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高校生極道  作者: 華琳
3章 虎城高校 夏の陣
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母の帰省と共に嵐が吹き荒れる!?

「おい、見たか? 虎城新聞」

「ああ……コンテストってこんな事するのかって感じだよな」


 今日、学校では虎城ミスター&ミスコンテストコンテストの話題で持ち切りだった。その原因は『虎城高校特別号外』が出回った事にある。


「でもよ、これ女子の部楽しみだよな」

「ああ。何せ参加者の水着姿を拝めるんだからよ!」

「男子の方も殺し文句聞けるからドキドキするよね!」

「それは確かに……」


 クラスの野郎共も、女子の連中も大いに盛り上がっていた。参加しないから気楽だろうけど、参加するこっちは心身共に破裂しそうだよ。


「まさかここまで取り上げるとは思ってなかったぜ……」

「そりゃそうだろ大将? このイベントは虎城高校の中でもかなり規模のデカいモノだからよ」


 そうじゃなきゃこんなイベント続く訳ないよな。それに教師が許すとも思えねぇ……いや、あの理事長なら許すと思う。喧嘩に寛容(かんよう)な人だしな。


「それにしても大将、成瀬先輩から聞いたけどマジで狙ってんの? 優勝」

「ああ……」

「昨日まで乗り気じゃなかったのに、何があった?」


 そりゃ何せ俺にとって素晴らしいお宝が()かってるんだ。しかも、一つだけじゃなく二つも。やる気にならないわけがないだろ!


「まぁ、色々な……」

「その色々を教えてくれって言ってんだよ、大将〜!」


 必死に揺さぶりながら懇願(こんがん)してくるが答える気はサラサラねぇよ、悪いな藤木……。


「ねぇアンタ、私の蓮二に何してんの?」

「あ? って、うわっ! 井口!?」


 いきなり俺たちの教室に現れた七海は物凄く不機嫌だった。何かいつもの様子と違う気がする……のは気のせいか?


「七海……」

「やっほ、蓮二。あの人から聞いたよ?」

「え?」


 あの人? しかも聞いた? 何の事を言ってんのか全然分からん。


「コンテスト参加理由が、神奈の写真と料理目当てだって事よ」

「いっ!?」

『?』


 皆に聞こえないように耳打ちしてきやがった! クソッ、相変わらず可愛い声だなおい! けど、殺気は篭ってるから怖さもある。何だろうこの変な感覚は……ってそれよりもだ。


「成瀬先輩から聞いたのか?」

「そうよ。口割らせるのに大変だったんだから」


 情報聞き出すために何をしたんだよ……思わずそう言おうとしたが止めた。何か聞いたらいけないような気がすると思う。


「蓮二……言っとくけど私、神奈だろうと誰であろうとも負けるつもりないから。コンテスト、絶対投票させてみせるから覚悟しといてね?」

「お、おう……」


 七海も俺と同じで、どうやらコンテストにガチ参戦するみたいだな。断固たる決意をした目をしている……ああいう時の人間はそう簡単に曲げる事をしないからな。


「井口……くっつきすぎ、だよ」

「っ!」

「あーちゃん……」


 何時から俺の隣にいたんだよ……藤木といいこの人もだけど、気配殺すの上手くねぇか? 今度教えてもらおうかな……。


「悪いけど今年は私も誰にも負ける気はない。当然、アンタにもね」

「へぇ……面白い事言うじゃない、神楽先輩?」


 互いに頭をぶつけながら衝突し合う。この二人、必ずと言ってもいい程にここで争いをおっぱじめるんだよな。


「おっ、まただぜ!」

「今日はどっちが勝つの!?」


 最初の内は皆も止めていたが、今となっては最早この教室の恒例行事として逆に煽って盛り上げている。


「コンテスト前のいい肩慣らしになるわね……!」

「それはこっちの台詞、だよ……」


 そろそろ止めるか……マジで喧嘩にまで発展しかねない。この場で止められるのは俺だけだし――――って、あれ?


「そこまでにして下さい、二人共」

「ん……」

「神奈……」


 止めに行こうとしたら、神奈さんが二人の間に割って入っていた。さっきまで教室にいなかったのに、何時の間に戻ってたんだ……?


「決着はコンテストでつけるべきです。それとも、ここで下らない喧嘩をまだ続けますか?」

『!』


 おぉ……久しぶりに感じたな、神奈さんの殺気。アレに充てられると並大抵の奴等は萎縮(いしゅく)して動けなくなるんだ。最初の頃は俺でもビビっちまった程だしな……。


「……分かったわよ」

「……うん」


 七海とあーちゃんの二人もそれが伝わったのか、先程までやる気満々だったのに完全に意気消沈していた。ま、仕方あるまい……。


「あ、蓮二さん。ちょっといいですか?」

「ん……どうしたんすか?」

「今日なんですけど……雅人さんが迎えに来るので、すぐに帰って来なさいと父から電話で言われまして」


 これまた珍しいな? 親父からそんな事を電話してくるなんて。今までこんな事、無かったのに……。


「分かりました。けど、急にどうしたんすかね?」

「実は……今日、母さんが帰って来ると教えてもらったんです」

「えっ!? あ、あの、本当に帰って来るんすか?」

「間違いありません。父さんはこんな事で嘘を言う人ではありませんから」


 間違いなく何かが起きる……!

