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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
42/63

保健室での争い!?

 コンコンコン


「ん? どうぞー」

「失礼します」


 結城先輩が三回扉をノックし、保健室に入っていくのに習って俺たちも後から入室した。


「おお、こりゃまた珍しい面子(メンツ)だな。結城に久坂まで来るとはな」

「どうも、新井先生」

「ここに来るのも久しぶりですね」


 結城先輩と久坂先輩が話している最中、俺はベッドで寝ている弘人の元にゆっくりと近付いていた。治療が終わったとはいえ、顔の()れがひでぇ。頭も包帯巻いてるとはいえ、血が拡がり真っ赤に染まる。こんな状態になるまで劉星会の奴等は……っ!!


「弘人……」

「よう、れ……蓮二……。それに、神奈さんも……来て、くれたんだな」


 弘人が途切れ途切れに言葉を紡ぐのを聞き、自分の気持ちを抑え込んだ。この怒りは劉星会の奴等をやる時にぶつけるだけの話だからな……。


「酷い怪我、ですね……」

「! へへっ、心配しないで……下さいよ、神奈さん。見た目ほど、ダメージは無いっすから」


 ニカッと弘人は笑みを浮かべるものの、明らかに無理矢理出している(から)元気な笑顔だった。それは先程までの会話でこの場にいる皆にバレているだろう。

 

「何が『ダメージは無いっすから』だ。お前は本来、病院送りの怪我なんだぞ? それを『病院に行きたくねー!』って、強引に頼み込んできたから仕方なく、保健室(ここ)での治療に変更してやったんだろうが?」

「ちょっと、新井せ……つっ!!」

「弘人!」


 新井先生にネタバレされてムキになった弘人は立ち上がろうと身体を急に起こすが、顔が(ゆが)んでいた。

 身体には相当のダメージが残っている事はこの場にいる皆が分かっているが……弘人の奴、そんな無茶な頼みしてたのかよ!?


「お前がいくら強がろうが、重傷クラスの怪我人である事に間違いない。大人しくしとけよ? でないと即、病院に連れていくからな」

「……はい」


 普通の保険医としての発言とは思えないが、新井先生はちゃんと生徒と向き合ってんだな……。まぁ下手な病院より、この人の方が凄いとは思うけどな。橘組(うち)で言うなら海さんと渡り合えるレベルだぞ、マジな話……って、それよりも!


「なぁ弘人」

「どうした、蓮二?」

「藤木から話があるって聞いたんだが……何かあったのか?」


 俺の発言によって弘人が(しか)めっ(つら)を見せた。もしかして、喧嘩でボコられた事を気にしてんのか……?


「すまねぇ……!」

「馬鹿、気にすんな。返しならちゃんと取ってやるから今は休め」

「違う……! 俺が、謝ってんのは……そんな事じゃ、ねーんだ……!」


 喧嘩でやられた事では無く、他に何かやらかしたのか? 一体何があったのか……そう聞こうとしたが、弘人の身体が震えていたので聞けなかった。

 臆病(おくびょう)故にではなく、怒りからきているのは分かる。布団の中で拳を強く握り締めているのが見えたからな……。


「萩原が……」

「! 村田くん、美月がどうしたんですか?」


 俺はこの時、嫌な予感がした。自分の事ではなく他人の名前が出るという事は、その人の身に何かがあったという事だからな。そして俺のこの予想は……!


「萩原が……拉致(らち)られた」

「えっ!?」

「何!?」

『!!』


 見事、最悪な形で的中してしまった……!!

 おいおい、マジかよ!? 萩原が拉致……っ! そうか、そういう事だったのか! だから結城先輩(この人)は……!!


「結城先輩。まさか、この事を知っていたから神奈さんを?」

「ああ……その通りだ。成瀬が掴んだこの情報を知らせる為に、彼女を呼ばせてもらったんだが……」


 クソッタレ……! ここに来て奴等は最悪の人質を追加で取りやがった。恐らく、向こうは狙いを神奈さんに絞っている。じゃなきゃ萩原の拉致を実行する筈がないからな……!!


「美月が……っ!」

「神奈、ちょっと待ちなさい!」

「離して下さい!!」

『っ!?』


 神奈さんが慌てて保健室から出ようとするのを、七海が肩に手をかけて止めるが、それを神奈さんが弾き飛ばして七海に突っかかった事が予想外で、弘人を含めた皆が驚きを隠せずにいた。


「退いて下さい七海さん! 今は貴女と話し合ってる時間は無いんです!!」

「……アンタが一人で行っても、ボコボコにされるがオチよ。とりあえず落ち着きなさい」

「っ……! 美月は私の大事な親友なんです!! このまま放っておけって言うんですか!?」

「そうは言って無いでしょうが! 落ち着けって言ってるのよ!!」


 不味い、神奈さんの熱意に乗せられて七海までムキになってやがる。取り()えず二人を引き()がさねーと! 俺と側にいた藤木は二人の間に割って入る。

 神奈さんを俺が、藤木が七海を体を張って止めにかかったが、二人共抵抗が激しい!!


「ちょっと、触んなよこのっ!!」

「井口、お前まで乗せられてどうする! 頭冷やせ!!」


 藤木の力だけじゃ七海を止めることは難しく、グイグイと神奈さんに近寄ろうとするが、久坂先輩とあーちゃんが加わって七海を三人がかりで抑え込むことに成功した。


「蓮二さん、離して下さい! 美月が……美月が!!」

「分かってます……! けど、今の貴女を行かせる事は出来ないっす」


 一方で俺の方は抑え込めてはいるものの、拘束が外れてもおかしくない。何て力だよ……!?


