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高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
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転入初日の宿命

「蓮二さんと私は同じクラスなので、私がそのままクラスに連れていくことになってるんです」

「あ、そうだったんですか? だからもうクラスに向かってたんですね」


 神奈さんと階段を登りながら自分のクラスへと向かっているが、まさか同じクラスだったとは……。

 でも神奈さんと同じ高校に通えて、同じクラスだと思うと下らない事とか忘れていいや。あの虎城高校とはいえ、高校なんだ。そんなぶっ飛んだ奴は居ないだろ。いくら個性的といってもな……。




「着きました。ここが私たちのクラスです」

「ここですか……」


 一年A組のプレートが掲げられている教室を見つめ、先程みたいに強烈な力をを感じるようなことが無かったので、内心ホッとしていた。しかし、油断はできない。何せここは普通の高校なんかとは訳が違う。あの “不良学校四大勢力” の一つ、虎城高校なのだから!!

 俺は息をゴクリと呑み込み、改めて気を引き締めるべくゆっくりと深呼吸を始めた。


「ハァ~……。フゥゥ……」

「蓮二さん、緊張してるんですか?」

「え? そりゃそうですよ。何せ一年とはいえ、四月末に転入なんて不自然でしょう?」


 俺は至極当然の事を言った。入学したこの時期にいきなりの転入ってなると、普通は何かをやらかして学校に居られなくなって転入するってのは有り得ることだ。俺は今回、その口になってるんだけどね!


「確かに、そうかもしれませんね」

「でしょう?」


 神奈さんも神奈さんで笑顔で返答してくれたおかげで、少しは余裕が出来た。ここで正直に言うと、何かに取り憑かれたのか? と言わんばかりに朝から身体が重かったんだよな……。理事長室で理事長と話をしていた時もだ。

 それがこんな普通の会話で少しだけ(ほぐ)せたような、そんな気がした。


「でも、私は蓮二さんなら大丈夫だと思います!」

「? 何でですか、神奈さん」

「私が蓮二さんと出会った時の出来事全て……忘れてませんから」


 時間とともに忘れて欲しかったんだけど、無理あるか。神奈さんと出会った時に、俺が色々とやらかしたことを知っているからそうやって断言したんだろうな……。

 だけど、あの時は俺も無我夢中でやった事なんだが……どうやら神奈さんの中ではプラスの評価になっているみたいだ。


「ま、今更緊張しても仕方ないですし……腹括りますか!」

「ふふっ……それでこそ蓮二さんですよ。もう先生も先についてますので、私と一緒に教室に入って行けば大丈夫です。準備はいいですか?」

「うす! じゃ、開けますね!」


 覚悟を決めた俺は教室の扉に手を取り、力強くそれを振るった。それによって、バァン! と力強い音が教室中に響き渡り、教室にいた生徒の視線を注目させてしまう。だけどそんなことお構い無しに俺は神奈さんと共に教室に入った。

 そしてその直後に起こったのは――――



 

「あぁ、神奈さん……。今日も麗しい!」

「何で男連れてんだ!?」

『まさか神奈さんの!?』


 うん、男どもは予想以上に俺が思ってい奴らだった。皆制服を真面目に着てねぇ改造してたりTシャツだけだったり、或いはタンクトップでタトゥーしてる奴だったりとか、ネックレスやブレスレット何かをゴチャゴチャと多くつけてる奴だったり等、ザ・不良! って感じだ。

 つーか、神奈さんここまで人気だったのか。最後なんか、クラスの男どもほぼ全員が異口同音だったし……。

 一方で女子は――――


「イケメンキター!」

「でも、あの神奈さんと一緒に登校ってどんな男よ?」

「ハハッ、こりゃ面白くなってきたねぇ」


 何か思ってたよりフツーだな。しかしまぁ、なんだ……ミニスカ多いな。おい、下着見えそうだぞ! そこの名も知らぬ女子生徒さん!

 それにしても女子も制服改造してる人結構多いなぁ。つか、スカジャン女子とか学校で初めて見たな。何かこっちもこっちで不良女子、みたいな感じだ。でも先程の男どもよりは悪くないと思う。


「先生、転入生の紅蓮二君をお連れしました」

「ご苦労様、橘……。はい、皆静かにー!」


 黒髪パーマショートヘアーの女性が、パンパンと拍手を二回鳴らし、場の雰囲気が静まり返る。あ、こういう時は真面目なの?思ってたより予想外だ。こういう時でも黙らずにぺちゃくちゃ喋り続けるのかと思ってた。


「それじゃあ自己紹介お願いするわね、転入生君?」

「! は、はいっ!」


 俺は少しだけドキッとしてしまったが、改めて教卓に向かって歩き、教卓から教室全体を見渡す。

 うわぁ、男どもはガン飛ばしてやがる。気に入らねぇって感じが丸見えだ。ま、気持ちが分からんでもないがやり過ぎるとウザイ。女子は女子で、何か獲物を狩るような目をして俺を見つめているのは何でだ? 何か男よりも女が怖いとこの時初めて感じたよ……!


「あー、どうも。こんな変な時期に転入することになった、紅蓮二です。えー……こんな事今まで無かったから、何話したらいいのか分かんないっすけど……。とりあえず適当に宜しくお願いします」


 ホント、こういうの慣れてないんだよなぁ。だから早く切り上げるべく打ち切りみたいな感じで決めたのだが……あれ? 反応無い?


