表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
8/63

クラスの頭になるって、こういうことなのか。

 弘人との喧嘩があった翌日、俺はいつものように朝五時に起きて赤のTシャツとジャージに着替え、組のトレーニングルームにて二十キロのダンベルをそれぞれ左右に一個ずつ持った俺は、ダンベルカールという筋トレを今行っている。

 これは俺が普段からやっている日課の一つである。


「ふっ、ふっ!」


 この時間帯は基本的に誰もいないから遠慮なく道具を使うことが出来る。普段は組の皆が使ってるから俺は朝早くでしか使えないからな。

 いつも通り、俺以外誰もいないから俺の声がトレーニングルーム中に浸透する。


「お、やっとるな蓮二!」

「親父!? お、おはようございます!」

「おう、怪我大丈夫か?」

「は、はい……」


 何でこんな朝早くに親父が? 普段はこんな事無いのに珍しい。

 あ、因みに今の俺は弘人との殴り合いの喧嘩をしたから顔に絆創膏だったり、ガーゼを貼っている。昨日の喧嘩については話をしたが、『そうか、勝ったか! ハッハッハ!』と豪快に笑い飛ばしてたんだよなこの人は。

 親父は筋トレ道具のある置き場の所にゆっくりと向かいながら、俺に話を続けた。


「今日は何か知らんけど、早うに目ぇ覚めてな? 久しぶりに朝筋しようと思ったんやが、先客がおったとはの。もしかして蓮二、この時間帯に使ってるんか?」

「は、はい。朝の筋トレは日課ですから……!」

「そーかそーか。遠慮せずにやれや? ワシも遠慮なくやるから、のっ!」

「いいっ!?」


 俺は驚きを隠せず変な声を上げてしまった。

 いやだって、普段誰も使わない筈の特殊ダンベルを軽々と持ち上げやがったんだぞ!? しかもあれは100kgもあるのに片手で!? 

 そういや俺、今更だけどこの人と喧嘩したんだよなぁ。死ななくて良かったと改めて思うわ。うん、生きてるって素晴らしい。


「ん? 蓮二、どないした?」

「いえ、何でもないです……」


 その後は会長と一緒に朝飯の時間になるまで筋トレを続けた。筋トレ終了後はシャワーして汗を流し、スーツではなく黒のVネックTシャツと制服の黒ズボンに着替えてから神奈さんの飯を食べて一緒に登校した――――






「おっ、来たか蓮二。神奈さんも、おはようございます!」

「おっはよ〜」

「うっす、萩原……おい弘人、顔大丈夫か?」

「平気だっつーの!これくらい。それよりお前も大丈夫か?」

「おはよう美月、村田くん」


 教室のドアを開けると、俺と同じく絆創膏やガーゼを顔中に貼っている弘人と萩原が挨拶を返してくれたので、俺と神奈さんはいつものように弘人と萩原に挨拶を返し席につく。

 そしてその後すぐに、同じクラスの茶髪パーマの眼鏡野郎がこっちに向かってくる。うおお、何だ何だ!?


「紅! お前あの村田に勝ったって本当か!?」

「あ? お前、何で知ってるんだ? 俺と弘人が喧嘩したこと」

「それはこれのおかげだ!」


 バンッ! と、勢いよく俺の机に叩きつけられたものは新聞だった。何故に学校に新聞?


「これはうちの新聞部が作っている “虎城(こじょう)新聞” って言うんだ。この学校内で起きた出来事や街のオススメスポットなんかも記事にしてくれてるから、生徒に人気あるんだぜ?」


 へぇ? この学校、校内新聞とかやってるんだな。

 俺はちょっと興味が湧き、それを手に取り見てみるが――ん? 何だこれ?


「『 “一年五本の指” の一人、村田弘人転入生に敗北』」

「これ、マジなの?」


 いやいやちょっと待て。 “一年五本の指” って何? 弘人、お前そんなに強かったの? 確かに強かったけども!

 しかもこの一面の写真、俺が弘人を見下してる感じになってる。こんな角度で取れるのわけがないだろ! 金網側から撮ったのか!?


「おーおー、俺の記事が載ってる載ってる!」

「む、村田!」

「弘人、お前いいのかよこれ? こんな風にされて」

「あ? 実際俺が負けを認めたんだし、嘘じゃねーからいいだろうが」


 頭をガシガシと掻きながら、弘人は正直に記事の事を認めてしまった。それによって教室の空気が変わった、そんな感じがした。


「って事は、紅がこのクラスの頭になったって事だよね? 村田」

「おう。そういう事になるな」

「え?」


 弘人とこのメガネヤローの発言に俺は思考が停止した。俺が……このクラスの頭? 何故そんなことに?


「ちょっと待てお前ら! そりゃどういう事か説明しろ!!」

「あぁ〜、そうか! 紅は転入したばっかりだから、俺たちの学校の仕組みが分かってないんだね。それじゃあこの俺、藤木拓真(ふじきたくま)が説明してやるよ」


 眼鏡を上げながら、格好つけているが……藤木、そんなに格好良くはないぞ? 寧ろドヤ顔を止めろ。決まってないから!!