「何で……! 何で貴方まで邪魔するんですか!? 美月が(さら)われたんですよ!?」

「分かってますよ、そんな事は!」

「分かって無いじゃないですか!! 美月の事なんかどうでもいいって言うんですか!?」

「このっ……! いい加減にしろ!!」

『!』


 俺が神奈さんの胸倉を両手で掴み上げた事で、この場の空気すら静まり返ってしまった。神奈さんも予想外の事だったのか、信じられないものを見ているような目をしていた。


「誰も萩原の事を助けないなんて言ってねー! 貴女の親友を、俺が見捨てる筈ないでしょうが!!」

「っ! れ、蓮二さん……」

「貴女の大事な人は、俺の大事な人でもある! だから、俺も一緒に護らせて下さい! ここにいる皆、萩原の事を『どうでもいい』なんて思ってないんすから!!」

「っ! ううっ……!!」


 クソッ……! 泣かせてしまった。男として最低だな、俺は。神奈さんをそっと抱きしめ、泣き止むまで胸を貸してやる事しか出来ねーのが情けない。


「結城先輩……!」

「何だ?」

「今すぐ、数集めましょう。弘人や春川、そしてやられた生徒の返しと……拉致られてる先輩方と萩原の救出って大事な目的も出来ましたからね」


 それとは別に個人的に意味もあるが、全体の目的はその二つだけだ。それを分かってくれたのか、結城先輩は俺の肩をポンッと叩いて笑みを浮かべていた。


「ああ……! タツキ、二学年は任せる」

「はいっ!」

「藤木……お前は俺の変わりとして、AB(うち)の連中から人数集めてくれ。頼む」

「おう! 任せとけ大将!!」


 結城先輩と久坂先輩、そして藤木は保健室から慌てて出て行くのを見送った。あの……七海さんにあーちゃん? 何でそんなジト目なんすか?


「うん、頼んだよララ。櫻井にも伝えておいて……私のクラスも含めて、数集めてくれって」


 七海に至っては、佐藤と通話しながら俺の事を眉間(みけん)にシワ寄せて睨みつけてるし……。女の子がしていい顔じゃねーぞおい。


「……」


 一方で、あーちゃんは何故か目が漆黒になって無言の圧力をかけてきますし……。何かちょっとした闇みたいなの見えそうなんですが。


「ったく、ここは喧嘩御法度(ごはっと)っての忘れやがって」

「あ……! す、すみませんでした」

「ま、喧嘩になる前だからお(とが)め無しだ。橘に井口、紅に感謝しとけよ?」

「「……はい」」


 それにしても、劉星会の奴等はやり過ぎたな。橘組(うち)縄張り(シマ)でこれだけ派手にやって街を()き乱してくれた事といい、俺の友達(ダチ)ボコってくれた挙句(あげく)……神奈さんを泣かせる原因まで作りやがった。


「フゥー……」

「あ、あの……蓮二さん?」


 一息吐いて、呼吸を整える。今はまだ抑えろ……。ここで当たり散らしても意味はねーし、無駄に力を使うことも無いからな。


「蓮二さん!」

「っ!? ど、どうしたんすか?」

「力が強くて、苦しいんですが……」

「あ……す、すんません」


 俺はすぐに抱きしめていた両腕を外して神奈さんを見つめた。いつもの神奈さんに戻ったのか、林檎(りんご)のように顔を真っ赤に染めているのを見て、俺はとんでもない事をしてしまったな……と内心で思いながら、殺気が込められている二つの視線に耐えていた。


「七海、あーちゃん……その目、勘弁してくれませんか?」

「私、蓮二に止められたかったなー……」

「橘だけ、狡い……」


 そう言われましても、ああいう時は男が胸を貸してやる事しか出来ないから、俺はそれをしただけなのですが……。


「良いスクープショット、撮れたわぁ……。タイトルは『紅蓮二、修羅場を迎える!?』で決まりね」

「カッカッカッ! 青春だぁねぇ、紅よぉ?」

「成瀬先輩に新井先生! 楽しんでないで止めて下さいよ!?」

「私、喧嘩はからっきしなので……」

「男なら自分で何とかしろ」


 ぐぬぅ……ご(もっと)もな事を!! 悔しいが、何も言い返せねぇ。成瀬先輩のスクープショットは後で回収せねば。

 はぁ〜あ、他の事考えるよりも目の前で俺に迫ってくるこの二人を何とかしねーとな。


「蓮二、私もさっきみたいにハグしてよ!」

「私もお願い、蓮ちゃん」

「は、ははは……」


 さてさて、どうしましょうかね……? 七海とあーちゃんもこうなった時は融通(ゆうづう)効かないからなぁ……と、思った矢先に俺の右手が誰かに握られるのを感じ、そっちに振り向くと……泣いたせいで、まだ目が涙で(うる)んでいる神奈さんの姿があった。


「蓮二さん、ありがとうございました」

「……別に気にせんで下さい。俺は思った事を口にしただけっすよ」

「そのおかげで私は自分を見失う事なく、ここにいますから……」


 いつもの神奈さんに戻ったか……! 少しきつく言い過ぎたと思ったが、笑ってくれたから杞憂(きゆう)だったようだ。取り敢えず一安心だな。

 さぁて、待ってろよ? 劉星会のクソ野郎共……! 神奈さん泣かせたケジメ、きっちり取り立てに行くからよ……!?


「ちょっと神奈! アンタは引っ込みなさいよ!!」

「……そこ退いて」

「嫌です。ここは誰にも譲りませんから」


 その前に()ずは、俺の目の前で起きてる神奈さんも含めた三人の争い? を、止めねーとな……。

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