「はいどうも……。ありがとね、紅君。私は君の担任の五十嵐(いがらし)(らん)だ。とりあえず宜しく」

「は、はい。宜しくお願いします」

「それじゃあ君の席だが……窓際の一番後ろで、橘の隣だ。丁度空いてるからな」

「分かりました」


 どうやら神奈さんと同じ席みたいだ。これ、マジで唯一の救いだわ。ここで知らない奴だったら終わってた……。特に男だとな。だって、今も血走るかのように殺気が俺に向かってるもの。

 転入初日から苦労しそうだと溜息を吐き、俺は席についた。


「宜しくお願いしますね、蓮二さん」

「神奈さん……。うっす、改めて宜しくお願いします」


 前向きに行けば何とかなると信じ、俺は流れに身を任せるのであった……。






「あー、終わった終わった!」

「蓮二さん、お疲れさまでした」

「いえいえ、これくらい平気っすよ。思ってたより普通でしたね」


 四時間目まで授業が終わり昼休みを迎えた。思ってたよりも普通に授業が進んだので、割と驚いている。不良高校で有名なこの学校でも授業とかちゃんと行われていることがあり得るのだということに⋯⋯。


「さて蓮二さん、今からお昼なのですが……基本学食かお弁当がメインなんですよ、この高校は」

「え、そうなんすか? じゃ俺学食行きますわ。弁当もないし……」

「お弁当ならご安心下さい! 私が作ってきました!」


 え、今なんて? 神奈さんが俺に手作り弁当を差し出してくれる。ヤバい、めっちゃ嬉しい!! 嬉しいんだけど……それと同時に殺意が凄い。まぁ三回も当てられたら慣れるけど、流石にイラッとする。だけど今の俺にはそんなことはどうでもいい! 

 神奈さんが俺に弁当を差し出そうとしたその時、俺の右肩に手を置いてきた奴が一人いた。


「おい」

「あ?」


 でけーな、この黒髪オールバックで長ランを身に纏っている男……。コイツは195(くらい)はタッパがあるな。

 しかも、体を鍛えているのか全身引き締まってやがる……! こりゃ相当力に自信があるタイプだな。それにしても、さっきから俺に対してガン飛ばしてんなコイツ……。怒りを隠す気無しかよ。


「村田くん? どうしたの?」

「神奈さん、すみません。ちょっとこの転入生と話がしたいんですけど……構いませんか?」


 出たよ、転校生や転入生あるある! いきなりの呼び出し! 生でやられたの初めてだけど、こういうのって滅多(めった)に体験できない事だから何か新鮮だな……。 

 それにコイツ村田って言うのか。筋肉ダルマとか適当に渾名(あだな)を付けてたから怒られそうだったぜ。


「蓮二さん……」

「あ〜、すんません神奈さん。それじゃ、ちょっとコイツと話してきますわ。昼、先に食べてていいっすよ」

「話が早いな転入生。それじゃ行こうか?」


 俺は村田と共に教室を後にした。さてさて、どうなる事やら……。






「ここなら邪魔は入らねぇ……。話をするにはもってこいの場だ」


 確かに、それはそう思う。

 俺たちは今、屋上に来ている。風が強いのか、ビュゥゥゥと独特の音が屋上全体に響く。こんな場に男で二人きりなんぞは嫌なんだがなぁ……?


「で、話って何だよ?」

「お前、神奈さんとどういう関係だ?」


 やっぱりか……! そこ、聞いてくるわな。俺も俺で聞きたいことは山ほどあるが、まぁとりあえず適当に流すか。許嫁なんていきなり言ったら、その瞬間に間違いなく喧嘩になるしな。


「神奈さんとは友達だよ、友達」

「何だと!?」


 俺は適当にあしらうつもりで友達と言ったが、これは嘘ではない。神奈さんと初めて出会った時に言ったからなぁ……。うん、懐かしいものだ。つい最近の出来事のように思える。


「神奈さんと友達……!」

「えーと、村田だっけ?お前の質問に答えたんだ。こっちからも聞きたいことがあるんだ――がっ!?」


 突然目の前に現れた村田の拳を咄嗟にスウェーして躱す。不意をつかれたってのもあるが、この体格で滅茶苦茶速い! それにさっき、バットを全力で振った時に出るような音が聞こえてきたぞ!? しかもそれを道具ではなく拳のみでやってのけたってのかよ。こんなものマトモに当たったら、間違いなくワンパンで沈む事も有り得る……!

 俺はバックステップをして距離を取り、村田を睨みつけ威嚇した。


「テメェ……どういうつもりだ?」

「うるせぇ! 俺はお前が気に入らねぇんだよ……!」


 おぉ、俺のメンチに動じることが無い。久しぶりだなこんな男は……。

 それに俺に対してこんな風に嫉妬という名の怒りを堂々とぶつけてきやがる。正直逆恨みもいい所だが、こういう奴は嫌いじゃねぇ……。影で口だけヤローよりかは遥かにマシだからな!


「ハッ……! そうか。それじゃあ仕方ねぇな? かかってこいよ、村田」


 気がつけば俺は村田に対してニヤリと笑みを浮かべ、右手を前に出し、自分の方へクイックイッと動かした。


「っ!? じ、上等だコラ!!」


 村田がそれにキレて眉間に皺を寄せ、怒り任せに突進してきた。

 こうして転入初日……俺と村田の喧嘩は幕が上がったのであった――――

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