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高校生極道  作者: 華琳
2章 虎城高校vs劉星会
25/63

組長vs若頭!? 前編

「――――という事がありました」


 俺は包み隠すことなく、あの会議で起きた事を全てをさらけ出した。隠した所で意味は無いし、下手な嘘は自分の首を絞める事になる。何より、親父に嘘は吐きたくないしな。


「ほうか……」


 それに対して、親父はいつものように平然とした態度を取っていた。あくまでも俺が見てそう思っただけなので、本当かどうかは分からないけど。


「それにしても、150人以上もやられてたんか。お前の高校」

「はい。劉星会は一般人や学生に関係なくこの街中で暴力を奮い、この街での地位を確立しようとしてるのは間違いないですね」

「せやな」


 親父は俺の言葉に対してそう呟き、一回だけ頷くだけだった。確認のために一応言ってみたが、流石に分かってたか。


「それにしても、やってくれるやないか? 劉星会のボンクラ共が……!!」

「!」


 俺はこの約一年で、初めて見たかもしれない。キレている親父を……!! 絶対に怒らせてはならない相手は必ず存在する、とは言うがこれはやばいわ。鳥肌が止まらねぇ。


「絶対にあの外道共を許したらあかんぞ、蓮二」

「はい!!」


 怒気の孕んだ親父の声に対して、俺は力強くたった一言で返事を返した。それを聞いた親父は、先程までの怒りの表情が嘘のように、一瞬で笑顔を浮かべた。


「よし! これで劉星会の件は一旦終いや。残った問題は、お前の学校の件やな。とりあえず座れや蓮二。立ったままやとしんどかろ?」

「……失礼します」


 俺は腰を下ろし正座をして、親父と向き合う。やっぱりこういう緊張感のある会話は本当に慣れないんだよな。虎城高校での会議は問題ねーけど、相手が親父だからかね?


「お前のとこの頭の……結城天音、やったか? その女が、劉星会の討伐メンバーに加えてくれ言ったそうやな?」

「はい……」

「大した度胸やな、その女。普通の奴じゃ思いついても言う事は出来んからなぁ」


 親父が結城先輩に感心してるように見えた。確かに俺も、極道を利用しようとする結城先輩の度胸は買ってる。並大抵の覚悟でそんな事を言えるわけがないからな。


「せやけど、認めるわけにはいかんな。不良とはいえ一般人である事に変わりない。極道の喧嘩に巻き込むのは無理や」


 親父は、あの時猪狩先輩が言った事とほぼ同じ事を言ってのけた。やっぱり親父もそう答えを返すよな。俺も何となくではあるが、そう思っていた。


「ですよね……」


 この時俺は、ボソリと呟いていたのを分かっていなかった。だから、親父が俺の事を訝しげな様子で見つめていたのを感じる事ができなかったのであった……!






 んん? 蓮二の奴、なんか納得のいかん顔をしとるな。普段はワシの言う事には従うんやがのう? もし、考えられるとしたら――――


「あ……」

「どうしました、親父?」


 蓮二の奴、もしかして……!


「なぁ、蓮二。お前は自分のクラスの奴らがやられたの見て、どう思った?」

「え……?」


 何でいきなりそんな話を振ったんや? と言わんばかりにポカンとしとる。まさか、追求されるなんて思ってなかったんやろうな、蓮二の奴。


「ええから、答えてみ? 正直に、な」

「……分かりました」


 気持ちを落ち着かせるように一呼吸してから、俺の目を捉える。何や、えらい決心をしたような感じや。こんな蓮二、久しぶりに見るのぅ?


「まだ一ヶ月とちょっとしか経ってないとはいえ、クラスの頭になった俺を信じてついてきてくれてる。信じてくれてる奴等がやられたらムカつくし、返しを取りたくなりますよ」


