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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
41/63

学年代表会議?

「潜伏先が……分かった?」

「ああ。虎城高校の新聞部部長が掴んだ確かな情報だ。写真付きでな?」


 そう言って結城先輩が俺に写真を何枚か突き付けてきたのでそれを拝見する。そこには、劉星会のバッジをつけた黒スーツの男たちが小学校に入る光景が写し出されていた。それにしても……。


「綺麗に撮れてるな、この写真」

「お褒めに預かり光栄の至り……」

「うぉっ!?」

『!?』


 結城先輩以外の皆は俺と同じ様に、驚きを隠せずにいた。この場にいる筈がない、ぐるぐる眼鏡をかけた黒髪お団子頭の女子生徒がいきなり現れたのだから……!!


「おお、来たか成瀬」

「どうも、一年生の皆さん。初めまして……二年の成瀬(なるせ)(ひさ)だ。先程結城が言っていた、新聞部部長でもある。部員は随時(ずいじ)募集中だ」


 そう言いながら、俺に入部届の紙を俺に渡してきたのだが……渡されても困る。部活に入る気なんて更々ねーからな。


「君の事は良く記事にさせて貰っていた。転入初日に “一年五本の指” の一人、村田との喧嘩は見ていて(シビ)れたよ」

「! ……アンタだったのか、あの写真撮ったの」

「あの時は中々に命懸けだったが、おかげで良いものが撮れたよ」


 写真一つにそこまでの熱意を持った人間を俺は初めて見た。普通なら、そこまでする程の物じゃないという人の方が多いが……この人は喧嘩とかではなく、別の意味で強いな。


「成瀬、そろそろいいか?」

「おっとすまん。私とした事が……紅君、他の皆にも写真を見せてやってくれ」

「あ、はい……」


 俺は隣にいたあーちゃんにそれを手渡し、ある事を考えていた。結城先輩が何を思って、この面子を集めたのか? そして、劉星会の潜伏先を把握してどうするのか……って事をな。


「流石は成瀬。相変わらずの腕前だな」


 考え込んでいて、何時の間にか久坂先輩があーちゃんが持っている写真を覗き込んでいる事に気付いたのは、成瀬先輩に褒め言葉を送っていた時である。


「フッ。褒めても何も出んよ、タツキ君」

「よく、撮れたね……」

「今回に関しては私も骨が折れたよ、神楽さん」


 あーちゃんも含めた先輩方が和気藹藹(あいあい)としている中で、俺たち一年組は置いてけぼり状態になっていた。まぁ俺はこの人たちの会話を聞いてるからいいものの……。


「ちょっとアンタ! 私の蓮二にくっつきすぎよ!!」

「……ウルサイ」


 ()け者扱いにされている? 七海が俺にくっついているあーちゃんに喰ってかかっており、それによってこの場に緊張がはしる。

 あーちゃんと七海……二人の強さを知っているからこそ、この場で喧嘩になったら間違いなくどちらもタダでは済まないだろう。いざとなったら割って止めねーとな。


「離れなさいよ、アンタ……!」

「イヤ……!!」

「そう……なら力づくでどかす!!」


 七海が猪のように突進するが、あーちゃんは平然と待ち構えていた。しかも、右拳を片手でゴキゴキと鳴らしながらだ。これ、もしかしてあーちゃんも本気じゃね?


「逝っとけ!」

「……ツブス!」


 あーちゃんは先程鳴らしていた右拳を打ち込み、七海は左足で踏み込み急ブレーキをかけて、右ハイキックを繰り出した! 

 クソッタレ! こうなったら――――


 ドゴォン!!


「い、いってぇ〜……!」

「蓮二!?」

「蓮ちゃん!?」


 強引に二人の間に割って入った俺は、七海の蹴りを右腕でガードし、あーちゃんの右ストレートを左手でガッチリと掴み止めた。

 二人の攻撃はどちらも本気だったので、俺の左腕はズキズキと痛みが発生し、右手はビリビリと痺れを感じていた。


「そこまでだ、二人共……! 今内輪(うちわ)揉めしてる場合じゃないだろ?」

「れ、蓮二……ごめん」

「蓮ちゃん、大丈夫!?」


 二人共落ち込んでしまっているが、あーちゃんは特に鬼気迫る程に俺の事を気遣ってくれる。多分自分で俺を殴った事に対して思う事があるのだろう……。


「あーちゃん、俺は大丈夫だからそんなに落ち込まんで下さいよ」

「……うん」


 返事は返してくれるものの、いつもの力が無い。こればかりは言っても仕方ないし、本人が立ち直って貰わないとな。


「さてと……成瀬、この小学校は何処のものだ?」

「ああ、はい。赤虎(あかどら)小学校の跡地ですね。虎城高校から約三十分はかかります」

「赤虎小学校って……廃校になった、あの?」


 久坂先輩が言った『廃校』という言葉に俺は聞き覚えがあった。

 そういや赤虎小学校って名前、確かニュースに上がってたな。ココ最近、四神市では(いく)つかの小学校の統合が始まって、何個か小学校が廃校になってるとか……。

 劉星会の連中、それを利用していたって事か……。まさか廃校になってる小学校を(ねぐら)にしていたとは思ってもなかった。


「そうだ。奴等はそこをアジトにしている。劉星会の数は分かるか?」

「細かい人数だとそうですね……百十六人ですかね」

「!」


 百十六人、か……。親父の話じゃ確か二百はいたって聞いたが、約半分くらいまで減っていたのか。それでも全員中国拳法を使えるから、気は抜けないけどな。


「だが……今、その劉星会の大半は中国人だけではなく、日本人も含まれているのが現状ですね」

「え?」


 俺の予想が成瀬先輩の言葉によってあっさりとぶっ壊されてしまったので、思わずポカンとしてしまった。


「成瀬、どういう事だ?」

「潜伏先が分かったんで、内部に潜り込んでみたんですが……隣街にある鷹緖の暴走族 “白竜(はくりゅう)” が劉星会のメンバーと仲良くしていました。あ、これがその時の写真です」


