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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
33/63

放課後デート? 前編

 あの襲撃から三日が経過し、劉星会の奴等は地下に潜ったのか全く街に姿を見せなくなった。それ故に、虎城高校には平和な時間が与えられていた。怪我もほぼ完治した俺はというと、昼休みの時間に藤木と話をしていた。


「お、おい大将。ココ最近、毎日のように神楽先輩教室に来てねーか?」

「あ〜、確かにそうだな……」


 藤木が俺にひそひそと耳打ちしてくるから、俺も声を抑える。まぁそりゃそうなるよな? 一年の教室に三年の先輩が遊びに来てたらよ……。

 あーちゃん、皆の注目の的になって神奈さんたちと俺の席で何か喋ってる。それを遠目で見物しながら俺と藤木は黒板近くにある教室の扉の前で再度話を進めた。


「しかも大将、初日に蓮ちゃんなんて呼ばれてたじゃんか。そして大将は神楽先輩の事をあーちゃん呼び……。何何、お前ら付き合ってんの?」

「ちげーよ、馬鹿。お前も結城先輩と同じ事言うなよ」

「いやいや、普通そう思うって! 渾名で呼び合ってたらよ!?」


 藤木の奴、興奮して声が大きくなってやがる。ちょっとは抑えろよな……? うるせぇから皆も俺ら二人に視線向けてくる。それに加えて……!


「蓮ちゃん、何の話をしてるの?」

「うわっ!?」

「っ! いや……何でもないっすよ、あーちゃん」

「そう?」


 この人、気付くと俺の隣にいるんだよなぁ。その癖、抱きついてくるからけしからん程に大きなおっぱいが……ね? 背中に全部当たってんですよ。これはヤバイ……!!


「ちょっとアンタ……蓮二に近寄りすぎなんですけど?」

「ん?」

「七海……」


 眉間に皺を寄せ、あーちゃんを睨みつけている。明らかに不機嫌なのが分かる……。だがしかし、あーちゃんは全く動じていなかった。


「別にいいでしょ……?」

「良くなーい! 蓮二は私の!!」

「! ……それは違う」


 あーちゃんが俺から離れ、七海と頭をぶつけ合う。こうなるのは分かってたけど、この二人ある意味で似たもの同士何だよなぁ。


「つーか、蓮ちゃんって何よ……! 馴れ馴れしいわね、神楽先輩?」

「そっちこそ、蓮ちゃんの事を呼び捨てにしてる。生意気だよ、後輩の井口七海」

「ぐぬぬ……!!」

「……」


 こりゃ互いに一歩も引く気ねーな。寧ろ喰ってかかる勢いだ。それより、二人の身体から何か闘気みたいなものが出てるように見えるんだが!?

 あっ、藤木の野郎逃げやがった! おい待てこの野郎!! 俺を置いてくなよー!?


 ギュッ!


「こっちです」

「んお?」


 咄嗟(とっさ)に誰かに手を取られ誘導される。一瞬誰だ? と思ってしまったが、声ですぐに俺の手を握った人物は誰なのかが分かった。


「神奈さん、どうしました?」

「あの二人から蓮二さんをお守りしようと思いまして……駄目でした?」

「いえいえ……寧ろ、助かります」


 神奈さん、今は心が暖かくなる程にイイ笑顔だ。殺気なんて感じさせない、正に癒しと言っていいだろう。

 あーちゃんが初日に教室来た時は、血の気が引くレベルで凍えるような笑顔だったし、嫌という程に質問攻めをくらった。俺は当然、逆らわずにありのままを全て伝えた。そうしたら許してはくれたが、その日は何故か膨れっ面だったな……。


「それにしても蓮二さんと神楽先輩が幼馴染だなんて……最初、聞いた時は吃驚しましたよ」

「あーちゃんとは幼稚園の時だけだったんで、幼馴染でいいのかって思ったんですけど、そうなるんですかね?」

「なりますよ、蓮二さん」


 俺自身、幼馴染の定義が良く分かってないんだよな。何年付き合いがあればいいのか、僅かな時間とはいえ幼い頃に遊んでたってだけでいいのか……な? 

 俺はそんな疑問を抱え、あーちゃんの方をチラッと覗き見た。すると、何時の間にか七海と取っ組み合いを始め、互いに啖呵を切っていた!!