 予想通り、やな……。橘組に入ってすぐ、蓮二を慕う奴が出来たことがあった。そいつらがやられた時に迷わずに動く事のできた男やからな、こいつは。


「あの時の俺は、極道の立場から反対意見に投票しました。けど、極道の立場を捨てて考えるなら俺も賛成寄りなんです。返しを取りたいという気持ちは分かりますから」


 せやろなぁ……。組内では冷静に見えるけど、それ以上に熱い男やからな。それはこの一年でワシはよう知っとるぞ、蓮二。


「それに結城先輩が頭を下げたあの時、一年前に親父が俺に頭を下げた光景と重なって見えたんです」

「ほう?」


 ワシと重なって、か。どうやら上の奴が頭を下げるという認識の問題やろな。そう考えている間に、蓮二は両の手を床について頭を地面に擦りつけるように下げた。


「だから親父、結城先輩の気持ちをどうか汲んでやれないでしょうか?」

「!!」


 蓮二がワシに土下座しよった。普段、ワシに意見するなんてのは滅多に無いから面白いが……そういうわけにはいかん。


「頭上げぇ、蓮二」


 ワシの言葉に反応し、ゆっくりと顔を上げた蓮二にワシは敵を睨み付けるように威嚇した。すると、ギョッとした顔を見せて、身体が一瞬震えていた。


「せやけど、さっきも言ったが駄目や。やられて返しを取りたいのは分かるが――」

「お言葉ですが親父……先程も述べましたが、うちの学校から今回の喧嘩で行方不明者が三人も出てます。このままだといずれ暴走しかねません」


 ワシの言葉を遮り、蓮二は今回の件で一番の問題点を突きつけてきた。確かにそれはワシも考えとった事や。劉星会の奴等が学生を拉致したのを聞いた時は正直耳を疑ったし、何よりやられすぎてるからな。


「だから、こっちで管理下に置いて抑制させるという意味でメンバーに加えることは駄目でしょうか?」

「むぅ……」


 蓮二の言うことにも一理はある。確かに暴走を抑えることが出来るし、戦力アップにも繋がるやろ。せやけど、認めるわけにもいかん。こういう場合、どないしたらええんや?


「親父」

「ん? 何や、蓮二」


 蓮二が深呼吸を二回ほどして、ワシを見つめた。何や、その堂々した態度は? それに、妙な胸騒ぎがする。主に嫌な予感で……!


「この件はもう話し合いじゃ解決しそうにないんで、これで決着つけませんか?」

「っ!?」


 ワシは目を疑った。というのも、蓮二が突き出したのは強く、強く握りしめられた右拳であったからや……!!






「正気か? 蓮二」

「ええ。こうでもしないと、親父は動いてくれないと思いまして」


 このままだと堂々巡りになってしまうのは分かりきっていた。だから俺は手っ取り早く喧嘩で決着をつけようと思い拳を突き出したのだ。

 気が狂ったとかそういう訳ではなく、これにはちゃんと理由がある。


「話し合いで決着がつかない場合は、意見の代表同士による一対一(タイマン)で決める。これは親父、貴方が決めた橘組の掟ですよね?」

「むっ……!!」


 そう、俺はこの橘組の掟を利用したのだ。数ある掟のうちの一つを、な。この掟は俺が組に入ってからの一年間において、何度か使われていたので覚えていたんだ。

 そして今回の代表は組長と若頭、つまり親父と俺なので条件には当てはまっているのだ。


「まさか、親父ともあろうお方が掟を破るわけないですよね?」


 ここで更に煽りを入れる。まぁ、普段の親父なら微動だにせず無言を貫くのだが、今回に関しては間違いなく動くと睨んでいた。というのも――――


「当たり前や。この掟は、組長のワシであろうが当然適用される」


 ありがとうございます、親父。自分で決めたルールを自分で破るほどの人でないことは分かっていたし、何よりそんな事をすれば組長としての威厳も失われるからな。


「それなら話が早い。やりましょうか、親父?」

「せやな……!」


 俺たちは互いに立ち上がり、二歩ほど歩いて距離を取って身体をほぐし始めた。

 この時の俺は、あの時の喧嘩の続きが出来るという嬉しさと、今の自分が親父相手に何処まで通用するのか? そんな興味が入り交じっていた。


「お前との喧嘩は、あの時から約一年前やったな、確か」

「ええ、そうですね」


 一年前のアレを覚えていたんですか、親父。何か嬉しいなぁ……。


「あの時は途中で終わってしまったが、今回は決着つくまでとことん戦り合おうやないか?」

「! ハッ、上等……! 行くぞ親父!!」

「来いやぁ!!」


 俺は笑みを浮かべて突進し、親父の顔面に全体重を乗せた右ストレート打ち付けた。殴った時のゴッ!! と鈍い感触は、完全に拳が入ったものと同じだった。

 どうだ……!?


「これが、お前の今の拳か。あれから成長したなぁ?」

「なっ!?」


 う、嘘だろ? 俺の拳が全く以て通用してねぇ!? つーか、何で満面の笑顔浮かべてんだよ親父!!


「今度はこっちの番や……!!」

「え――」


 親父に右手で胸ぐらを掴まれ、左ラリアットをぶちかまされる。

 この時、電撃でも打ち込まれたかのような衝撃が俺の身体に襲いかかった――――!!

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