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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
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神奈&七海vs有紗 前編

 私と七海さんは同時に駆け出し距離を詰めながら、七海さんは近くにある椅子を手に取って、有紗に向かって投擲(とうてき)を仕掛けました!


「チッ! 小賢しい真似を!!」


 だがしかし、これを両手で掴み投げ捨てました。今の動きに迷いが無いという事は、恐らく相当戦い慣れている筈です。


「はぁっ!」


 しかし、すかさず七海さんは真正面から右ハイキックを繰り出します。流石に避ける事が出来ず、これが彼女の顳顬(こめかみ)に命中し、身体がぐらつきました。


「ぐっ!?」

「らぁぁっ!」


 それを見逃さず、七海さんは怒涛のラッシュ攻撃を仕掛け、優勢な状況を作り出しました。私も追い打ちを仕掛けるべく、彼女の後ろにある机の上に飛び移った直後、更に跳躍する。

 七海さんのラッシュに意識が行っている今ならやれる! と、私は自信を持って右足を振り上げ(かかと)落としの態勢を取り、勢い良く振り下ろしました!

 だが、しかし――――


 ガシィッ!!


「なっ!?」

「フン……そう来るだろうと思ってた」


 う、嘘でしょう!? 背後から攻撃したのにそれに反応して、しかも左手だけで私を掴み上げるなんて! それじゃあ、七海さんのラッシュをどうやって……!


「フン……どうした、その程度か?」

「このっ! ナメやがって!!」

「……!」


 ぶら下がり状態になった今、驚きを隠せずに声が出ませんでした。自分で思うのもおかしいですが、無理もないです。何故なら、七海さんのラッシュを全て、残っている右手だけで捌いているのですから……!!


「一人が私に意識を向けさせ、視界から外れたもう一人が一発で意識を奪う攻撃を仕掛ける。シンプルながら悪くない方法……だが、甘いんだよ小娘共!」

「いったっ!?」

「あぐっ!?」


 私がそのまま七海さんに向かって叩きつけられた事で、二人まとめて目の前に倒れてしまう最悪の事態に(おちい)ってしまいました。不味い、このままだと……!


「オラオラオラァ!!」

「ぐあっ!」

「がっ!」


 嫌な予感は見事的中してしまい、私たちはストンピングの連打を浴びせられました。ガードしようにも、七海さんを巻き込んでしまっているので腕が出せません! このままだと、二人(そろ)ってやられる……!!


「いい……加減に、しろぉ!!」

「え、ちょ――きゃあっ!?」

「うおっ!?」


 七海さんが私を持ち上げながら強引に立ち上がった事で彼女にも動揺がはしり、私をそのまま投げ捨て、今度は私が彼女を下敷きにする光景が出来上がってしまいます。


「がっ!」

「神奈ぁ……しっかり、その女を抑えときなさいよ?」


 何故か声音が高くなっているので、反応して見上げると、ほんの一瞬だけ七海さんの目が輝きを増したような……っ!?


「七海さん、まさか――」

「やられたらやり返す! くたばれこんにゃろー!!」


 七海さんの足が目の前に迫ってくるのを、後ろに転がりながら躱して離脱するものの、彼女も私という重しが外れた事によって同じようにして攻撃を回避しました。


「ちょっと神奈! 何やってんのよ!?」


 七海さんがズカズカとこちらに歩み寄り、胸ぐらを掴んできた為、私もやり返します。逆ギレもいい所なので、流石の私も怒りを抑える事が出来ませんでした。


「七海さんっ! 味方を巻き添えにしてどうするんですか!?」

「そこは譲歩して巻き込まれなさいよ! 折角、あの女にダメージ与えるチャンスだったのに!!」

「理不尽過ぎません!?」


 私も一緒にダメージを喰らう事大前提で考えていたんですか、貴女は! 全く……末恐ろしい女です。二人で叩くなんて言葉を少しでも信じた私が馬鹿でした……。


「お前ら、仲良いな……」

「はぁっ!?」

「何処がですか!?」

「そういう所だよ……息ピッタリじゃないか」


 敵である彼女に指摘され、私たちはグウの音も出ませんでした。確かに『喧嘩する程仲が良い』という言葉はありますけど、私はそう思いません。


「しかしまぁ、この私もナメられたものだな……? 喧嘩の最中に、堂々とこんな茶番をやられるとは」

「っ! 七海さん……」

「言わなくても分かってる」


 彼女から(あふ)れ出る殺気が、私たちにも伝わってきます。ここまで純粋な、しかも濃厚な殺意を向けられたのは……つい最近にもありました。

 その元凶は今、私の隣にいますけど。


「ん? 何見てんのよ、アンタ」

「! いえ、別に……」


 私とした事が、思わずじっと見つめていましたか……。その張本人が、キョトンとしている姿に、思わずクスリと笑みを浮かべてしまう。こんな時だというのに……面白くなってきました。


「決めた……半殺しは止めにしよう。お前ら二人共、九分殺し決定だ!」

「神奈、来るわよ!」

「!」


 必死の形相で私たちに襲いかかる有紗に、私たちも呼応するかのように同時にハイキックを浴びせにかかりましたが、これをあっさりと両腕で防がれてしまいます。


「せいっ!!」

「おおっ!!」


 その直後に、右の正拳突きが七海さんに迫るものの、これに合わせるかのように七海さんも左拳を突き出します!