「何、喧嘩売ってんの? それなら喜んで買うわよ……!」

「それはこっちの台詞……! いい加減にしないと……ツブスヨ?」


 互いにもう退くことが出来なくなってる……! 喧嘩好きなこのクラスの皆も煽る事はなかった。それを恐れてるのか、誰も言葉が出ずに息を呑んでいた。まぁそれは無理も無い。

 二人が(かも)し出している闘気は、並大抵の奴らは黙らせられる力を持っている。この場で介入出来る奴がいるとすれば、俺か神奈さん、そして弘人位のものだろう……。


「取り敢えずアレを止めましょうか、蓮二さん」

「! そうですね……おい七海! あーちゃんも、そこまでだ!!」


 俺は七海とあーちゃんの間に割って入り、手を伸ばして制止しようとしたのだが――――


「ひゃんっ!」

「っ……!」


 え? な、何だ今のムニュッって感触は? めちゃくちゃ柔らかくて、質感もある。指を動かすと形を自由自在に変えるこの物体は何!?


「んっ……おっぱい、好きなの蓮ちゃん?」

「えっ!? な、何でそう思うんだ、あーちゃん!?」

「だって、私と井口のおっぱい揉んでるから……」

「へ?」


 俺はあーちゃんの言っていることの意味が分からなかった。俺が七海とあーちゃんのおっぱいを揉んでいるだって? ははは、そんな馬鹿なと思いながら手に視線を向けた。すると俺の右手は七海のおっぱいを、それから左手はあーちゃんのおっぱいを掴んでいた。


「おおおっ!? す、すまん七海! あーちゃんもごめんなさい!!」


 気付いた俺は即座に離し、両手をズボンのポケットに突っ込んだ。こうでもしないとまた事故が起きそうで怖いからな……!


「別にいい……。蓮ちゃんだから、許す」

「もっと揉んでも良かったのに……!」


 あーちゃんは特に気にしてなかったようだが、七海は何故か残念そうにし、そして蕩けた顔を作って俺にとんでもない事を言ってのける。いやあの、わざとじゃないからね? 事故だからな?


「ちきしょー!」

「蓮二の奴羨ましい!!」


 クラスの男たちからの魂の叫びが俺に向けられるが、スルーしておこう。気持ちは分かるが、今のアイツらには返す言葉が無いからな。

 それにしても、二人共凄かったな。揉めるものならもっと揉みたかった……と、そんな事を考えながら両手を見つめていた。しかし――――


「蓮二さん?」

「っ!?」


 凄みすら感じる低い声音に反応した俺は手から視線を外し、ギギギと壊れた機械のようにゆっくりと振り返った。するとそこには先ほどと同じ笑顔を向けた神奈さんが、右拳をバキボキと鳴らしていた。


「か、神奈さん? これはその……」

「蓮二さん、私は分かってますよ。喧嘩を止めようとして起きた、偶然の事故だという事は」

「でしたら、何でそのような事をされているのでしょうか!?」

「ふふふ……何故でしょうね?」


 神奈さんはゆっくりと一歩ずつ歩み寄り、確実に俺との距離を縮める。逃げようと思えば逃げれるのだが、足が動かない。恐らく、神奈さんが出してる殺気に気圧されてしまったのか、身体が反応したのだろう。

 あーあ、こりゃ無理だわ。もういいや、考えるの止めようか。


「蓮二さん……ゆ〜っくり、オ・ハ・ナ・シをしましょうか?」

「……はい」


 この後、昼休みが終わるまで神奈さんの有難いお言葉を頂戴するのであった……。






 そして、時が流れ授業を終えた放課後。今日も対劉星会のメンバーで会議室から下校することになったのだが、ここで少々……いや、かなり大幅なメンバーチェンジが起きていた。というのも――


「ねぇ蓮二、私クレープ食べたいんだけど、今から行かない?」

「蓮ちゃん、大丈夫?」

「くっ……!ジャンケンで負けた自分を恨みます……!!」


 俺のグループは今……神奈さんに七海、そしてあーちゃんの四人だけなのだ。男は俺一人に対して女は三人! しかも全員超美人!!