 格好つけてひとまず満足したのか、藤木は黒板の所へつかつかと歩き、チョークを手に持って何かを書き始めた。


「まず、村田がどうしてこの虎城高校の “一年五本の指” なのかを説明させてもらう。それはこの学校で入学式の時に “大嵐闘” という喧嘩イベントが起きた事がきっかけだ!」


 バァン! と黒板が揺れ、教室中に音がこだまする。うおお、コイツすげぇな。普通にそんな事できる奴少ないと思うぞ? って今はそれよりもだ。


「大嵐闘? 何だよそれ……つーか、大乱闘の乱のとこ何で(あらし)なんだ?」

「フッ……それを簡単に喧嘩の嵐が巻き起こっていたからだ。だからこそ “大嵐闘” ってわけ」


 成程、喧嘩の嵐ねぇ……? その説明から何か見なくても想像つくんだけど、間違いなく血の海地獄だったんだろうな。それにしても藤木の奴、決め台詞をいう時は必ず何かしらのポージングを取らないと気が済まないのか? ドヤ顔を止めろ、そのドヤ顔を!


「で、この “大嵐闘” で何が起きたか説明しよう。まぁネーミングはかっこいいが、やっている事は喧嘩だ。但し、一年だけでな」

「! 一年だけでやったのか?」

「ああ。うちの入学式は、基本先輩たちは来ないからな。入学式が始まったと同時に喧嘩勃発して、気がつけば一部を除いた全員が喧嘩してたよ」

「嘘だろおい」


 何て学校なんだ。やっぱり普通じゃねぇぞ、ココ。俺、本当にやって行けるのか?

 この時、俺の中で改めて不安と疑問が生まれていた。


「嘘なんかじゃあないぜ? 事実だからな…… そして!  その “大嵐闘” の中で残った五人が “一年五本の指” で、その一人がこの村田って訳だ」

「何か照れるな。そんな風に紹介されるとよ」


 そう言いながら弘人は、少し頬を赤くして頭を掻く。弘人自身褒められるのは慣れてねーのかな……? ってそれよりもだ!


「それで、弘人を倒したからクラスの頭って所はどういう事だ?」

「簡単な話だ。 “一年五本の指” は奇跡的にクラスがバラけてたんだ。A組からE組、それぞれ一人ずつな」


 あ、成程そういう事か。実力者が五人残り、残った五人がそれぞれ違うクラスって事はクラスで喧嘩が一番強い証になる。だからクラスの頭が決まったってなるわけか……。


「だから “一年五本の指” の一人だった弘人を倒した俺が頭って事か」

「That's right! その通りだぜ、紅」


 何か発音いいなお前。不覚にも格好良いと思っちまったぜ。ポージングはウザイけどな。でも、話してみるとこの藤木って奴は面白いと思う。格好つける時にウザイのを除けばな。


「皆はそんなんでいいのか? 新参者の俺なんかが頭で」

「新参者だろうが、誰だろうが関係ない。強い奴が頭を張る、それがこの学校のルールだ! それにクラス全員村田の力を知ってるし、その村田に勝ったのが本当みたいだからな? お前が頭で文句はねぇよ。なぁ、皆!?」

『お~!!!』


 クラス全員の返事が返ってきたので、俺が頭になるのを認めているようだ。まぁ後は俺がやるかやらないかだけの問題なのだが、どうしようか……? 正直面倒臭いな。


「蓮二さん、蓮二さん」

「ん? 神奈さん、どうしました?」

「村田くんが負けた事は校内には知れ渡っていますから、今度はクラスの頭として蓮二さんが狙われる事になります。ですから……堂々とクラスの頭になっておく事がベストな選択かと」


 神奈さんが俺に的確なアドバイスをくれたのを聞いて、俺は成程と思い、頷いてしまう。だけど――


「何で、俺が渋ってるの分かったんすか?」

「表情で分かりますよ?」


 あれま、なんてこったい。ポーカーフェイスは俺の得意分野だったんだがな……! 神奈さんも頭になる事を進めてくれてるし、この盛り上がりムード……仕方ねぇか!


「あ〜……その、皆!! 今日から俺がこのクラスの頭ってことでいいかー!?」

『おお~!!!』


 クラス中から雄叫びが巻き起こる。

 うおお、すげえ……! なんかこういう所は極道と変わらないんだな。


「覚悟決めたみたいだな、蓮二?」

「おう。こうなりゃ勢いだ勢い。偶にはこんな風に流れに身を任せるのも悪くねぇ」


 俺は弘人と笑いながら決意を固め、このクラスの頭となった。この選択が吉と出るか凶と出るか、この時の俺は分かってなかった。でも何となくだが、楽しくなりそうな気がした。

 そんな事を思ったその時、教室のドアが誰かによって蹴り飛ばされた。


 ガッシャァ!!!


『っ!?』

「やっほ〜、A組の皆さん」


 身長は150って所か? それに青髪ツインテールの女…… うん、これはロリの部類だな。声もなんかそれっぽいし。ニコニコ笑顔を絶やさないこの女は、一体何者だ?

 にしても、ドアは普通に開けろよ。蹴り飛ばすなっての……。


「君が転入生の紅蓮二君か〜……! うんうん、新聞の情報にガセは無し! だったみたいだね」

「あ? それより、お前誰?」

「おっと、ボクとした事が……こりゃ失礼。ボクはB組の頭を張ってる、(やなぎ)美紅(みく)! ここに来た理由はたった一つしかない。A組の頭である紅蓮二君! 君にタイマンを申し込みに来た!!」

「はい?」


 訂正する。楽しくなりそうな気がするというよりは、面倒臭くなるの間違いだったわ。

 俺はこの時、柳の言葉と指をビシッと指してきた事に対してぽかんとする事しか出来なかった――――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