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高校生極道  作者: 華琳
1章 若頭、転入します!? 
3/63

出会いとは、一期一会

「ここが理事長室です、蓮二さん」

「は、はい……!」


 絶望に近い感情を抱きながら、俺は神奈さんの案内によって理事長室前へと到着した。

 至って普通の理事長室だけど……何だこの違和感は? 理事長室の中から、物凄く強い “ナニカ” を俺は肌で感じていた。


「理事長、橘神奈です。転入生をお連れいたしました」

「神奈君か……。うむ、入りたまえ」

「っ!?」


 重々しく、渋い声……。これだけでも俺は圧倒されてしまった。俺が人の顔を見た事もないのに、声だけでビビってしまったのは人生でこれが二度目だ。


「失礼します」

「! し、失礼します……」


 神奈さんが理事長室のドアをゆっくりと開けたのでガチャッ、と小さく音が発生した。こういう音を聞くと緊張感が増す。そのせいか、俺の心臓はドキドキしていた。神奈さんはそんな俺の気持ちに構うこと無く部屋の中に入っていく。ワンテンポ遅れてしまったが、俺も同じく入った。

 そこで見たのは、片手で馬鹿でかいバーベルを持った上半身裸で銀髪スポーツ刈りのマッチョなオッサンがそびえ立っている光景だった!!


「君が転入してきた紅蓮二君か……初めまして。ワシがこの虎城高校の理事長兼校長でもある来栖(くるす)(つよし)だ。宜しくな」

「は、はい! 紅蓮二です! 今日から、宜しくお願いします!」

「うむ! 良い返事だ!!」


 呆気に取られて返事が遅れてしまった。兎に角、初見でこの理事長が物凄く豪快な人だという事が分かったよ、うん……。だって普通の人は、部屋に反響するまで声出さないもの! 山彦が重複してて耳痛いんですけど!?

 それに今、理事長兼校長って――――


「校長も兼任してらっしゃるんですか!?」

「まぁのぅ。良き校長と出会えなくて中々見つからんから、今の所は代理だがな……」


 いや、良き校長って何? 貴方が認めないと校長ってなれないの? というかそもそも、ここって授業とか大丈夫なのか? 

 つーか、それよりバーベル重くないの!? バーベルカームをしながら人と笑顔で話できるバーベルの大きさじゃないよな!? どんだけ力あるんだよこの人!? 

 あ、でもよく見たらめっちゃ汗かいてる。理事長の足元に汗で大きな水たまりができていた。どこまでやればそんな状態になるんだよ……!?


「出会いというのは一期一会じゃ、紅蓮二君。今日、この出会いが無駄でない事をワシは願っておるよ」

「は、はぁ……?」


 いきなりの発言に俺は適当に返事してしまったが、確かにそうだ。俺と神奈さんの出会いも『一期一会』だと言える。あの時の事は一生忘れることはない。この理事長との出会いも、神奈さんと出会えなかったら無かっただろう。それは間違いなく断言出来る。

 つまり、この出会いもきっと俺にとって意味のあるものなのだろう。うん、そう考えよう。ポジティブシンキング、たまにはいい方向に働くからな……。

 てか、それ下ろそうよ理事長。良い事を言ってるのに、バーベルのせいでそっちの方が印象に残りそうだよ。


「それでは失礼します」

「失礼します、理事長」

「うむ」


 結局、理事長がバーベルを下ろすことは無かったか……。と、俺は思いながら神奈さんと共に理事長室から退室して校舎内を歩き始めた――――




 校舎一階の隅っこに理事長室があったからそのまま歩いてるだけなんだけど、視線が痛いな。まぁこの手の視線には慣れている。不本意だがな……。

 それが何の視線かって? そりゃ決まっている。嫉妬だ、嫉妬。神奈さんは超がつくほどの美人だ。

 俺みたいな普通の高校生――いや、普通じゃないか。俺は橘組の “若頭” だし、神奈さんも神奈さんであの親父の一人娘だからな……。

 まぁそこは今、どうでもよくて、俺みたいな普通? の奴が超美人である神奈さんと一緒に歩いてるだけで嫉妬してるんだろうよ、周りのヤツは。それに関しては俺もあいつらの気持ちが分からんでもない。俺だってあそこにいたら間違いなく『リア充爆発しろ』と言わんばかりに呪いをかけてやるからな。


「蓮二さん!」

「は、はい!?」

「こっちですよ。私たちの教室は三階です」


 神奈さんが階段を半分くらい登った所から俺を笑顔で見下ろしていた。俺はこの時の神奈さんの姿が、まるで美しい絵画の様に思えた。日光によって神奈さんの笑顔がより輝いて見えるというのもあると俺は思えた。

 一目惚れするとしたらこんなシチュエーションなんだろうなぁ……。と、俺は漫画の中の主人公の気持ちが少しだけ分かった気がした。そんな事を考えながら、俺は頬を軽くポリポリと掻き、神奈さんの後を追いかけるべく階段を登った――――

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