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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
27/63

組長vs若頭!? 後編

「そらそらそらぁ!!」


 親父の容赦ないパワーボム攻撃は絶えること無く続いている。因みにもう何発喰らったか覚えてねぇっ……!

 今も何とか頭を庇うように拳で守っているから、ギリギリのところで意識を保てているものの、気を抜けば速攻で落ちる。

 だがしかし、何発も受けたおかげでもう脱出方法は見つけた。後はタイミングを狙って――――


 ドゴォ!!


「つっ!?」

「もう一丁!!」


 今だ! 親父が俺を持ち上げようとするこの瞬間、俺の拳が親父の頭に届く。そのタイミングで顳顬(こめかみ)を狙って両の拳を挟み込むように打つ。


「ぐおっ!?」


 親父も応えたのか、足を掴んでいた手が離れた。ここで追撃はせず、俺は距離を取って呼吸を整え親父を見つめる。

 ヤバいわ……この人、超強い。今まで喧嘩してきた中でもダントツだ。正直、喧嘩で勝てる気がしねぇと弱気になったのは初めてだ。


「やってくれるやないか、蓮二?」


 だって顳顬(こめかみ)に拳を打ち込んで、ピンピンしてる人間が目の前にいるんだぜ? そりゃそうなるっての……。けど、だからといって諦める理由にはならねぇけどな!


「ははっ! 親父、アンタ最高だ!!」

「ん?」

「こんな興奮するタイマン、初めてなんすよ……!」


 今までしてきた喧嘩にも、当然タイマンはあった。だがしかし、その殆どが相手にならなかった。だけどこの人は違う。

 勝つか負けるか、どっちか分かんねぇギリギリの喧嘩。俺が望んでいたのはこれなんだよ……!!


「ええ顔しとるやないか、蓮二? それなら喧嘩、もっと楽しもうやないか!」


 そう言いながら、背を向けて親父は肩に手を掛け、ジャージを脱ぎ捨てた。それによって親父の背に描かれている、虎の刺青(いれずみ)が姿を現す。


「っ……! すげぇ……」

「そういや、お前に見せるのは初めてやったな?」


 親父の言葉どおり、橘組に入ってから約一年……俺は初めてこの人の背中を見た。刺青だと分かっていても、ビビってしまう。

 まるで、本当にそこから飛び出してしまうような、そんな気がしたからだ。


「よっしゃ……いくで、蓮二」

「っ……! かかってこい!!」


 俺は親父の迫力に負けないように、挑発しながらファイティングポーズをとる。親父はそれを見た直後にいきなり飛び出した!


「せいっ!!」

「おおっ!!」


 俺は右拳を、親父は右張り手を繰り出すが、互いに攻撃は直撃せずに頬を掠った。そしてすかさず左のボディブローを親父にぶち込んだ。


「んぐっ!?」

「うおおおおおっ!!」


 怯んだ親父を見て、俺は一気に攻め立てた。ここで手を休めたらいけない、そんな気がしたからだ。


「いい加減倒れろよ親父ぃ!」

「るっさいわボケェ! お前こそとっとと倒れんかい!!」


 互いに攻撃しながら罵声を浴びせる。普通ならムキになって怒るはずだよな? だけど、目の前でやり合ってるこの人は笑みを浮かべていた。

 だから俺もそれにつられて、笑みを浮かべていた。何せこの殴り合いの時からずっと、口角が上がりまくってるからよ!?


「何笑っとんねん、蓮二!?」

「そういう親父だって笑ってんじゃねーか!」


 俺と親父は拳と張り手の交換をする。その時俺は張り手の一発一発に、痛みだけではない何かを感じていた。体重だけじゃなく、気持ちをぶつけられてる。そんな力を身体全体で感じていた。

 やべぇ、気を抜いたら倒れそうだ。けど、喧嘩で負けるわけいかねぇんだよ。例え相手が男だろうが、女だろうが……そして、目の前にいる親父であっても!!


