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高校生極道  作者: 華琳
3章 虎城高校 夏の陣
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コンテスト概要

「参加決めちまいましたね、神奈さん」


 家に帰った今、何故かすぐに神奈さんの部屋に連れ込まれた。胡座をかいて楽にしている。正座しようと思ったけど、足痺れるから止めた。


「ええ、蓮二さん……」


 そして俺を連れ込んだ神奈さんはというと、ベッドに寝転がっていた。

 一緒に寝た事があるとはいえ、こうもドキッとクるのは服が制服だからだろうか?


「元気なさそうですけど、大丈夫っすか?」

「正直に言いますと、勢い任せで決めてしまった事は少しだけあります」


 寝返りをうって俺に苦笑いを浮かべながらそう言うものの、完全に落ち込んでいるわけではなさそうだ。


「少しだけ、なんすか?」

「はい、少しだけです。今はもう誰にも負けるつもりはありませんから」


 今は寧ろその逆で、やる気に満ちている……こんな神奈さんを見るのは久しぶりだ。


「それにしてもコンテスト、かなり面倒でしたね」

「私も概要を聞いた時は正直驚きました。まさか男女で日程が違うとは思ってなかったので……」


 そう、今回俺たちが初めて参加する虎城高校ミスター&ミスコンテストはまさかの男女でそれぞれ日程を作っているのだ。

 この事を成瀬先輩から聞いた時は正直驚いたな……。






「参加すると決めたのなら、一年二人には私からコンテストの概要を説明してやろう」

「よろしくお願いします」


 ホワイトボードに貼っていた記事のスクラップを丁寧に片付け、マジックで『コンテストについて』と書き始めた。

 あれ? この説明方法何処かで……?


「まず審査の基準だけど、これは基本生徒の投票によるから審査員は生徒自身だ。でも、両方のコンテストには毎回だが特別ゲストが呼ばれる事がある」


 ほう、そうなのか……その特別ゲストとやらには興味ないが藤木が言ってた事は間違いじゃなかったのは有難い。これなら参加しても正々堂々な決着がつくからな……!


「特別ゲストはあくまでも解説ポジションだから気にしなくていいよ……それじゃあ男子の部の説明からしていこう。男子の基準は基本的に見た目も勿論だが、それ以上に中身も問われる」


 藤木との話でそれは聞いていたが具体的な内容までは分からなかったのか話してくれなかったから、ここで詳細をちゃんと聞いとかねぇとな。


「中身と言っても喧嘩での強さを測るんじゃない。女を惚れさせるような男としての魅力を感じさせるような内容だ」


 男としての魅力……か。成程、それなら外見より中身を問われる訳だ。

 顔だけの野郎なんざいくらでもいるが、その大半は中身が驚く程に屑な野郎が多い。だが、このコンテストなら見た目に加えて中身もイイ男が多いって事になるからな。


「へぇ……そんで、その内容は何ですか?」

「簡単だよ。先ずは女の子と一対一で会話するんだ」


 ん? 今、何て言った?


「あの……成瀬先輩。女の子と会話ってどういう事すか?」

「シチュエーションの設定をし、その時でどのような対応を男性陣はするのか? それを見せてもらうんだよ」


 な、なん……だと……!? そんな事までさせられんのか、このコンテスト!


「その相手って、学年の中から選ばれるんすか?」

「生徒だけじゃなく、教員の場合もあるよ? シチュエーションは同じだがね」


 まぁそれじゃないと公平な審査が出来ないから、そこは納得出来るけどよ? 相手が神奈さんとは限らねぇのか……。


「そして最後は愛の告白、つまりは女を落とす殺し文句を披露してもらってお終いだ」

「えっ!? な、何で殺し文句なんざ人前で言わないといけないんすか……?」


 殺し文句ってのは、女を口説く為に使うものだ……それを人前に晒すのは流石にキツい! それに今後使えなくなるだろ!!


「男たるもの、どんな風に女を口説くのかを見る為だ。女は男から甘い台詞というものも聞きたいものだ。なぁ二人共?」


 神奈さんにあーちゃんも頬を赤くして頷き、成瀬先輩に賛同する。

 畜生、可愛い……けど、恥ずい。だがしかし、優勝しなければあの美しい写真が手に入らない! やるしかねぇのか……?