 手を絡め合う恋人繋ぎで右手が七海によって拘束状態。あーちゃんには左腕を絡め取られており、何故か子供をあやすように頭を撫でられている。そして神奈さんは七海の一歩前を歩き、チョキを作っている左手を涙目で睨んでいた。


「つーか、七海……お前何でこっちに?」

結城天音(あの人)に例の件は駄目だったって事を話し終えたし……何よりあのガングロ先輩と顔合わせたくないから交代してもらったのよ。柳と村田、そして神奈の親友である萩原の三人と私一人を」


 ほうほう、成程。ちゃんと結城先輩には報告してたのか……。それに叶先輩と揉めてたって結城先輩から聞いてたし、それなら……ってちょっと待てい! 危うく納得しかけたわっ!!


「何で三人も向こうにやるんだよ!?」

「だって、この前の襲撃にあったのは蓮二たちだけでしょ? 劉星会に顔はもうとっくに知られてる筈。それなら、分散した方がいいと思ったからよ」

「む……確かに」


 七海の言う事は、よく考えると正しい。こういう時に固まっているのは逆に非効率的だ。というのも、固まって行動していたらそれだけ相手の尾行が成功されやすいからだ。

 尾行によって対象の自宅は当然だが、それ以外にも友達の家や溜まり場、そしてよく来る店等も徹底的に調べる事が出来る。勿論、これは誰にでも出来る事ではない。何せ、相当なやり手でないとまずバレて即終了だからな……。


「それに、向こうの三人には虎城高校(うち)の上の人たちがついてる。そんでもって、こっちの三人は……まぁ全員強いから問題ないでしょ?」

「あのなぁ……」


 七海はテヘペロしながら、ウインクをかました。くっそー、可愛い! そんなんされたら何も言えねーっての。それだけ、俺らの事を信じてくれてるって事だしな……。


「それより、蓮二! クレープ食べに行こ?」

「ん……神奈さんにあーちゃんはどうだ?」

「私は構いませんよ」

「……食べる」


 あーちゃん、何で目を輝かせていらっしゃるの? それに神奈さん、貴女は何故にチョキを作ったままなんですか……。


「よし、そんじゃ行こっ!」

「ああ……」


 俺たちは会議室を後に街に繰り出し、早速クレープ屋台を探し始めた。そういやこんな風に誰かと出かけるのは……神奈さん以来だな。人生の殆どは誰かと揉めては喧嘩漬けな生活だったから縁がなかったし、それに橘組に入ってからはそう簡単に一人の時間が減ったからな……。


「蓮二さん、どうしました?」

「いや……何か、こんな風に落ち着けたの久しぶりだと思って」

「ふふっ……そうですね。今が喧嘩中だって事、忘れちゃいます」

「! ……そっすね」


 神奈さんの微笑みにつられ、俺も思わず笑顔を作った。とりあえず、過去の事は一旦全部忘れて今はこの時間を楽しもう。そうでないと、三人にも失礼だからな!


「ちょっと、二人の世界に入らないでよ」

「……蓮ちゃん」

「わ、わりぃ二人共! あ、ほら七海。クレープ屋、あったぞ」

「え? あ、ホントだ!」


 俺が指し示した先には数人並んで入るものの、クレープを作っているキッチンカーが存在してした。この辺は屋台の許可を出してるのは知ってるが、クレープまでやるようになったのか……。