 超近距離のカウンターを狙って放たれた左拳と、意識を刈り取ろうとした右正拳突きは互いに頬を掠め、即座にバックステップで距離を取ろうとした瞬間を見逃さず、私は駆け出しました!!


「シッ!」

「ぐほっ!?」


 お腹に減り込ませるつもりで右掌底を打ち込み、手応えも感じました。でも……!


「悪くない一撃だが、私からすればまだ甘いな。いいか? 掌底とは……こうやるのだ!」

「あぐぁっ!?」


 お返しと言わんばかりに右掌底をやり返されてしまい、私はその場に(うずくま)ってしまう。まるで鈍器で殴られたかのような威力……!


「うぐっ……!」

「分かったか? 力は正しく使わないと意味が無いんだ。覚えておけ、橘神奈」


 ゆっくりと視線を上に向けると、そこには仁王立ちして私の目の前にいる有紗の姿がありました。威風堂々としたその姿は、まるで父さんが怒った時と同じ――――っ!


「何、調子に乗ってベラベラ喋ってんのよ……? 私を忘れんじゃないわよ!」

「ごはぁっ!?」


 七海さんのハイキックが首に命中し、そのまま勢い良く彼女を教卓に蹴飛ばしました。何て脚力……私も身体で受けたから分かりますが、ここまでのものとは思っていませんでした。


「な、七海さん……すみません」

「いいから、さっさと立ちなさい。こんな程度の蹴りでくたばる相手じゃないわよ」

「! ……はい」


 ゆっくりと身体を起こしながら彼女に視線を向けると、瓦礫(がれき)と化した教卓を蹴り飛ばし、手の力だけで身体を起こしました。

 あの方法だと、邪魔される事無く立ち上がれるから喧嘩の時に有効だと蓮二さんが教えてくれましたが、私は出来なかったので少しだけ羨ましいです。今度、バーベルの筋トレをして鍛えましょうか……?


「かぁぁぁっ!」

「!」


 甲高い雄叫びを上げ、今度は私に対して真正面から激突し、敢えてそれを避けずに互いに両手を握り潰す位に掴み合い、パワー勝負に持ち込みました。


「ほう? 度胸があるな、小娘」

「っ……! 悪いですけど、このまま付き合うつもりはありません!」

「うおっ!?」


 力では相手の方が上なのは百も承知。得意分野で勝負を仕掛ければ相手は油断すると分かりきっていました。だから、そこを突いてみましたが……予想通りです。

 身体をわざと後ろに倒れ込ませ、お腹に蹴りを打ち込んで投げる柔道の技の一つ、巴投(ともえなげ)! 一発で成功して良かったです。


「よいしょお!!」

「がぶぉ!?」


 私の投げに呼応するかのように、七海さんが追い打ちの蹴り上げを背中に放ち、扉を破壊して廊下へ飛び出しました。

 投げられた状態で見えない攻撃ともなると、流石の反射神経でも捉えられないと踏んだのですが……大成功でした。


「アンタ、あんな技も使えるわけ?」

「は、はい……一応ですが」

「……さっきのはいい投げだったわ」

「! ありがとうございます」


 互いに笑みを浮かべ、拳を軽く合わせますが、私は少しだけ動揺しました。打ち合わせも無しでここまで上手くいくなんて思ってもいませんでしたし、何より私の事を敵視している七海さんが笑顔を向けてくれた事が一番の驚きです。


「チッ……まとめて相手するのは面倒だ。先に弱い方から片付けるとするか」


 首をゴキゴキと鳴らしながら教室に戻りながら私たち二人を睨みつけてきます。だがしかし、先程のような突き刺さる殺気が薄れているような……?

 疑問に思ったその直後――――


「がはっ!?」


 ガッシャァァァン!!


 瞬間移動でもしたかのような早業で距離を詰めた彼女の左ハイキック一発で、隣にいた七海さんが窓ガラスを突き破り、外にぶっ飛ばされてしまう光景をただ、この目で追いかける事しか出来ませんでした。


「え――」

「これで邪魔者は消えた。さぁ、始めようか? 橘神奈。私とお前だけの喧嘩を……!」

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