っている。無様な格好見せるわけにはいかないよなぁ……!?


「それじゃあ始めようぜ柳? 俺たちの喧嘩をよ?」

「クックックッ……! 楽しませてくれよ? 紅蓮二ぃぃぃぃ!!」

「柳ぃぃぃぃ!!」


 俺たちは雄叫びと共に勢い良くダンッ! と踏み込んでから飛び出し、互いに拳を繰り出した――――

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