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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
29/63

楽しい昼と緊張の放課後

「というわけで、今日からこの編成で下校してもらうことになった。これは結城先輩からの指示だ」


 昼休みになった今、あの会議に参加していた連中を全員学食に集め、大テーブルで飯を食べながら結城先輩からの伝言を伝えていた。

 本当なら話し合いが終わった後すぐにしようと思っていた……のだが、俺が寝落ちしてしまい、起きたのが昼休みの時間になったからだ。因みに神奈さんを巻き込んだ事は土下座で謝罪して、笑顔で許しを貰いました。


「ちょっと待ってよ蓮二……私は大いに不満があるわ」


 そう言った直後に、右手で頬杖を作り、頬を膨らませる七海がいた。まぁ予想はできてたけど、聞き返したくねぇ……。

 周りを見渡すが、皆完全に俺がやれと言わんばかりに視線を向けてくる。こりゃ仕方ねぇな? 俺は溜息を軽く吐き、覚悟を決め話しかけた。


「ど、どうした……七海?」

「何で私が蓮二と別で、よりにもよって何であのガングロ先輩と一緒なの!?」


 ダァン! とテーブルを激しく叩き、立ち上がって俺に怒鳴り散らした。予想的中だったので驚きはないが、五月蠅(うるさ)い……。

 そして、それを見た周りの奴らがザワつき始めた。やばい、止めないと……!


「俺に言われてもなぁ……? とにかく、これは虎城高校(うち)の頭が決めた事だ。今回は諦めてくれ」

「ぐぬぬ……! 今日、結城天音(あの女)に会ったら問い詰めてやる!!」


 そう言いながら七海は席について、日替わりメニューであるチキンカツ定食を早口で食べだした。それにしても、相変わらず丁寧に早く食べるなぁ。流石は鷹緖組、若頭補佐の娘ってところかね……?


「ボクが蓮二君と、神楽さんの二人か」

「宜しく頼む、柳。と言っても、ここに神奈さんに弘人、そして萩原も加わるぞ?」

「えっ、そうなの?」

「ああ……」


 いつも一緒に帰ってるメンバーだからな。今日から劉星会との喧嘩が終わるまでの間、ここに柳と神楽先輩を加え、合計六人での行動になる。

 大所帯にはなるが、虎城高校と劉星会との喧嘩なんだ。これくらいは当然か。それにしてもこのメンツが、一緒に飯食う事になるとは思ってもなかったな……。


「何だよ村田、食わねーのか? 食わねーなら俺が戴く!!」

巫山戯(ふざけ)んな櫻井! 俺のカツ丼に手を出すな!!」


 互いに箸で動きを止め合う弘人と櫻井。マナー悪いなぁ、この二人……。だけど、見てて面白い。

 だって――――


「もぐもぐ……油断大敵だぞ、二人共?」

「あぁっ!?」

「柳テメェ!!」


 二人が争っている間に、弘人のカツ丼と櫻井の醤油ラーメンを食っている柳がいるからな……。この構図は正に漁夫の利だと言えるだろう。なんだかんだで仲良くないか、お前ら?


「佐藤さん、そのアジフライと私のハンバーグ半分交換しない?」

「……いいよ」


 その一方で、萩原と佐藤は交友を深めていた。互いの定食のメインであるアジフライとハンバーグを交換しあっていた。うんうん、仲良き事は美しきかな。


「蓮二、私のチキンカツあげる。はい、あ〜ん」

「ん……」


 七海が箸で取ったチキンカツを俺の口元にまで持ってくる。貰えるものは貰っておこうと思い、俺は口を開けた。

 あ、美味い……。ここの学食、街中の店にも負けてねーぞ本当に。いや、下手したらそれ以上だ。


「蓮二さん、お茶をどうぞ」

「あ、どもっす。んぐ……あ〜、美味ぇ」

「良かった……」


 神奈さんが水筒を手渡してきたので飲んだのだが、中身は麦茶だった。ここの学食のおばちゃんの茶は欲しかったけど、口の中が痛いから麦茶の方が有難い。神奈さん、本当に気遣い出来る人だよなぁ……。


「つーか蓮二、お前その怪我はどうしたんだよ?」

「あ、それは私も気になってた。何があったの蓮二?」


 弘人と七海が怪我の話題を入れてきたことによって、俺の顔に再度皆から視線が向けられた。仕方ないといえば仕方ないのだが、こういうの気にされるのは嫌いだ。適当に誤魔化(ごまか)そう……。


「階段からずっこけた」

「はぁ? どう見ても喧嘩傷だろ、それ」

「バレバレの嘘は良くないよ、紅」


 櫻井と佐藤のツッコミが炸裂し、グウの音も出なかった。だけど俺はそれで下手を打つことなく、完全無視で乗り切る気でいた。話したくないしな……。


「階段からずっこけたんだ」

「いや、どう見ても――」

「階段からずっこけたって、言ってんだろ……!?」


 眉間(みけん)にシワを寄せ睨みつけ、ダミ声に近い感じで低くしてこの場にいる皆に威嚇した。それで何かを感じ取ったのか櫻井は当然だが、大テーブルにいた全員が沈黙した。