「見た目に女の子への対応、そして殺し文句……この三点を披露した上でトップを決めるのが男子の部だ。ま、それを決めるのは生徒たちだけどね」


 それにしても字が綺麗だなこの先輩。それに眼鏡を弄る仕草にドヤ顔、誰かに似てるような気がするんだよな……誰だっけ?


「それでは次に女子の部の説明を始めようか」


 うーん……駄目だ思い出せん。まぁそのうち思いだすだろ。

 それよりも、女子のコンテストに神奈さんやあーちゃんも参加するのなら、どんな事するか聞いとくか。


「まず見た目は男子と同じだ。今年も同じように水着披露があるから、近いうちに採寸を行うことになる」

「え!?」


 おいおいマジか……? ミスコンド定番『水着披露』がこの学校にもあるのかよ。神奈さんもそれを予想してなかったのか動揺が激しいぜ。


「み、水着を……ですか?」

「コレは恒例だし、スタイルも女の魅力において大きなポイントだからね。因みに、どんな水着がいいかは本人の希望に合わせるからそこは心配しないでくれ」


 あ、そういう配慮はしてるのか。まぁ水着も色々種類も多いし、人によって相性の合う合わないは当然あるからな……。


「それなら安心です。所で神楽先輩は去年はどんな水着を?」

「成瀬……写真、ある?」

「ありますよ。えっと去年のは……これですね」


 ファイルから写真を取り出し、神奈さんに手渡した。

 あーちゃんの水着写真は俺も気になる。普段はパーカー姿しか見てねぇから尚更だ。どれどれ?


「っ……!」


 若菜色のパレオ水着を身に纏っているあーちゃんの写真は見事に映えていた。思わず言葉を失ってしまったぜ。


「綺麗ですね……」


 神奈さんもこの写真から何かを感じ取ったのか、ボソリと呟いていた。女から見てもこのあーちゃんの格好にそう思わせる力があるって事は、男からしたらもっとだろうな……。


「蓮ちゃんはどう思う? この姿」

「えっ!? そ、その……似合ってますよ。可愛いっす」


 いきなり後ろから声かけられて思わず驚いて吃っちまった。相変わらずだよなあーちゃんは……これに関しては未だに慣れねぇ。


「……そっか、良かった」

「!」


 クソッタレ、いい笑顔だなぁおい! これ見ると許してしまいたくなっちまう。悔しいけど女の笑顔ってのは不思議な力があるんだよ。何でかは分からないけど!


「こんな感じで一人一人水着を披露する、それが見た目の披露だよ」

「成程……見た目に関しては分かりました。残りは何があるんですか?」


 あら? いつもならツッコミ入れるのにそれが無かった。どうやら神奈さん、コンテストに相当入れ込んでるみたいだな。


「残るはたった一つ……料理だ。愛する男の為に手料理を振る舞えるかどうか、これも女として大事だよ。この時の料理は特別ゲストとして招待される人間は食べられるよ」


 おぉ、ちゃんと女子要素のある勝負だ。種目とはいえ特別ゲストの奴が羨ましいぜ。何せ神奈さんの美味い飯、食えるんだからよ……。


「因みに男子の部が先に開催され、そこで優勝した人は特別ゲストとして女子の部の料理の味見に参加出来るよ」

「マジすか!?」

『!?』


 思わず叫んじまった……けど、もしそうだとしたら!


「あ、あぁ……去年は優勝したタツキが参加していたよ」


 ゴメン、これガチで優勝取るわ。神奈さんの飯も食えるんなら尚更だ。負けられねぇ理由が増えたぜ……!


「女子の部はこの二点だけを審査、もとい見せ付けるだけだから割とシンプルではあるね」

「見た目と料理……ですか。分かりました、ありがとうございます成瀬さん」

「いやいや、今日は私としても収穫モノだったよ。ここにいる三人が本気で参加するなら、コンテストの新聞をまた出すことにするよ」


 何だろう、何か嫌な予感がする。

 この時感じた事はその翌日、明らかになる事を俺はまだ知らなかったのであった――――

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