 成瀬先輩が新たな写真を結城先輩に対して手渡したので、即座に俺も結城先輩の隣に駆け寄りそれを覗き見る。するとそこには、バックプリントに白竜と描かれた特攻服を着ている男が劉星会の一員と握手を交わしている光景が写っていた。


「これが気になって調べたところ……劉星会のボスが金で雇ったようですね。因みにこの “白竜” は、数が七十人もいます。鷹緖の街ではそこそこ名が知れている族ですが、この四神市では知られてはいませんね」


 成程……つまり、劉星会の本隊は四十六人しかいないって事か。それならまだ戦りやすいし、喧嘩でも勝ち目は高いだろう。だけど、唯一問題があるとすれば――――


「後は……行方不明になった生徒についてですが、全員無事でした。今日一人追加されて合計、四人にはなりましたが」

「! そうか……成瀬、すまないな」

「気にしないでくれ、結城さん。これが私の仕事だからな」


 結城先輩の労いの言葉に対して、眼鏡のフレームを少しだけ上げている成瀬先輩。恐らく彼女の決めポーズなのだろうが、藤木よりは数段格好良い……って、それより一人増えた? という事はこの情報(ネタ)、今日掴んだものなのか!?

 成瀬(この)先輩……すげぇな、おい。正直感動してしまったよ。


「成瀬が掴んでくれたこの情報だが、向こうはまだ気付いていない筈。だからこそ、今が好機だ」

「! 結城先輩、アンタまさか――」


 俺が思った事を口にしようとしたその時、ダァン! と、大きな音を立て一歩だけ結城先輩が右足を踏み込んだ事によって、それが(さえぎ)られ……ここにいる皆の視線が彼女に向いた。


「やるなら今しかないが、君たちの意見を聞きたい。二学年代表であるタツキに……一年の頭角である二人にな」


 成程、そういう事か。だからこの人数……いや、ちょっと待て。それならそれで納得いかない事があるんだが――――


「俺たち二年は、三年の先輩方に付いてくだけです。どうせほっといても、貴女は行くんでしょう?」

「フッ……そうか。それならいい。さて……残りは君たち一年だけだな」


 そんな疑問を抱いている間に久坂先輩が結城先輩と何かを話しており、答えが出たみたいだ。つーか『残りは君たち一年だけ』って……二年の意見はどうだったんだよ!?


「蓮二、どうする?」

「どうするって……さっき、久坂先輩は何て言ってた?」

「聞いてなかったの? あの男は今回の喧嘩に賛成意見だったよ」


 久坂先輩が賛同したという事は、間違いなく二年と三年はカチコミをかける筈だ。これを放っておく事は論外だし、それ以上に弘人をやった馬鹿をぶっ飛ばしてやらねーとな……!!


「今回は貴女に付いて行きますよ。断る理由もないですから」

「それなら私も行くわ。蓮二は私が守るから」

「はは……ありがとよ」


 乾いた笑いを浮かべながら礼を返したが、七海はそれが嬉しかったのか満足気な様子だった。俺としてはごく普通の事をしただけなんだけどな……。


「どうやら……決まりだな。各学年、クラスへの伝達を(おこた)るな。決戦は近いからな」


 結城先輩の言葉に久坂先輩と成瀬先輩は頷いたり、あーちゃんは何故かグッジョブポーズを作ったりして反応を示していた。

 一方で俺は利き手である右の拳を強く握りしめていただけなので、人目には気付かれにくいだろう……って、何で俺はこんな事思ってたんだよ!?


「そして……橘さん」

「えっ!? は、はい……」

「今日、君を呼んだのは他でもない。どうしても知らせておかなければならない事があってな」


 結城先輩の声音が一段と低くなった……!? 神奈さんを今日ここに呼んだ事の意味が俺は未だに理解出来ていなかったのだが、これで明らかになるな。


「実は――」


 バァンッ!!


『っ!?』


 結城先輩が話そうとしたその瞬間、大会議室の扉が豪快に開かれ皆一斉にそっちへ振り向いた。するとそこには、肩で息をしている藤木の姿があった……。


「はぁっ……! はぁっ……!!」

「どうした藤木、そんな息切らして……?」

「村田が目を覚ました! そんで、どうしても今お前と橘さんを呼んでくれって言ってよ……!!」

「っ!?」


 弘人が目を覚ました……。その報を聞いた皆はホッと一息吐いていた。何だかんだ言いながら心配してくれていたんだな……って、それよりもだ!


「俺と神奈さんの二人を?」

「ああ……どうしても、今すぐ話さないといけない事らしい。あんな必死な村田を初めて見たよ、俺は」

「! ……神奈さん」


 結城先輩と話をしている途中だが、弘人の事も気になる。今日あれだけ派手にやられてたしな……。


「すみません、話は後で構いませんか?」

「ああ。それに村田君のことは気にしていたから丁度いい。皆で行こうか」

「そんじゃ、行きますか……」


 俺たちは藤木の後について行く形で弘人がいるであろう保健室へと向かった。

 そしてこの後すぐに、どうして結城先輩が神奈さんを呼び出したのか明らかになるのを、この時の俺は知る由もなかったのであった……!!

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