「だりゃあ!!」

「がっ!?」


 ここで拳ではなく、ガラ空きの腹に減り込むように蹴りを打ち込んだ。親父も予想だにしてなかったのか後ずさり、そして膝を落とした。

 それを見逃さず、俺は右拳を強く握りしめ親父に駆け寄った。


「これで終わりだ、親父!!」


 俺はトドメのアッパーを繰り出すべく、右拳を下から強く振り上げるように打ち込もうとしたその時!!


 ズキッ!!


「っ!?」


 な、何で……右腕が上がらねぇっ!?

 クソッ! 早く離れねぇと――――


 パァン!!


「あがっ……」


 不味い、完璧に張り手決められた……! 身体がぐらつきそうになるが、何とか堪えた。だがしかし、そんな俺の目の前に現れたのは、親父がバックドロップを仕掛けようとした姿だった――――!!!


 ゴッ!!






「……ふぅ」


 ワシはその場で胡座をかいて、仰向けに倒れている蓮二を見つめていた。正直、喧嘩で負けそうになったのは初めての事やった。

 橘組(うち)の若頭とはいえ、蓮二はまだ高校生のガキや。これでワシとほぼ互角……末恐ろしい奴やの、コイツは。

 近いうち、抜かれるかもしれへんなぁ。こりゃ気合入れ直さないとあかんな。


「さてと……怒られるやろうけど、アイツら呼ぶか」


 ワシはそう呟きながら、立ち上がりトレーニングルームを後にした――――






「あの、神奈さん?」

「……」

「もしもーし……」


 昨日の喧嘩からというものの、神奈さんから完全に無視されていた。因みにあの後、手当てをしてくれたのはレイだと雅人さんが教えてくれた。

 頬は両方とも膨れ上がり、鼻にガーゼを貼っているのを鏡で見た時は吃驚したけど、動けない訳では無いので学校にいつものように通っているのだが、空気が重すぎる……と思ったその時――!


「蓮二さん」

「っ!? は、はい!」


 あっ、ドスが効いたこの声音は……!


「喧嘩した理由は父さんから聞きました。学校の先輩からの、呼び出しの件が原因であると」

「……」


 うん、間違いない。神奈さんは今――――


「何で、そんなボロボロになるまで義理を貫いたんですか? 蓮二さん」


 去年と同じくらいに、怒っている……! 笑顔なのに目が笑ってねぇ。こういう時はマジで素直に答えるしかない。逆らったら、とんでもねぇ事になるからな……!!


「虎城高校のトップである結城先輩が、下級生である俺に頭を下げた。だから俺は、極道としてではなく、この学校の一年としての対応をした……。ただ、それだけっす」

「……」


 あんな風にされたら断れねぇってのもあるし、何より放っておいたら危ない感じがしたからな。


「はぁ……分かりました。今回の件、蓮二さんに関してはチャラにします。父さんは許しませんけど」


 いつもの優しい声音に戻り、俺に最高の笑顔を見せてくれる。ちっ、やっぱりこの人狡いわ。可愛すぎだっての。

 ん? つーか、さっき……。


「あの……何で、親父は許さないんすか?」

「蓮二さんをここまでボコボコにしたんですから、しばらくの間は口を聞きませんって言ったら落ち込んでましたよ?」

「えっ……」


 それで今朝の親父、意気消沈してたのか……。そりゃそうなるのも仕方ないわな。

 にしても、それ笑顔で言うことかね? まぁ可愛いからいいけど……。


「ところで蓮二さん。今日、話をつけに行くんですよね?」

「え、ええ。と言っても、親父からの伝言伝えるだけですが……どうしました?」

「私も行きます。蓮二さんを一人で行かせませんから」


 結城先輩と会わせたら喧嘩しそうな気がするけど、神奈さんはこういう時、そう簡単に折れない。会わせるしかないよな……?


「それじゃあ学校ついたら、結城先輩のとこに行きましょうか?」

「はいっ!」


 さてさて、どうなる事やら……。そんな事を思いながら俺は神奈さんと共に歩き出した――――

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