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高校生極道  作者: 華琳
3章 虎城高校 夏の陣
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虎城の夏、始まります!

「あっちぃな〜、おい。クーラー効いてんのかこれ?」

「うるせぇぞ、弘人。暑いって言うと余計に暑くなんぞ」


 七月を迎えた今、暑さの絶頂期を迎えつつあった。何せ今日の気温はテレビで言ってたけど三十度近いらしい。


「暑いね、神奈〜」

「そだね……」


 この時期は良くも悪くも影響を与える事が多い。特に女子……夏服が透けて下着とか見える時あるんだよな。

 そしてそれをチラ見している野郎共。テメェらさっきから神奈さん見すぎだ、コラ。後でシメんぞ……?


 ガラッ!


「久しぶりだな蓮二……それから弘人も」

「春川……!」


 柳から病院で入院しているとは聞いていたが、喧嘩中という事もあり見舞いに行けてなかったから心配することしか出来なかったが……良かった。大事には至らなかったみたいだな。


「おー、春川! お前何時(いつ)退院したんだよ?」

「昨日だ。今朝もクラスの皆、そして柳には特に手荒い歓迎を受けたよ」


 笑みを浮かべながら言うって事は、言葉通りじゃなく温かいモノだったんだろう。それに柳はやられた知らせを聞いた時誰よりも怒っていたからな……。


「そうか……お帰り、春川」

「! ……おう」


 突き出した拳同士が重なり、俺は思わずニヤけていた。慣れねぇ事すると思わず笑っちまうんだよな……。


「そういや二人共、今日の虎城新聞読んだか?」

「え、いや……」

「まだだが、何かあるのか?」


 そうだと言わんばかりに新聞を俺たちに渡してきたが、えーと……?


「今年も俺たちの夏がやってきた……」

「虎城ミスター&ミスコンテストォ〜!?」


 何だこりゃ? この学校、こんなイベントやってたのかよ。こういうのって漫画の中だけだと思ってたんだが実在すんだな……。


「このイベント、毎年恒例らしいぜ大将」

「藤木……」


 もうツッコまねぇぞ。ナチュラルに会話に参加してても不思議じゃないからな、コイツの場合……それにしても毎年なのか、このイベント。


「お前、何か知ってんのか?」

「丁度いい。馬鹿な村田や大将たちにも分かりやすく説明してやるよ」

「おい、誰が馬鹿だコラ!?」


 弘人の怒号を無視してズカズカと歩き出した藤木はチョークで走り書きを始めた。前に説明してくれた時と同じだな……。


「さてと……虎城ミスター&ミスコンテストはこの学校伝統的行事でな? 男子のコンテストは女子の票のみ、女子のコンテストは男子の票のみで決められるんだ」

「珍しいな……てっきり全校生徒の票だと思ったんだが?」

「最初はそうだったらしいが、十数年前の虎城の頭がコンテストの概念を変えちまったことが原因だぜ、春川」


 ほぅ? 頭になると行事にまで首突っ込めるのか……。でも、どのみち票なんざいくらでも操れるからこういうイベントは正直どうでもいい。


「そうだったのか……すまん、続けてくれ」

「あいよ。で、このコンテストは見た目だけでなく中身がメインで評価される事も注目してほしい」

「何?」


 普通、コンテストって見た目でこの人に票入れます〜じゃねぇの? 何で中身なんか……?


「中身って、まさか告白シーンとか料理とかやらされんのかぁ?」

「そのまさかだよ村田。何でも昔の先輩たち曰く、見た目なんかで判断した所でそれはその人の本当の姿を見てねぇって事で反対意見が続出した。だから中身も審査基準に加わったんだよ」


