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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
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予想外の共闘

「おらぁぁっ!」

「死ねやこの野郎!!」


 校内に乗り込んで早々、劉星会の奴等は俺たちに真正面からぶつかってきた。何だよ、てっきり校舎の中へ逃げ込んで呼び寄せるとか色々やってくると思ったのによ……? 最高じゃねーか、馬鹿野郎!!


「ハッ! やっぱり喧嘩はこうじゃねーとなぁ!?」

「がっ!!」

「ぐあっ!!」


 豪快に右拳を奮い、相手を力でぶっ飛ばす。それのせいで敵味方関係なく何人か巻き込んだけど、俺はそんな事を気にしてはいなかった。

 人を殴る度に身体が熱くなる。鼓動がバクバクと鳴り止まねぇ……! やべぇ、興奮してきた。(たぎ)りが抑えられん……!!


「蓮二さん、後ろ!」

「蓮二避けて!!」

「え――どわっ!?」


 神奈さんと七海の掛け声に咄嗟(とっさ)にブリッジをして(かわ)し、二人が繰り出したであろうハイキックは、俺の後ろにいた男の脳天にぶちかまされ、そのままノックアウト。

 うわぁ……アレは喰らいたくねーわ。マゾヒストだとしても耐えるの無理だぞ、今の蹴りは……! つーかそれよりも、二人共スカートなのにハイキックとかぶちかますなよ。思いっきり見えたんだけど……。


「大丈夫!?」

「お、おうピ……いや、七海」

「?」


 危ねー! 咄嗟に下着の色で答えようとしてた。どんだけ目に焼き付いてんだよ、俺の馬鹿! 集中しろ……今は喧嘩してんだろうが!!


 パァン!!


「ふぃー……」

「蓮二さん、どうしたんですか?」

「く……いえ、ちょっと気合を入れ直しまして」

「?」


 頬を両手で強く叩いて、自分に(かつ)を入れ直したのにさっきの光景を思い出してまた同じ事を……! 学習能力が無いのか俺は!!


「うっし……! そんじゃ、萩原を探しに行きましょう」

「はいっ!」

「七海も来てくれるよな? お前もいると助かるし」

「うん! 絶対ついてく!!」


 二人共、喧嘩中に腕に絡むのだけは止めて欲しいんだが……ご機嫌な様子を見ると、何も言えなくなる。だってなぁ? こんな笑顔、守りてぇじゃん。


「イチャついてんじゃねーよこのクソ野郎!」

「黙れ!」

五月蝿(うるさ)い!」

「ごあっ!?」


 涙を流しながら向かってきた男を神奈さんと七海が飛び出し二人同時に飛び出し、そいつを右ストレートで顔面に減り込ませ、教室の窓ガラスに突っ込むほどにぶっ飛ばしやがった。

 うわぁ、あれは直で入ったな。腰の入った良いパンチだ。あんな一撃を女子が出せるとは……。


「蓮二をクソ野郎だなんて……失礼にも程があるわ、このブサイク!」

「七海さんのその意見には同意ですね。蓮二さんは決してクソなんかじゃありません」


 神奈さんの口から『クソ』なんて出るとは。聞いたことがなかったから何か新鮮かも……。


「紅君! 我々三年は木造校舎の方に向かう!! だから、タツキたち二年と目の前にある新校舎の探索を頼む!!」


 結城先輩が敵を踏み潰しながら俺に指示を飛ばすが、この人は何で笑ってんだよ。しかも何かゾクゾクしているような気がする。もしかして、結城先輩ドSなのか? ……って、そんな事を気にしてる場合じゃねぇ!!


「うす! 神奈さん、七海、行こう!!」

「はいっ!」

「おー!!」






 結城先輩と別れた俺たち三人は堂々と校内に侵入し、一階から探索を開始した。

 少し歩いて分かった事だけど、廊下広いな……。人が五人、横並びで歩いても余裕がある(くらい)にスペースが確保されてるから、喧嘩するには丁度いい。


「教室も凄いわね……一つの教室で生徒数四十人超えてるじゃない」

「それが一学年だけで五教室分……二百人近い生徒がいたんですね。小学校にしては数が多すぎますね」


 俺たちは教室に入って、七海と神奈さんも見渡しながら各々(おのおの)感想を述べる。机の数で大体の生徒数が分かるとはいえ、かなり多いだろう。

 この赤虎小学校は元々マンモス校と言われていた。だから、一クラスに対してそれだけの机があるのは納得がいく……が、ココ最近は生徒数が少なくなって、経営が難しくなったから廃校にしたってニュースで言ってたっけ? 俺はとてもそうは思えないんだけどな……。


「次、行きましょう。ここには誰もいないから――」


 そう言いながら教室を立ち去ろうとした時、突然ガコンッ! と、何かが開くような音が聞こえた。俺、まだ扉開けてないから音なんか出るわけないし、それに――――


「お?」


 何で、俺は身体が落下してるの? そう思い慌てて下を見ると、俺の立っていた場所は底が見えない空洞が出来ていた。それに気付いた時、既に体の大半がそれの中に入ってしまっており……。


「蓮二さん!」

「蓮二!!」

「うおおおおおおおおっ!?」


 あえなく落下し、俺が完全に落ちた直後で再度穴は閉じられ闇の中なのだが、どこまで落ちるんだよ!? あーあ、俺の人生ここまでか? 短い人生だったけど、楽しかったぜ……って諦められるかよ!! 