 この時、そんな嫌な感じがした。願わくば当たって欲しくないが、こういう時って大概当たるんだよな。頼むから、何も起きないでくれよ……?






「親父、戻りました」

「おぉ、ご苦労だったな雅人」


 玄関に親父やレイ、それに組員たちの姿もある……この時点で今日話していた事は間違いないと確信した。あの時もこんな感じで全員で出迎えしたからな。

 べ、別に神奈さんの話を信じてなかった訳ではないが、余りにも急だったしよ……?


「もうすぐ帰って来るから、お前らも此処で待っとれ」

「はい!」


 親父曰く、神奈さんに極道の妻になる心得? を叩き込んでいた張本人で、中学三年の冬から約半年の間、仕事で海外に行ってたから会ってない。

 だから余計に緊張するぜ……!


「お疲れ様です!」

『!』


 見送り用のリムジンの中から出てきた一人の女性。白い着物を着て、神奈さんと同じで左目に泣きぼくろがあるこの人が……!


『お帰りなさい!!!』

「あらあら、皆様お迎えありがとうございます」


 神奈さんのお母様である、橘(あかね)さんだ。

 初めて会ったのは確か中学三年の夏頃。初見の時はすげぇ綺麗な人で思わず見蕩(みと)れちまった。何せ神奈さんという素晴らしい人を産んだとは思えない程に綺麗だったからよ?


「帰ってきたか……」

「母さん、お帰りなさい」

「あなた、神奈。長く家を空けてごめんなさいね?」


 家族仲が良いのは半年の間しかいなかったけど、俺もよく知っている。和気藹々(あいあい)としたこの光景を見せられたら誰もがそう思うだろう……。


「あらあら蓮二さん、お久しぶりですわ」

「はい……お久しぶりです、茜さん」

「頭を上げて下さいな。それと、お義母さんと呼んでもいいんですよ?」


 何か今、明らかに『おかあさん』という言葉が含みを感じたように聞こえたんだけど気のせいだよな? そうだと思いたい!


「は、はぁ……」

「まぁ今はまだいいですわ。早く入りましょうか、久々の我が家に」


 相変わらず、この人と話すのは心臓がバクバクする。神奈さんと良く似ているのは親子だからと納得出来るが、神奈さんと比べると妙に色気があるんだよな茜さんは……。






「さて、と……神奈さん」

「は、はいっ」

「蓮二さんを虜に出来ましたか?」

「っ!?」


 皆さんと別れた後、いきなり部屋に呼び出されたと思った直後にこの話題ですか。何となく想像は出来ていましたけど……。


「い、いえ。まだです」

「あらあら、半年もあってまだでしたの?」

「うっ……」


 たった一言……だけど、それがとても重かった。母さんの声は人を簡単にそう思わせる力がある。特に私には……!


「情けないと言いたい所ですが、貴女程の人が堕とせないとなると何か別に理由がありますね?」

「! ……はい」

「話してみなさい」


 それから今まであった事を包み隠さず全て話しました。その間母さんはずっと目を瞑り、黙って聞いていてくれましたが、それが逆に恐ろしく感じてしまったのは何故でしょうか?


「成程……要するにライバルである人と蓮二さんの幼馴染が現れ、三つ巴になったと」

「……」


 母さんの言葉に頷く事しか出来ません。今、何かを喋ろうものなら黙らせられるのは間違いないですから……。


「蓮二さんも罪な御方ですね……でも、燃えるでしょう? 神奈」

「えっ!? そ、そうですね」


 思わず認めてしまいましたが、彼女たちなら認めてもいいとは思ってます。勿論、愛人としてならですが……。


「そういえば、そろそろ虎城ミスター&ミスコンテストがあるのよね?」

「は、はい……って、え? ご存知だったんですか?」

「当たり前じゃないですか。だってそのコンテスト、私たちの代で作りましたから」

「……は?」


 思わずポカンとしてしまいましたが、そういえば確か母さんの母校って……!


「母さん……もしかして、虎城高校のOGですか?」

「そうですよ? そして、私が今回戻って来たのはそれも理由の一つです」

「え?」


 ま、待って下さい。展開が急すぎて良く分かりません。戻ってきた理由の一つがコンテスト? 


「ど、どういう事でしょうか?」

「今回のコンテスト……私が特別ゲストの一人として招かれる事になったんですよ、神奈」

「えっ……ええええええっ!?」


 いきなり帰ってきた母さんから放たれた衝撃の事実は、雷で打たれたかのような衝撃を受けました……!

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