 成程、そういう事か……それなら納得がいく。この手のイベントは正々堂々としねぇからいけ好かないが、こういう点を重視してるなら悪くないと思うが……。


「でもよ藤木、これって組織票とか有り得るんじゃないのか? 特定のグループ組んでとか……」

「あー、そんな不正をやろうもんなら退学に追い込まれるから問題ねぇよ。先輩曰く、虎城に汚ねぇ事をする奴はいらねぇらしいからな」


 あれま……結構厳しいのな。この学校は喧嘩に寛容だと新井先生から聞いていたけど、こんな不正一つで退学レベルとはな。

 それにしても汚い事をする奴はいらない……か。嫌いじゃねぇな、その考えは。


「で? そのコンテストの参加メンバーは決まってんのか? それとも今から決めんの?」

「とっくに決まってるよ大将。新聞のココ、見てみ?」


 指差した先にはコンテスト参加メンバーと書かれた欄があった。

 えっと……男子の部の三年には猪狩先輩と香川先輩の名前……って、あの人も出るのかよ!? イメージ湧かねぇな……。

 二年からは久坂先輩と安藤先輩の名前が。久坂先輩みたいなイケメンなら確実に上位層入るだろう。それにしても安藤先輩は予想外だな……。


「えっと、一年は――っておい、蓮二! 俺らの名前入ってんぞ!!」

「はぁっ!?」


 いやいや、ちょっと待て。ちょっと待てよ弘人さんや? そんな馬鹿なこたぁあるまいて……って、ホントだ。確かに俺の名前に弘人、そして櫻井の名も……。


「男子の部は各学年三人、そして女子の部は各学年四人選出されるみたいだな」

「あ、女子の部の一年には神奈さんと萩原の名前もあるぜ! それに井口に佐藤も!」


 弘人、お前何で嬉しそうなんだよ? まぁ神奈さんや井口ならコンテスト系のイベントは引っ張りだこだろう。それに萩原や佐藤も一年の中じゃかなりの美人の部類だからな……コンテスト入りするのも無理はねぇか。


「うっそ、マジで村田!?」

「本当? 村田くん」

「ほらこれ!!」


 あ、神奈さんたち混ざって来た。それにしてもコンテスト、出場拒否とか出来ねぇのか? こんなイベント興味ねぇんだけど……。


「蓮ちゃん」

「え……うおっ!? あ、あーちゃん!」

『!』


 い、何時の間に俺の隣に!? 藤木並の気配殺し……全く気付かなかった。この場にいる皆の注目を一気に浴びたからか俺の後ろに隠れた。

 うわ、何だろう……凄く護りてぇと思わされる。


「コンテスト、出ないの?」

「いや、その、正直面倒臭いというか……」


 表情に出ていたか? あっさりと見抜かれちまった。そういやあーちゃんの名前、三年の女子の部の所にあったな……。


「なぁ、あーちゃん。もしかしてコンテストに出ると何かあるの?」

「うん……コンテストで優勝したら、理事長から優勝した者同士での旅行券がプレゼントされる」

『旅行券!?』


 おいおい理事長、それいいのかよ……って、喧嘩に寛容な人だから、こんなぶっ飛んだプレゼントを企画してもおかしくないか。


「旅行って何処に?」

「それは分からない……でも、旅行は確定。去年の優勝者は連覇した天音と、初出場の久坂だったけど、大阪行ったって言ってた」


 旅行とはいえ、海外じゃなく国内限定なのな。流石にそこまでの予算はねぇのか……ってそれより、あの人連覇してたのかよ。こんなイベント参加するような人には見えなかったけど、なんか意外だ。


「そうすか……」

「もっと詳しい事聞きたいなら、新聞部に行けばいい……成瀬なら知ってるから」


 あーちゃんの言葉には一理あった。何せ成瀬先輩はこのイベントの号外を作っている新聞部の部長だから、当然コンテストの情報(ネタ)を知っている筈。それに、聞きたい事もあるし丁度いいな……!


「あーちゃん、部室何処か知ってる?」

「うん……案内、しようか?」

「頼んます」


 教室を出ようとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。振り返るとそこには何故か頬を膨らませていた神奈さんの姿が……!?


「私も行きます。成瀬さんにはお話がありますので」


 あの、神奈さん? 教室が凍えるかのように寒いんですけど! それ程に感じるこの殺気は半端じゃないぞ……だってクラスの皆、ジャージ着ようとしてるんだもの!


「橘も……?」

「はい。何か問題でも?」

「…………ない」


 大分間が飽きましたね、あーちゃん。でも今の神奈さんの前では下手に逆らうよりはマシだと思う。


「じゃ、行こうか……」

「うっす」

「はい」


 殺気を笑顔で振りまく神奈さん……これ、今まで怒った中で一番怖いぞ。何かあったら絶対に俺が止めなきゃいけねぇ……!

 覚悟をキメ、二人と共に新聞部に向かうのであった……。

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