 そんなことを考えながら、俺たち四人は屋台へと小走りで駆け寄り、列の最後尾に並んだ。そしてほんの数分後すると俺たちの番になりキッチンカーの前に辿り着いた。

 そしてそこには、バンダナを巻き、黒のタンクトップを着た一人のおじさんが腕を組んでいた。


「らっしゃい。どれにしやすか? お客さん」

「あ、すみません。ちょっと待ってもらっても構いませんか?」

「へい……ごゆっくり、選んでくだせぇ」


 このおじさん、江戸っ子か……! 独特な喋り方だからすぐにピンと来た。まぁ橘組にも江戸っ子いるからな……。


「皆、どれにする?」

「ねぇ、蓮二! 私ストロベリーが食べたい!」

「私はそうですね……このチョコバナナのクレープをお願いします」


 七海は興奮しながら、神奈さんはメニューに書かれていたのを指差しながらそれぞれリクエストする。うーむ……二人共、仕草が可愛いの反則だと思う。


「七海がストロベリーで、神奈さんがチョコバナナっすね? あーちゃんは?」

「……カスタード」

「おじさん、ストロベリーにチョコバナナ……それとカスタードを一つずつお願いします」

「あいよ。少々お待ちなすって……そこの席についててくだせぇ」


 その呼びかけによって女子三人はチェアーに腰掛け、俺は立ったままおじさんのクレープ作りをじっと観察していた。

 俺も子供の頃はこんな風に寡黙な男に憧れてたっけ……。まぁ今となってはそんな気持ちは薄れ、ただ単にカッコイイとしか思わなかったけどな。

 そしてほんの数分が経過し、クレープが三つ完成したのであった。


「へい、お待ち。合計1000円になりやす」

「あ、はい。じゃあこれで……」

「丁度、頂きやす。ありがとうございやした」


 三人分のお代を払って、クレープを受け取り神奈さんたちの元へ向かい、そして俺はそれぞれクレープを手渡した。するとあーちゃんが、鞄の中から黒革財布を取り出していた。


「蓮ちゃん、幾らだった?」

「え?」

「お代……払う」

「いや、いいよあーちゃん。今日は奢ります。だから、二人も財布しまって!」


 神奈さんと七海も俺に代金を払おうとしたのか、財布を鞄から出してきたのでそれを制止した。こういう時にカッコつけたがるのは


「蓮二さん、いいんですか?」

「何か悪いよ……」

「いいんですよ神奈さん。それと七海、こういう時は男に奢らせてくれよ?」


 俺は二人に、柔らかな口調で(さと)した。それを聞いて最初は納得のいかない顔を浮かべていたものの、鞄の中に財布をしまい込んでくれた。


「……分かった。蓮二がそう言うなら」

「分かりました。それでは、有難く頂戴しますね?」

「はい、そうしてください」


 三人は受け取ったクレープを食べ始め、俺はそれを眺めていた。俺は別に甘いものそこまで好きじゃないから買わなかったし、何より……。


「う〜ん! 何これ、美味っ!」

「これは……確かに美味しいですね」

「……文句無し」


 三人の嬉しそうな顔が見られる、それだけで俺は充分だ。それにしても可愛い女の笑顔ってのは、男に何も言わせねぇ特別な力があるよなぁ……。


「蓮二、一口食べる?」

「あ? 俺はいいって」

「そう言わずに食べてよ……お願い、蓮二」


 七海の目元にうるうると涙が出来てる……。ヤバい、このままだと泣かせる事に! こんな事で女の涙は絶対見たくない。仕方ねぇな……。


「分かったよ、七海」

「それじゃあ口開けて。はい、あ〜ん」

「あむ……んん!?」


 な、何だよこれ!? 七海からストロベリーのクレープを一口齧ったが、絶妙な味だ。苺が甘すぎず、ホイップクリームの量も適量で程よい。それに加え、モチモチ生地だから、食感も楽しめる。甘いものはあまり食べない俺だが、これなら金出して良かったなと思えるぜ……。


「う、美味ぇ……」

「でしょ!?」

「蓮二さん、私のも良かったらどうぞ」

「……蓮ちゃん、こっちも食べる?」


 俺が七海のを食べたから、二人も俺にクレープを差し出してきた。一回食べただけで充分なのだが、俺が断れるわけなく……。


「それじゃあ、頂きます」


 結局俺は、神奈さんのバナナチョコとあーちゃんのカスタードのクレープも一口ずつ貰うのであった……。

 そして俺たちはクレープのキッチンカーを後にし、今度はあーちゃんのリクエストでボウリングをやる事となり街で一番でかいゲーセン、四神GAMEにやって来た。


「ボウリング、久しぶりですね〜」

「あ、ああ……そっすね」


 ここには前に来たことがある。というのも、橘組が全面貸切にしてボウリング大会をやった事があるからだ。因みにその時の結果は――――


「どうしたの蓮二? そんな引き()った顔して」

「い、いや……何でもねーよ」

「……楽しみ」


 こうして、俺たちのボウリングは始まったのだが、恐らく決着がつくのは早いだろうな。はぁと軽く溜息を吐き、俺は神奈さんから始まる投球を見守るのであった……!!

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