「か、神奈……蓮二の奴どうしたの?」

「ああ……アレはたまに起きるの。蓮二さんが意固地になったら私が相手でも絶対に口は割らない。ですから皆さん、この件についてはもう追求は不可能かと」


 神奈さん、ナイスアシストです! と内心で褒め言葉を贈り、テーブルの下でグッジョブを作った。本当に神奈さんには助けてもらってばかりだな。今度、何かお礼しよう……。


「チッ……」

「残念……」


 悔しがる櫻井と佐藤も神奈さんの一言で諦めてくれたようだ。ホッ……これでようやく安心して飯が食えるぜ。因みに俺の今日のメニューは学食のおっちゃんが作る、数量限定気まぐれ炒飯(チャーハン)である。


「うん、やっぱり美味い!」

「蓮二のそれ、いいなぁ……」


 七海が物欲しそうな顔をして俺の炒飯に熱い眼差しを向けていた。さっきチキンカツ貰った礼があるし……いいか。


「七海……良かったら食うか?」

「えっ、いいの!?」

「量も多いし別にいいよ。これであいこな? ほれ」


 俺は蓮華(れんげ)で炒飯を(すく)って、七海に差し出す。あれ? 今思えば、これって……イチャついてるカップルみたいじゃねーか!? 


「ん〜! すっごく美味しい!!」

「お、おう……そうか」


 しかも、七海相手にだ……! 俺は気になり神奈さんに視線を向けたのだが――――


「蓮二さん、私も一口いいですか?」

「えっ!? あ、はい! どうぞどうぞ!!」


 あれ……? 神奈さん、怒ってないぞ? いつもの癒される笑顔だ。普段ならこういう時、笑顔なのに恐ろしさも感じる。なのに、今回はそれが一切ない。


「良い味ですね……。毎日食べたくなります」

「俺も神奈さんと同じ気持ちですよ」


 濃いめの味付けが元々好きだというのもあるが、本当にこの炒飯は飽きない。多分、これをメニューに加えると毎日食う学生が多くなる。そうなったら大変だから数量限定にしており、且つおっちゃんの気まぐれなのだろう。


「俺もそれくれよ、蓮二!」

「あ、俺も俺も!!」

「お前らにあげてたら俺の分が無くなるからパスだ」


 こんなやり取りをしながら、俺たちは残り時間をふんだんに使って食事を楽しんだ。そしてそこからは流れるように時間が経過し、あっという間に放課後を迎えたのであった……。






「よし、皆揃ったな?」


 結城先輩が会議室を見回して確認し、俺たち十五人に呼びかける。まぁ初日って事もあり、今回は会議に参加していたメンバーが会議室から出て、神奈さんたちとは後で合流してから下校する手筈になっている。


「それじゃあ私たちから始まり、猪狩と春香、香川、神楽のグループの順番でここを出ていってほしい。神楽は鍵閉めを頼む」


 神楽先輩が結城先輩の言葉に対してコクリとゆっくり頷き、それを見届けた結城先輩たちの組である久坂先輩と矢田先輩、そして犬猿の中と言える、今も睨み合っている叶先輩と七海がここから出始めた。まぁ俺らは最後だからのんびり出来るな。

 そんなことを考え、一息吐いたその時……!


「……」

「うぉっ!? か、神楽先輩どうしたんすか……!?」


 俺の目の前に突如現れ、じーっと見つめている神楽先輩に対して後ずさろうとしたが、肩に手をかけられ動くことが出来なかった。

 この人、力強い……! 普段なら脱出できるけど、親父にボコられた後なのもあって、力が出ず神楽先輩に拘束されてしまった。


「怪我……どうしたの?」

「実は昨日、階段からずっこけましてね……」

「……ほんと?」


 納得出来ないのか、両頬を膨らませて俺を再度睨みつけた。うっ、止めて! ご飯いっぱい食べたハムスターみたいで可愛いからさぁ!?


「ほ、本当です!」

「……そっか」


 この人、何で俺にはこんな積極的に話しかけてくるんだろ? 俺、神楽先輩とはこの高校で初めて会ったんだけどなぁ……。

 ま、神楽先輩みたいな美女から話しかけられるというのは、男として悪い気しないからいいんだけど……何か引っかかる。


「おーい、神楽先輩! 蓮二君! そろそろボクたちの番だよ!!」

「! 先輩、行きましょう」

「……うん」


 今日の帰り道で神楽先輩の事を色々と探ってみるか……。モヤモヤするのは、早く解決するに越したことはないからな。

 そんなことを思い、俺は柳と神楽先輩の二人と共に会議室を後にした――――

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