 だけど、人間一人分しか穴の間隔がないからどうやっても落下する事しかできない。もうこりゃ腹括って開き直るか……! 地獄で閻魔(えんま)様とのご対面も悪かねぇけど……神奈さん泣かせるのだけは駄目だからな。


「必ず、生きて帰る!!」


 思いを言葉に乗せて、俺は拳を強く握りしめ再度下に目を向けると、一筋の光が灯っていた。どうやら終着点のようだな……。俺は恐怖心と同時に、何故かワクワクする興奮も感じていた。喧嘩してたからかね……? 

 さぁ、何が待ってるんだ? 俺は気持ちを入れ直したのだが……!


「っ!?」


 目の前に広がるのは、床全面に大量のぬいぐるみが敷き詰められているドームのような空間! その光景に俺は度肝を抜かされ、言葉も出ずそのまま流れに身を任せることしか出来なかった……!!






 蓮二さんが落ちた箇所の床を手触りで確認している最中なのですが、力づくで開けることは難しいですね。


「まさかこんな所に落とし穴が……」

「蓮二、大丈夫かな?」


 七海さんも穴を見つめながら心配そうに呟きますが、そこまで落ち込んでいないように聞こえました。


「あの人はそんな簡単にくたばりはしません。勿論、心配ですけど……美月の捜索も重要です。行きましょうか」

「! ……ちょっと待ちなさい。何命令してんのよアンタ」


 七海さんが突然、顔を(ゆが)めて私を睨みつけてきました。視線から殺気も(にじ)み出ているのが、ビリビリと伝わってきます。


「え?」

「私はあくまでも蓮二がいたから協力しただけで、アンタの命令に従うつもりなんて無いわよ?」

「!」


 そう来ましたか……! 私に対する張り合いは常日頃からあると思いましたが、ここでこんな事をやられるとは思ってませんでした。確かに命令口調になってたかもしれませんが……。


「そんじゃ、精々勝手にやって頂戴(ちょうだい)? 私は蓮二を探しに行くから」

「行かせませんよ」

「っ!? 七海さん、後ろ!!」

「え? きゃっ!!」


 突然現れた黒髪の女性に七海さんが私に向かって投げ飛ばしてきたのを、身体で受け止めました。

 先程まで気配すら感じさせない完璧な気配の消し方、この人相当出来ますね……!


「何者ですか、貴女は?」

「私は有紗。劉星会の……そして、(ファン)様の懐刀(ふところがたな)だ」

「!」


 劉星会の范。その名は橘組で何度も聞いた事はありましたが、その中で更に組員たちの間で、ある女性の名前が上がっていました。その名が有紗で……今、目の前にいる黒髪ロングを(なび)かせ、スーツ姿で私たちを見下ろしている女です……!


「へぇ……? いきなり劉星会の大物が現れるとはねぇ。やってくれるじゃないの、アンタ!」


 七海さんが私から離れ、ギラギラした目で有紗を睨みつけますが、彼女は至って冷静に七海さんだけを見つめています。七海さん相手にこの対応……流石、自分で『劉星会の懐刀』を名乗るだけの事はありますね。


「井口七海……隣街にある鷹緖組の若頭補佐、井口団蔵の娘だな? ここでくたばってもらうぞ」

「上等! やってみなさいよ!!」


 七海さんは彼女に対して突進し、拳を突き出す。七海さんの拳の威力は身に染みて、良く知っています。あれを受け止めるのはそう簡単ではない……まず、間違いなく入ると確信していました。

 だがしかし――――


 バシッ!


「なっ!?」

「ふむ……流石に強い。手が(しび)れますね」


 その幻想は、あっさりと打ち砕かれる事になりました……! 七海さんの拳を掴み止め、冷静に威力を分析している姿を見て再認識させられてしまう。

 この人は、私たち二人よりも強いと……!


「はぁぁぁっ!」


 気が付けば私は声を上げ突っ込み、七海さんの拳を掴んでいた彼女の右腕を蹴り上げ、拘束を外す事に成功した直後、そのまますかさず左ミドルキックをぶちかまそうと繰り出したのですが……!


 ドッ!!


「ふぅ……やはり、貴女も面倒な相手ですね。橘組組長である橘隼人の一人娘、橘神奈さん?」

「!」


 私の蹴りはいとも簡単に左腕でガードされてしまう。モーションを短くした筈なのに、これを防ぎますか……!

 まるで、蓮二さんを相手にしてるような感覚ですね……。この人も蓮二さんと同じ雰囲気を(まと)っている、そんな気がします。


「フンッ!!」

「きゃあっ!?」

「いだっ!!」


 七海さんを右手だけでバットのように振り回し、私に直撃させて二人まとめてぶっ飛ばされてしまいました。人を片手だけで振り回すなんて、父さん並の力もあるんですか、この人……!


「ぐっ……」

「このっ……!」


 私たちはすぐに立ち上がり彼女の方に振り向きましたが、それを待っていたのか、ニヤリと不敵な笑みを浮かべています。


「チッ……神奈、一旦アンタとの争いは止めるわ」

「え?」

「あの女、二人で叩くわよ。さっさと終わらせて蓮二を探したいんだから、足引っ張らないでよね?」


 恐らく七海さんも、あの人の強さを理解したんでしょうが、まさか私に共闘の申し出をしてくるなんて……。

 右拳を突き出しながら、軽く憎まれ口を叩くも、笑っています。それに私もつられてしまい頬が緩みました。


「ふふっ……分かりました。それじゃあこの喧嘩、大至急終わらせましょうか? 美月に加えて、蓮二さんの捜索もしないといけませんし」


 私は彼女の右拳に合わせるように左拳を突き出し、コツンと軽く当てる。それを受けた七海さんはフッと鼻で笑い、拳を鳴らしました。


「行くわよ、神奈!」

「はい!!」

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